著者
白川 哲朗
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.43, pp.230-244, 2006-03-08

本稿は、一九三六年(昭和一一)八月から一九三八年(昭和一三)三月までの間、樟蔭学園から発行された広報誌『樟蔭學報』を取り上げ、当時の樟蔭学園の状況について具体的に明らかにしようとしたものである。 まず、『樟蔭學報』創刊号冒頭に載せられた伊賀駒吉郎校長の「発刊の辞」、および『職員會誌』(樟蔭女専教授会議事録)一九三六年七月八日記事から、その発行の目的が、在学生とその保護者のみならず緑蔭会(高女同窓会)・緑翠会(女専同窓会)という二つの同窓会組織をも含み込む形で一体感を醸成し、樟蔭学園を支える集団としての結びつきの強化を目指したものであったことを指摘した。 次に、『樟蔭學報』全十九冊の表紙を一覧した。その中でまず、創刊号表紙のセーラー服と深緑色の袴を着した二人の女生徒の画像に注目し、それが昭和戦前期、とりわけ昭和一桁代の頃の樟蔭生の典型的なイメージを画像化したものであることを指摘した。さらに、第一巻第四号表紙に用いられた運動会の写真に注目し、『樟蔭學報』の運動会記事を検討することで、一九三七年七月の日中戦争勃発を境に、一九三六年度運動会に比べて一九三七年度運動会では極めて戦時色が強まることを明らかにした。 以上のように、『樟蔭學報』を検討することで、昭和戦前・戦中期の樟蔭学園の実態をより生き生きと描き出すことができる。そしてそれによって、当時の学校現場や女子教育の実態を考える上で重要な情報を提供することができるであろう。
著者
堀 裕
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.232-226, 2010-01-29

大阪樟蔭女子大学による奈良市?城寺の調査の一環として、近現代における?城寺の「縁起」に関わる資料を三点取り上げて紹介する。一つは、一八七九年(明治一二)の『寺院明細張』である。もう一つは、一九七四年(昭和四九)に録音されたと考えられる、先々代の住職故下間松甫氏による、?城寺の解説である。三つ目は、一九八八年(昭和六三)に、?城寺が主体となって境内に設置された?城寺解説板である。これら三点の資料それぞれについて、「縁起」を生成していく過程を示すとともに、各時代ごとの特色があることを示した。とくに、明治期の行政と?城寺による「縁起」をめぐるやりとりや、現代には、下間松甫氏や現在の住職によって、文化財への高い関心をもって新たな「縁起」が生成している点について指摘した。
著者
上田 秀樹 木村 雅浩 村上.ゆき
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.115-131, 2006-03-08

本学では、平成14年度から管理栄養士養成施設として、厚生労働省から認可を受けて、食物栄養学科では、その教育・養成のカリキュラムに沿った教育を行っている。管理栄養士養成施設は増加することが予想されており、管理栄養士養成施設の外部評価として、国家試験の合格率が重要視されることが考えられる。以上の観点から、食物栄養学科では、国家試験対策に特化した科目を設け、合格率の向上を図っている。このような状況から、管理栄養士国家試験対策の一環として、各学生の学力や理解力に応じた学習システムの構築が必要であると考えられる。本研究では、学内ネットワーク機器を活用した管理栄養士国家試験対策の学習システムを構築することを目的とする。学生の学習を支援するツールとして学内ネットワークを利用したWebシステム構築に関して、データベースの設計とユーザーインターフェースを検討した。国家試験の過去の問題や模擬試験問題をデータベース化することにおいてはほぼその基本形が定まったと考える。また、ユーザーインターフェースや結果出力についても一定の基準に達していると考える。 今後は、1)利用状況によるサーバーのCPUやメモリー等ハードウェアのパフォーマンスの評価 2)ユーザーインターフェースの評価 3)ASPページ内のコードのデバッグ 4)結果出力様式の検討など、小数のモニターからの評価を元に本システムの最適化を図ってゆきたい。
著者
モーザー ジェイソン
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.189-201, 2009-01-31

This paper introduces an experimental concept called the production cluster. The production cluster is a unit for measuring language complexity in open-ended pair work tasks. Current task-based studies often rely on units that when applied by the researcher involve breaking down learner production rather than looking at it holistically. The production cluster is a holistic macro-unit comprised of AS-units (Analysis of Speech Unit) that reflects concentrated learner engagement in his/her oral production and learning.
著者
川端 康之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.77-82, 2005-03-08

基礎科目から専門科目への連続性を確保するため、食物栄養学科1回生春学期必修科目の「化学」と「食品学総論」の授業について、1セメスターを前半・後半に分割し、前半を「化学」後半を「食品学総論」にあて、週2回の授業を試行的に行った。小テスト、期末試験、試験後アンケートの結果から、基礎から専門への連携がとりやすくなる、ゴールデンウィーク前に授業回数を確保できる、学生・教員ともに集中して授業が行えるなどの利点がある一方で、他学科からの履修生を受け入れにくい、再履修生を出したときの対応が難しい、授業の進み方が早く感じられる、などの欠点があることがわかった。新教育課程で学習した学生の入学時には、現在よりも学力格差の拡大が予想されるため、従来からの授業内容である「専門基礎科目としての化学」のほかに、化学を選択してこなかった学生を救済する目的の「高校化学の補習」を新たな科目として設定する必要があると感じた。
著者
西木 忠一 池田 良子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.232-223, 2002-03-06

平安末期または鎌倉初期に,『源氏物語』愛読者により,「夢の浮橋」の巻後日譚として創作されたのが,「山路の露」である。文章は至って流麗。『源氏物語』に精通した読者の筆になる作品であって,近時「世尊寺伊行」の女「建礼門院右京大夫」を,その作者とする説が提出されている。本注釈は流布本(『続群書類従』物語部所収)を底本にし,「補記」の頂にいささか重みを置いた。本稿に収めた各段の梗概は次ぎのごとくである。髪をおろした浮舟を前に,乳母子の右近は胸のうちを涙ながらに語り,いかなる折にも,決して姫君に遅れまいと心にきめていたものをと,尽きることのない深い悲しみに泣きくずれるのであった(二十八 五重)。右近から薫の愛情の深さに聞くにつけ,浮舟は薫・匂宮という二人の男性の間をゆれ動いたわが心のうちを思い見,これも前世からの報いであったのだと,しみじみ悟るのである(二十九 人目)。いよいよ下山するに至って,浮舟の母は娘を都に連れて帰ろうと言う。だが,浮舟は今更の思いがして帰京の話にのって来ない(三十 客人)。
著者
高瀬 英彦
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.143-150, 2002-03-06

学習とは「暗記」だと思っている学生が増えた。学習とは「工夫することを学ぶ」と気付いていないし,教員もそのことを指摘することがないようだ。フランス語を学ぶにあたって難しいとなげく前に,ノートの取り方,まとめ方を工夫しろと言いたい。フランス語はその形式・メカニスムに気付けば日本人には英語よりも学なびやすく,発音しやすい言語といっていい。「暗記」より「単純な基準」の理解とそれの「応用」,つまり「工夫することを学ぶ」ところにフランス語学習の醍醐味があることに焦点をあわせたメモ。1)教科書の問題点2)英語が唯一の外国語であるとの思い込み3)発音が難しいとの思い込み4)音節表の大切さ・見直しの提案5)アクセント6)名詞のジェンダー7)名詞の先行要素8)動詞の法と時制
著者
ジェイソン モーザー
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.191-201, 2010-01-29

In this paper I will discuss learner language complexity in oral tasks and how it has been conceptualized in task-based learning research. One of the key tools for measuring complexity in spoken discourse is the AS-unit (Analysis of Speech Unit). The AS-unit is a main clause and any attached subordinate clauses or sub-clausal units. I will first discuss the problems involved in codifying AS-units in data from communicative pair work tasks. I will demonstrate that subordination is not necessarily characteristic of communicative tasks, nor is it easy to identify in conversation, especially with beginner learners. In response I will argue that measuring learner productivity by words per AS-unit is an effective alternative. I will also demonstrate an AS-unit complexity benchmark based on AS-unit word count, in which units above a certain word count are deemed complex. The rationale for this benchmark will be discussed, and supported with examples from four beginner learners' data.
著者
竹内 さおり 白川 哲郎
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.151-156, 2007-03-20

本稿では、樟蔭学園デジタルアーカイブ構築の一部として、「朝輝記太留氏関連の写真資料」のデジタル化に関する取り組みについて報告し、さらに、「資料整理におけるQRコードの利用」について述べる。 朝輝記太留氏は樟蔭高等女學校の体育教師として、女子学生の体操教育に熱心に取り組んだ。その功績は、学園広報誌『樟蔭學報』における運動会の開催や登山の実施の記事として掲載されている。今回、調査対象とした「朝輝記太留氏関連の写真資料」は1935年にアメリカへ教育視察のために渡航したときの貴重な記録である。資料の状態がよくないので、できるだけ早くデジタル化しておくことが必要と思われる資料である。 これまでの作業で調査と整理が完了した資料は、資料保存箱に収納した。資料保存箱には、資料名を記したラベルを貼付してきたが、小さなスペースのため多くの情報は記入できないことに不便を感じていた。そこで、近頃よく見かけるQRコードを利用して、より多くの情報を付与できる工夫を行った。QRコードが携帯電話のバーコードリーダーを利用して容易に読み取れる点に注目して、ユビキタス環境へ近づけたいと思う。
著者
佐久間 貴士 長谷川 伸三 荒武 賢一朗
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.274-282, 2008-01-31

?珹寺は奈良時代に創建され、平安時代に紀有常が再興したと伝えられている。本尊は女人裸形阿弥陀仏で、五十年に一回衣替えをする時に公開した秘仏といわれている。 この?珹寺で二〇〇五年から地域文化センターと日本文化史学科の共同事業で、?珹寺(紀寺)総合学術調査を実施してきた。 調査は現在古文書調査と発掘調査を行っている。古文書調査は住職下間家に伝来したものを整理しており、近世から近代にかけての宗教史について、貴重な資料が多数見出されている。本論では、?珹寺についてのこれまでの研究を整理し、新史料から下間頼和と石田敬起についての紹介を行った。 また発掘調査では奈良時代の瓦が多量に出土したことから、?珹寺が奈良時代創建であることが確実となった。
著者
小林 政司
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.121-131, 2009-01-31

The effect of color and its combination on the motive of entrance to a clothing store was investigatedby using a computer system with twin display for indication of the storefront model stimulus. Eighttri-color combinations used for the experiment were chosen from the image scale for color scheme proposedby NDC (Nippon Color Design Lab.). It became clear that the explanation of the complicated judgement, such as the motive of entrance to astore, is very difficult by using single variable. It needs to be explained by the compound image of color orcolor combination. It was suggested that, the two dimensional, namely warm – cool and hard – soft,coordinate plane is useful for the explanation. The motive of entrance to a store is effected strongly by theimage of the color combination in order of the image of warm > cool – soft > hard. In addition, the resultobtained by the experiment supports the usefulness of the image scale for color scheme proposed.