著者
斉藤 博
雑誌
埼玉医科大学医学基礎部門紀要
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-75, 2004-03-31

ヒポクラテスの歳言"人生は短く,術の道は長い"は,セネカ,アリストテレス,シェクスピア,ディケンズ,ゲーテなど多くの著者に引用されている.ゲーテファウスト初稿では,ワーグナーの台詞で,"術のみちは長く,人生は短い"と逆に引用されている.私は,古代ギリシアでの"術"の意味を検討し,ファウストの台詞とファウスト初稿での台詞の差異を比較した.ゲーテはファウスト初稿では,術を生命より強調するために,箴言の順序を変え,さらに,箴言の終わりに感嘆符(!)を加えた.彼はファウスト初稿をファウストに書き換えた時に,ファウストでは,箴言のはじめの"ああ"を"ああ!"に変更し,行末の感嘆符を削除した.
著者
斉藤 博
出版者
埼玉医科大学
雑誌
埼玉医科大学医学基礎部門紀要 (ISSN:0287377X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-75, 2004-03-31

ヒポクラテスの歳言"人生は短く,術の道は長い"は,セネカ,アリストテレス,シェクスピア,ディケンズ,ゲーテなど多くの著者に引用されている.ゲーテファウスト初稿では,ワーグナーの台詞で,"術のみちは長く,人生は短い"と逆に引用されている.私は,古代ギリシアでの"術"の意味を検討し,ファウストの台詞とファウスト初稿での台詞の差異を比較した.ゲーテはファウスト初稿では,術を生命より強調するために,箴言の順序を変え,さらに,箴言の終わりに感嘆符(!)を加えた.彼はファウスト初稿をファウストに書き換えた時に,ファウストでは,箴言のはじめの"ああ"を"ああ!"に変更し,行末の感嘆符を削除した.
著者
赤間 啓一
出版者
埼玉医科大学
雑誌
埼玉医科大学医学基礎部門紀要 (ISSN:13499440)
巻号頁・発行日
no.10, pp.29-39, 2004

我々の3+1次元時空は,高次元時空のソリトンであるとし,その量子的ゆらぎから,我々の時空の重力場と物質の場の理論を誘導する.近年,我々の住んでいる3+1次元時空は,高次元時空の中に力学的に埋め込まれた3+1次元の超曲面であるとする「膜世界(braneworld)」の考え方が爆発的な注目を集めている.このような考えは,自然界の理解において,大きな可能性を拓くものであり,実は,古くから着実に研究されてきた重要テーマでもある.本稿では,はじめに,埋め込まれた時空から膜世界への研究の流れを概観し,次に,膜世界に関する筆者の一連の研究を概括し,筆者の考える膜世界の全体像を呈示したい.
著者
玉置 豊美 赤羽 明 高橋 浩 森下 貴司 滝沢 俊治 所澤 潤
出版者
埼玉医科大学
雑誌
埼玉医科大学医学基礎部門紀要 (ISSN:0287377X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-16, 2004-03-31

我々は群馬大学附属図書館本館書庫並びに特殊資料室に,未登録明治期教科書が大量に保管されていることを知った.蔵書の多くは旧群馬県師範学校,群馬県女子師範学校から継承されたものであった.本稿ではその中から我々による目録化がなされた理系和装本276冊を取り上げる.まず,我々による目録化に至る経緯を述べる.次いで目録作製の方針・細則を述べ,目録を掲載する.さらに,目録中の初所蔵を示す蔵書印に着目し,図書の由来ともなるその由来について考察する.
著者
斉藤 博
雑誌
埼玉医科大学医学基礎部門紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.11-30, 2006-03-31

ヒポクラテスの箴言「人生は短く 術の道は長い」は,ゲーテの『ファウスト初稿』では,ワーグナーの台詞として,「ああ,術の道は長く/人生は短い!」と,ヒポクラテスの「箴言」に,感嘆詞「ああ」,接続詞「と」を追加し,「術と人生」の順序は逆で,行末に感嘆符がつけられて引用された.『ファウスト』のメフィストフェレスの台詞では,「時は短く,術のみちは長い」と,ヒポクラテスの箴言とは全く同じ言葉ではないが,同じ語順で,感嘆詞と感嘆符はつけられていない.『ファウスト』(Faust)と『ファウスト初稿』(Urfaust)とで,感嘆詞と感嘆符(!)の数,単数,または,複数使用,位置について,計量言語学(quantitative linguistics)検索を行った.感嘆詞は 190 / 12,237 行(2%)中,悲劇Ⅰは 130 / 4,735(3%),悲劇Ⅱは 60 / 7,490(1%),感嘆符は 1,764(14%)で,悲劇Ⅰは 925(20%),悲劇Ⅱは 839(11%),感嘆符の複数使用は 205(2%)中,悲劇Ⅰは 114(3%),悲劇Ⅱは 91(1%)で,いずれも悲劇Ⅰが悲劇Ⅱより高頻度であった(Χ2 検定,p < 0.01).ゲーテは多くの感嘆詞と感嘆符を単数,または,複数使用,あるいは,台詞の始め,あるいは終わりなど,いろいろな語法で使用していた.ゲーテは『ファウスト初稿』を『ファウスト』に書きかえたときに,多くの感嘆符を行の前に挿入し,行末の感嘆符を削除する傾向にあった.箴言では,術を人生より強調するために,ゲーテは人生と術の順序を変え,台詞の最後に感嘆符を付けたと,筆者は推測した.ゲーテは『ファウスト初稿』を『ファウスト』に書きかえた時に,"ああ!"に感嘆符を挿入したが,おそらく,複数使用を避けるために行末の感嘆符を削除したと考えられる.結果的には,台詞の行末から初めの方への,感嘆符の転移が起きた.かくして,『ファウスト』では,「ああ!術のみちは長く/人生は短い」と引用された.
著者
赤羽 明
出版者
埼玉医科大学
雑誌
埼玉医科大学医学基礎部門紀要 (ISSN:0287377X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.17-28, 2004-03-31

2001年6月,群馬大学附属図書館に登録待ちの明治期教科書(和本)を見出し,物理及び理科関連書を中心に目録化と調査を開始した.2年を経過し自然科学系教科書の目録が作成された.本稿では,明治期から昭和初期までの理科教育課程を授業科目の名称に着目しつつ概観する.とくに目録中の教科書から明治19年の小学校令前後の理科教育を知るために,後藤牧太・他著『小学校生徒用物理書』と学海指針社編著『小学理科新書』について内容の比較を行い,個別科目(物理,化学,博物,生理など)から理科への転換について考察した.また,その後,約120年を経た現行教育課程の理科学習内容についても比較検討を行った.