著者
亀井 美和子 恩田 光子
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.377-383, 2003-12-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
4

【目的】平成14年4月、外来患者に対する薬剤の投与日数の制限が原則廃止されたことを受けて、本研究では、長期投薬に際する留意点等について検討するために、外来患者における薬の受け取り状況を分析した。【方法】調査は、関西と北陸に所在する保険薬局チェーンの19店舗において、2002年5月中旬の一週間に来局した外来患者を対象として、自記式調査票を配布し、郵送または店舗内において回収した。分析には慢性疾患での通院者の回答を用いた。【結果・考察】調査票の配布数は1,745通、回収数は1,226通であった (回収率70.3%) 。全回答者のうち、慢性疾患での通院者696人の回答を分析に用いた。大部分の患者 (85.3%) は、通院期間が1年以上であり、4月以降に投薬日数が増えた患者は9.8%であった。線形回帰分析の結果からは、「できれば受診せずに薬を受け取りたい」との要望に関わる要因として、回答者の年齢、薬または処方せんの受け取りだけの通院頻度、希望する1回あたりの投薬日数、薬の飲み忘れの頻度などがあげられた。また、服薬コンプライアンスには、回答者の職業、特定のいくつかの疾患、通院期間、薬の受け取りに関する選好が関わっていることが示唆された。これらより、単に患者の要望に対応する形での投薬日数の長期化は、薬物治療の質を低下させる恐れがあると思われた。
著者
渡辺 明良 市川 雅人 小林 靖枝 青野 真弓 長田 能央 林 譲也 三谷 嘉章 芦田 弘毅
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.667-670, 2006-03-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
8

現在の病院経営において, 病院経営マネジメントスタッフのキャリア開発は実務面の重要な経営 課題であるにもかかわらず, 研究面ではあまり注目されてこなかった.そこで本稿は, 国内および海外, 特に米国の病院経営マネジメントスタッフのキャリア開発等に関する先行研究のレビューを行うとともに, 国内・海外の病院に対してインタビューを中心とした事例調査を実施し, 病院経営マネジメントスタッフのキャリア開発の現状について報告する.その結果, 国内では病院経営マネジメントスタッフに求められる役割や能力や資格などに関する研究が不足していることが示された.事例調査からは, 階層別研修を中心に置いた病院内部の育成が中心であり, 病院経営マネジメントスタッフに求められる役割や能力や資格を明確に定義した上で採用や育成を行っている事例は見られなかった.一方, 海外の事例調査では, 病院経営マネジメントスタッフの役割は病院経営全般のマネジメントとしてその資格や処遇が明確に定義されており, キャリア開発は自己責任に基づくことが明らかになった.また, MBA (経営学修士) やMHA (病院経営管理学修士) などの教育機関での専門教育との連携がとられており, これらが経営マネジメントスタッフの資格要件として, キャリア開発上重要な役割を果たしている事がわかった.
著者
山内 豊明 高木 美智子 藤内 美保
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.311-318, 2003-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

肥満などとの関連から、『早食い』は改善すべき食習慣の1つとされており、日常的に使用されていながら、その明確な定義はない。今回食べ方についてのイメージを聞き取り調査した。『早食い』については、48%が「全体の食事時間が短い」としその具体的な食事時間を2~20分と、44%が「一口あたりの咀嚼回数が少ない」としその具体的な咀嚼回数を2~30回、と回答していた。また『ゆっくりよく噛んで食べる』については、34%が「全体の食事時間が長い」としその具体的な食事時間を15分~1時間と、64%が「一口あたりの咀嚼回数が多い」としその具体的な咀嚼回数を10~100回、と回答していた。一方で具体的に咀嚼回数や時間を聞いても「思いっかない」と回答した者もいた。この結果、単に食事時間や一口あたりの咀嚼回数だけをイメージするとは限らないことが明らかになり、食べ方の指導時には対象者の認識のアセスメントが不可欠であると考えられた。
著者
辻 泰弘 田中 英子
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.385-388, 2004-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12

近年, 調剤に係わる医療事故が相次ぎ, 薬剤師による処方監査の重要性が再認識されている. 今回, リスクマネージメントの観点から処方せん疑義照会内容を集計し, 検討を行った. 平成14年に医療の質の向上を目的として, 電子カルテ及びオーダリングシステムを核とした診療・調剤支援システムを導入した後, 平成15年1月から12月までの本院処方せん159,354枚 (外来: 125,723枚入院: 33,631枚) において, 疑義照会を行った1,010件 (外来: 679件入院: 331件) を「薬学的疑義照会」と「処方形式的疑義照会」に分類し比較検討した. 総処方せん枚数に対する疑義照会率は0.63% (外来0.54%, 入院0.98%) であり, 入院の疑義照会率は外来の疑義照会率と比較して有意差 (p<0.05) がみられた. 外来・入院双方とも疑義照会発生比率は, 「処方形式的疑義照会」が「薬学的疑義照会」を上回る結果となった. なお, 疑義照会後の処方変更率は外来90.3%, 入院92.1%, 全体で91.6%と高い処方変更率となり, 薬剤師の疑義照会が合理性を持って受け入れられ, 適正な内容であったことを示しており, 副作用防止・相互作用回避など, 医薬品に関わるリスクマネージメントへ貢献していることが示唆された.
著者
戸崎 かをり 村上 多寿子 氏家 智恵美 加藤 洋子
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.657-660, 2003

当院では平成13年7月9日にデイサージャリー (以下DSと略す) センターが開設された。日帰り手術を受ける患者の不安軽減と質の高いかっ均一なケアの提供のたあに、クリティカルパス (以下CPと略す) 導入とケアコーディネーターの配置がなされた。大きな特色として (1) 全疾患にCPを使用 (2) 外来にて入院予約の時点から退院まで、ケアコーディネーターが継続した関わりを持つことが挙げられる。CPシートの作成など、立ち上げまでの準備はスタッフが一丸となって行ってきた。また、笑顔で優しくをモットーに患者やその家族の方達の精神的な支えとなることを心掛けてきた。開設から1年が経過し、患者やスタッフの声から、DSにおいてCPとケアコーディネーターの役割が重要であると再確認できた。今後は新たな課題を検討すると共に、日帰り手術の良さをアピールし普及に努あたい。
著者
北浦 道夫 西本 雅彦 佐牟田 健 戸田 成志
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.440-444, 2003

当院のペインクリニックでは主に痛みを持っ患者を対象に神経ブロックが行われているが、その合併症は多岐にわたっている。そのため、ペインクリニックにクリティカルパスを導入し、患者および医療従事者の理解度の向上、合併症の早期発見、インフォームドコンセントの充実、業務の効率化、チーム医療の充実、コスト管理などに効果を上げているので紹介する。<BR>当科でクリティカルパスを導入しているのは神経ブロックでは腹腔神経叢ブロック、胸・腰部交感神経節ブロック、神経根ブロック、三叉神経節ブロックなどであり、疾患では顔面神経麻痺に導入している。クリティカルパスは1種類のブロックにっき、患者用パス、医療従事者用パス、患者説明パスの3種類となっている。<BR>また、ペインクリニックにおいても採算を度外視して行われる時代ではもはや無い。現在導入されつつあるDiagnosis Procedure Combination (DPC) に対応できるように我々は各種ブロックに対し、コスト計算を行っている。<BR>現在電子カルテの導入に向け、クリティカルパスとオーダリングシステムをリンクさせることにより、よりいっそう効率的な医療を提供できるように努力中である。クリティカルパスの作成は医師だけで行うのは困難であり、看護師、放射線技師などの医療従事者は当然としてコスト管理については医療事務の協力も得ており、よりよいクリティカルパスを導入できるように推進中である。
著者
真野 俊樹 小林 慎 井田 浩正 山内 一信
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.329-334, 2003-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
16

医療改革についての方向性のひとつは医療機関からの情報公開である。患者と医師間における情報の非対称性の問題は、一般に患者側に発生し、その大きさによって患者が不利益を被る可能性があるが故に問題とされる。一方医療という財においては、例えば年代別、職業別などに、罹患しやすい病気を統計的に知りえても、各個人がいっ、どのような病気にかかるかは予測できないという不確実性がある。平成11年の受療行動調査によると、消費者は入院や外来など医療機関受診の際に「家庭・友人・知人」からの情報を重視しているという。われわれが健常人に行った調査では「友人」による情報を信頼している。ブランドは情報の非対称下でのシグナリング機能を果たし、評判によって無駄な探索を止め、取引費用を削減する効果がある。またブランドは、非排他性、非競合性をもち、外部性も持っために公共財であるという考え方もある。この視点から、医療機関が消費者の選択基準になりえるブランド形成の努力をおこなうことも重要ではないか。
著者
山内 豊明 近藤 由布子 藤内 美保
出版者
Japan Society for Health Care Management
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.304-310, 2003

介護のなかで感じる喜びが介護者の介護継続意志を促進させるのではないかと考え、誰から・どの程度・どのような機会に介護者が喜びを感じることがあるかについて明らかにすることを目的とした。<BR>在宅要介護者の家族介護者28人を対象とした半構成的面接により、喜びを感じる対象・程度・場面について調査した。<BR>サービス提供者から喜びを感じることがあるという人が27人中26人おり、その程度は、「大きい」・「とても大きい」のいずれかであった。28人中24人が要介護者から、14人中11人が同居家族から、27人中21人が親戚知人等から、28人中14人は自分自身から喜びがあるの回答であった。<BR>以上のことから、訪問看護師はサービス提供者として介護者が喜びを感じて介護をする上で重要な役割を担っていること、自分自身から喜びを感じている人が少ないため、介護者自身が喜びを自覚できるように働きかけることが有意義であることが明らかになった。
著者
尾藤 誠司 鈴鴨 よしみ 福原 俊一
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.423-428, 2005-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
10

平成14年にわれわれが作成した入院患者用患者満足度評価尺度であるHPSQ-25は, 信頼性・妥当性に優れた評価尺度であったが, 6つの下位尺度に関する因子構造分析の結果, 因子をよりシンプルなものに変更する必要性があることが示唆されていた.今回, HPSQ-25の再構築と, より簡便な尺度への質問項目削減を試みた. 関東地区の3医療施設における入院患者386名に対し再度HPSQ-25による患者満足度評価を行い, その後, 一定のルールを用いて項目の削減を行った.その結果, 前年度で問題とされていた4つの因子はすべて “スタッフと患者の問のコミュニケーション” という1つの概念に収束し, 4つの因子における合計17の質問項目は6つの質問項目にまで収束させることが可能であった.その結果, 新たに再構築された入院患者用患者満足度評価尺度は, 13項目3下位尺度のより簡便なものとなった. 新たな尺度の信頼性・妥当性の検証も行い, 満足すべき結果を得ることができた.
著者
渡辺 明良
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.478-481, 2003-02-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
5

クリティカルパスの導入目的には、医療資源の最適な利用によるコスト管理という側面があることは、当初より指摘されてきたところである。このコスト管理にあたり、クリティカルパスに示された活動をコスト情報として測定することが必要になるが、その手法は、まだ十分に開発されているとは言い難い。そこで、クリティカルパスがコスト管理に利用されている事例を通して検討した結果、疾病別の標準原価計算としてのクリティカルパスの利用が想定されたことから、この手法についての考え方を整理した。また、この原価計算を実施するためには、電子カルテ情報や物流システムなど、情報技術を活用したデータの抽出が今後の課題として認識される。この原価計算を通じて、コスト管理を中心にした業務改善のアプローチが期待されるところである。