著者
小泉 丈晴 工藤 暢宏 立石 亮 野村 和成 井上 弘明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-16, 2008 (Released:2008-01-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

‘愛知早生ブキ’などの三倍体品種の雌株に花粉稔性のある群馬県在来‘水ブキ’(雄株)を交配し,実生作出の可能性について明らかにした.さらに,‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)との交配により,得られた実生の特性を明らかにした. 1. フキの三倍体品種である‘愛知早生ブキ’,徳島県在来‘水ブキ’および‘吉備路’の雌株に群馬県在来‘水ブキ’(雄株)を交配することにより稔実種子が得られた.‘愛知早生ブキ’では採取した種子の2.0%,徳島県在来‘水ブキ’と‘吉備路’の種子では0.4%の出芽がみられた. 2. ‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生は,交配親に比べて,葉柄の生育が旺盛なものや葉柄部にアントシアニンの発生が無いものがみられた. 3. フローサイトメトリーによる相対的核DNA量の測定から‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生について倍数性を推定すると,‘AM-35’は二倍体,‘AM-1’と‘AM-51’は異数体と考えられた. 4. ‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生から選抜した‘AM-1’は,早生性で葉柄部のアントシアニンの発生は少なく,収量も多いことから,育種目標に適した有望な系統であった.この組み合わせ交配から得られた実生個体の選抜により,新たな葉柄収穫用品種が育成できる可能性があると考えられた.
著者
工藤 暢宏 木村 康夫 新美 芳二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-12, 2002 (Released:2007-11-30)
参考文献数
16
被引用文献数
9 11

カシワバアジサイの有用形質をセイヨウアジサイに導入することを目的として,種間雑種の作出方法を検討した. 1.セイヨウアジサイを種子親,カシワバアジサイを花粉親にした種間交配では,受粉後2週間ほどで子房が緑化肥大し,さく果を形成するが,完全な種子はできなかった. 2.交配後のさく果から胚珠を取り出し培養すると胚が発達して,肥大した胚が出現することが確認された.しかし,‘ハルナ’を種子親にした場合では,出現直後に胚が生育を停止し枯死した.‘ブルーダイヤモンド’を種子親にした場合には,非常に低い割合であるが,順化可能な雑種と思われる個体が得られた. 3.順化後温室で栽培した再性個体にはカシワバアジサイ特有の鋸歯が観察され,雑種であると判断された.しかし,雑種個体の全体的な形態は種子親の特徴を多く受け継いでいた.培養開始から2年後に胚珠から再生した雑種6個体のうち1個体が開花したが,花序は中心がやや山型に盛り上がったテマリ型で,種子親の‘ブルーダイヤモンド’の特徴が強く現れていた.
著者
工藤 暢宏 新美 芳二
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.428-439, 1999-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
6 13

アメリカノリノキ(Hydrangea arborescens)の有する不良環境適応性を'セイヨウアジサイ'(H. macrophylla)に導入することを目的として, 両種間で正逆交雑を行った.1. H. macrophyllaとH. arborescensの花粉を塩化カルシウムとともに管ビンに入れ, -20, 5および20℃の温度条件で貯蔵し, その後の花粉発芽能力を経時的に調査した.-20℃で貯蔵した花粉の発芽能力は長期間(10∿12か月間)維持されたが, 5℃で貯蔵した花粉は, 5ヶ月で, 20℃で貯蔵した花粉は5日でそれぞれ発芽能力を失った.2. 自家, 種内および種間交配ではどの組合せでも両種の花粉は柱頭上で良く発芽し, 花粉管は花柱内を伸長して子房内の胚珠に達した.3. 自家および種内交配では, 両種とも完熟種子が得られた.しかし, 得られた完熟種子数は品種や組み合わせで異なり, さく果当たり種子数は, H. macrophyllaでは10∿54粒, H. arborescensでは19∿38粒であった.4. 得られた種子をポットと無菌培地に播くと, いずれの場合でも, H. macrophyllaでは58∿85%の発芽率であり, H. arborescensの発芽率は, 14∿52%の範囲であった.H. arborescensの実生の第一本葉には毛茸の発生があり, これが両種の実生を区別する形態的特徴であった.5. 種間交配では, 種子親にH. macrophyllaを用いた場合, わずかに種子が得られ, H. arborescensの場合, 種子が得られなかった.得られた種子を人工培地に無菌播種した結果, 実生が得られた.しかし, これらは幼植物期にすべて枯死した.6. H. macrophyllaを種子親にした種間交配では交配60∿150日後の胚珠を培養して実生が得られたが, 子葉展開後生育を停止しすべて幼植物期に枯死した.一方, H. arborescensを種子親とした種間交配では交配60日後の胚珠を培養して1個体の実生を得たが, 子葉展開直後に枯死した.7. H. macrophylla×H. arborescensで胚珠培養により得た実生の子葉に形成された不定芽を切り取り, BA添加培地で継代した結果, 根系をもつ植物体が得られた.その茎頂部に花粉親のH. arborescensに特有の毛茸が発生したため, 雑種植物であると判断した.再分化植物は生育が緩慢で試験管外では生育しなかった.
著者
飯塚 正英 工藤 暢宏 木村 康夫 荻原 勲
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.767-773, 2001-11-15
参考文献数
25
被引用文献数
4 4

ユキヤナギ(Spiraea thunbergii)とシモツケ(S. japonica)を交配して赤花のユキヤナギの作出を目的として, 両種間で正逆交雑を行った.1. 乾燥条件, -30℃で貯蔵した花粉は貯蔵後360日でも発芽および受精能力を維持することがわかった.2. S. thunbergii×S. japonicaでは, -30℃で270日間貯蔵した花粉は柱頭上で良く発芽し, 花粉管は花柱内を伸長して子房内の胚珠に達し, 10日後には胚珠の肥大が観察された.一方, S. japonica×S. thunbergiiでは, 花粉は柱頭上で良く発芽したが, 子房内の胚珠へ到達しなかった.3. S. thunbergii×S. japonicaの交配16日後に摘出して培養した胚珠は正常に発育する実生を生じ, 8個体が得られた.それらの個体の形態は両親の中間を示し, RAPDパターンは両親のバンドを併せ持ったことから雑種植物であると判断した.
著者
工藤 暢宏 岡田 智行 木村 康夫
出版者
群馬県農業技術センター
雑誌
群馬県農業技術センター研究報告 (ISSN:13489054)
巻号頁・発行日
no.8, pp.83-88, 2011-03

冬あじさい「スプリングエンジェル」シリーズは、台湾や中国南部に分布する常緑性のカラコンテリギ(Hydrangea scandens spp. chinensis)とアジサイ(H. macrophylla)との種間雑種である。カラコンテリギを種子親、アジサイ園芸品種「チャーミングブルーリング」を花粉親として交配し、交配後の肥大胚珠を培養して得た雑種実生より選抜された品種である。「スプリングエンジェル」シリーズには、八重変化咲きの「スプリングエンジェル ピンクエレガンス」、花色(がく片色)がパステルプルーの「スプリングエンジェル ブルーエレガンス」、花弁にフリンジ(fringe) が人る「スプリングエンジエル フリルエレガンス」の3品種があり、いずれも、常緑性で、厳寒期(1~2月)に大輸の花を咲かせる特性をもつ。
著者
工藤 暢宏 木村 康夫 新美 芳二
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-12, 2002-04-01
被引用文献数
2 11

カシワバアジサイの有用形質をセイヨウアジサイに導入することを目的として, 種間雑種の作出方法を検討した.1. セイヨウアジサイを種子親, カシワバアジサイを花粉親にした種間交配では, 受粉後2週間ほどで子房が緑化肥大し, さく果を形成するが, 完全な種子はできなかった.2. 交配後のさく果から胚珠を取り出し培養すると胚が発達して, 肥大した胚が出現することが確認された.しかし, 'ハルナ'を種子親にした場合では, 出現直後に胚が生育を停止し枯死した.'ブルーダイヤモンド'を種子親にした場合には, 非常に低い割合であるが, 順化可能な雑種と思われる個体が得られた.3. 順化後温室で栽培した再性個体にはカシワバアジサイ特有の鋸歯が観察され, 雑種であると判断された.しかし, 雑種個体の全体的な形態は種子親の特徴を多く受け継いでいた.培養開始から2年後に胚珠から再生した雑種6個体のうち1個体が開花したが, 花序は中心がやや山型に盛り上がったテマリ型で, 種子親の'ブルーダイヤモンド'の特徴が強く現れていた.