著者
片山 剛 Takeshi Katayama 千里金蘭大学 教養教育センター
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-99,

後白河法皇の嗜好によって制作された『伴大納言絵巻』は、九世紀に起こった応天門の火災に取材した説話を絵画化したもので、炎の描写、多様な人物の躍動感にあふれた表現、劇的な展開などの魅力に溢れた絵巻物屈指の名作である。しかし、絵画の読み解きは必ずしも完全に行われているとはいえず、また絵巻物という性質ゆえに原本の体裁をそのまま伝えているとも思えないなどの問題を孕んでいる。 本稿では、従来の説に多くを依拠しながらも、未解決の問題に私見を加え、併せて細部の読み解きを試みるものである。
著者
浅井 千晶
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.80-84, 2010-10-29

宮崎駿監督の映画『崖の上のポニョ』は、異なる時空、生と死、現実と幻想の境界にあるダイナミックな物語である。この作品の舞台が海辺という境界の場に設定されていることで、原初の海と人間が生活する陸の世界の交錯があまり違和感なく受容できる。 さらに、『崖の上のポニョ』における「生命の水」の表象は、『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』における水の表象と比較すると、生命力の過剰を言祝いでいるかのようであり、映画の宣伝文句「生まれてきてよかった」というメッセージを裏書きする。 『崖の上のポニョ』は海なる母と地上から海の世界にきた父の間に誕生したポニョが人面魚から半魚人、人間へと二段階の変身を遂げること、海の世界の混乱が招いた大洪水で水没した町が水がひくと元通りである点など、不思議な力に満ちたファンタジーである。
著者
斎藤 富由起
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.73-84, 2007
被引用文献数
2

本研究では、研究1として、学校・家庭・地域における高校生版居場所尺度の作成を試みた。その結果、全ての領域で信頼性と妥当性のある高校生版居場所感尺度が作成された。また、高校の形態別による居場所感の相違を検討した結果、普通科高校とチャレンジ・スクールとでは、因子の性質が異なる可能性が示唆された。研究2では、学校・家庭・地域における大学生版居場所感尺度が作成された。その結果、全ての領域で「肯定的心理状態」因子と「価値観の共有」因子で構成された尺度が作成された。横断的研究の結果から、中学生の社会的居場所感因子は、大学ではより特定個人に対する高次の対他的因子へと変化する仮説が提唱された。この仮説を検討するためには、中学校と大学をつなぐ「高校生における居場所感」の再検討が求められる。
著者
原 雅子
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-21, 2010-10-29

数多の浦島太郎研究がある。本稿において、文学源流に仏教潮流が合流し、浦島子から新たな展開を加え浦島太郎に成長していく文学の在り方を中心に論じていく。
著者
原 雅子
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.34-38, 2010-10-29

高麗の大蔵経版木とそれを収蔵する木殿の工夫と八万枚版木は白樺が使用され普遍である。人智の営みが歴史を形成し沈黙する版木は唯の木板ではないことを教示してくれる。韓国の仏教は文化に堕す、あるいは葬儀を営むだけの仏教ではなく、心を説き修行している。我国のゆくえを思考する。沈思し深いものに目をやることを学んだ。版木から書物へ、さらに世界中がiPadの先駆けから情報機器をもって電子書籍(e-books)化を事業とする方向にある。タッチパネルで画面がくるくる移動し情報を得られる速度に驚嘆する。写本から版木、グーテンベルグ印刷機の紙の書籍から電子書籍のデジタル化の方向へ進むことは間違いのないことである。しかしpcも人間の開発物であるから人間の頭脳が先んじている。わたくしは逡巡し考えることを言霊なる言葉とともに持ち続けたい。八万枚の版木は黙してそう沈思しているかのごとくである。
著者
斎藤 富由起 吉田 梨乃 小野 淳
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.29-35, 2012-12-25

特別支援教育の実施に伴い,通常学級での発達障がいをもつ児童生徒への理解と支援が注目されている.その進捗状況を検討すると,障がいの概念については普及段階を終え,個別的・場面限定的な支援方法が模索されている.研究1では現在,教師が希求する支援方法の内容を検討した結果,特に「通常学級内でパニックを起こしている最中の児童生徒に対する支援方法」に課題があることが報告された.研究2では,「生じてしまった危険なパニック中の支援方法は確立されていない」との仮説(廣木,2012)に基づき,通常学級内での障がいを持つ児童生徒のパニックの種類と支援方法を検討した。その結果,80%以上の教師がパニック行動に悩まされた経験を持ち,危険性の高いパニック中の体系的な支援スキルも確立されていない現状が明らかにされた.危険性の高いパニック行動への対処は専門的なスキルであり,合理的配慮の中で検討されるべき事項である.「通常学級における危険性の高いパニック時の支援スキル」の確立が求められる.
著者
斎藤 富由起 小野 淳 社浦 竜太 守谷 賢ニ Fuyuki Saito Ono Atushi Syaura Ryuta Moriya Kenji 千里金蘭大学 生活科学部 児童学科 千里金蘭大学 生活科学部 児童学科 ものつくり大学 学生相談室 文教大学大学院 人間科学研究科
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.69-81,

子どもの権利研究において居場所感と自己肯定感の関連性が指摘されているが、これらを実証的に検討した研究は非常に乏しい。本研究では、子どもの権利における心理学的実証研究の一環として、全日制普通科高校生版居場所尺度の作成を試み、自己肯定感との関連性を検証した。その結果、信頼性と妥当性のある居場所尺度が作成された。研究2では、居場所感と無効化環境体験(Invalidating Environment)の関連性を検討した結果、両要因に負の相関関係が確認された。
著者
斎藤 富由起 小野 淳 社浦 竜太 山内 早苗 井手 絵美 吉森 丹衣子
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.19-33, 2010-10-29

特別支援教育の中でADHDの特に衝動性と多動性が小学校内で「問題行動」と認識されやすいことが指摘されている(斎藤・小野・井手,2008).この結果は,家庭が行う支援構造と小学校での支援構造を比較検討することで,家庭と学校の支援への認識にずれがない「統合的な共通理解モデル」を作成する必要性を意味する.そこで本研究では家庭と小学校の調整役を担う臨床心理士に半構造化面接を試み,「家庭での支援モデル」と「小学校での支援モデル」を導いた.また両モデルの相異を踏まえ,時間軸の認識を書くとした協働的な「共通理解モデル」が提案された.