著者
外山 明
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.93-117, 2021 (Released:2021-09-28)

半導体産業黎明期の1950年代に米国で発行された『トランジスタ・テクノロジ』という本がある。これはベル研究所とウエスタン・エレクトロニクス社が,発明して間もないトランジスタの製造技術を,技術援助契約(特許契約)をした企業に伝授するために発行した教本である。また,創業期のソニー(当時の社名は東京通信工業)が,国内他社に先駆けて同契約を結んで高額な特許使用料の対価として入手し,トランジスタ,そしてそれを使用したトランジスタラジオを早期に開発・発売をして世界に名を馳せるきっかけとなった本としても知られている。当時同社が受け取った『トランジスタ・テクノロジ』は,国内の多くの文献では全3巻と記され,言わば通説となっている。しかし,この通説は誤りであり,発行された背景や原書に記載された内容等を踏まえると全2巻が正しいはずである。本稿ではこの仮説を検証した上で,国内で誤った通説が広がった原因まで追究した。
著者
仲 修平 / 前田 豊 / 石田 淳
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.139-157, 2013-09-15

本稿の目的は、人びとの「勝ち組・負け組」意識が従業上の地位、世帯所得や婚姻形態とどのように関連しているのかをインターネット調査データの分析を通して明らかにすることである。分析の結果、「勝ち組・負け組」意識は、未婚・離死別であるか既婚であるかという婚姻形態と強く結びついていつことが示された。また、「勝ち組」意識を持つうえで重要だと考えられてきた正規雇用の地位には、強い影響力はみられなかった。しかし、婚姻形態と従業上の地位との交互作用の分析では、未婚・離死別の場合は正規雇用に比べて無職、あるいは非正規雇用であることによって「負け組」意識を持ちやすい一方で、既婚の場合は逆に「勝ち組」意識を持ちやすい傾向であることがわかった。さらに、世帯所得との交互作用においても既婚の場合、世帯所得の増加によって「勝ち組」意識を持ちやすい顕著な傾向が示された。従業上の地位や世帯所得という「地位達成」変数の「勝ち組・負け組」意識に対する効果は、婚姻形態という「ライフスタイル」の地位によって異なることがあきらかになった。
著者
清水 一
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.165-180, 2021 (Released:2021-07-28)

理工系学部(約240学部)のデータを分析した結果,①学部卒業後の進路として,偏差値の低い大学ほど就職を選び,偏差値の高い大学では進学を選ぶ確率が高いこと,②退学率,進学率とST 比率は有意な相関があるものの実質的な効果は小さいこと,進学率と就職率の和である決定率はST 比率と有意な関係がないこと,③理学部と工学部の比較では,退学率には有意な違いがないが,進学率,進路の決定率は工学部のほうが有意に高いことが分かった。 また,社会科学系と理工系の比較では,①どちらも退学率,就職率,進路決定率に対して偏差値の影響が大きいこと,②退学率の全体の平均値は同程度で,国公立・私立別・偏差値階級別の退学率の傾向も両方の学部系統で似ていること,③理工系では国公立は私立より退学率が有意に低く,就職率,進路の決定率は有意に高い。一方,社会科学系では国公立と私立に有意な差はない。