著者
鳴海 史生
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.29-36, 2017-10-31

アメリカのチェンバリスト、ブレドリ・リーマンが2005 年に『アーリー・ミュージック』誌で発表した論文は、斯界に大きなセンセーションを巻き起こした。バッハがいかなるやり方で鍵盤楽器を調律していたのかは長らく不明であったが、われわれが頻繁に目にする《平均律クラヴィーア曲集》第1 巻の序文に記された渦巻模様こそ、その方法を示すものだ、というのである。加えてリーマンは、三種類の渦巻が5度の調整の度合いを具体的に表わすとし、「バッハ調律」の姿をきわめて鮮明に描き出した。こんにち、いわゆる古楽の世界では、それが定説となっている感がある。しかし、実際に「バッハ/ リーマン調律」で演奏してみると、多少なりとも違和感を覚えない人はいないであろう。本論は、それを再検討し、三種類の渦巻が示すであろう5度の調整の度合いを修正することによって、より快適な「バッハ調律」を提案するものである。
著者
鈴木 常恭
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-55, 2007-11-30

テレビジョン番組は、ほとんどが先行する演劇、大衆演芸、歌劇などの実演形式、そして映画の表現形式を敷衍したものである。しかし、クイズ番組は放送メディア(テレビ、ラジオ)が、独自に開発した数少ない番組形式である。この番組形式は、テレビが登場して以来いまも多くの視聴者を獲得している。そして、この番組形式は、いま世界中のテレビジョン放送が共有する主要なジャンルとして位置づけられている。この研究ノートでは、テレビ番組研究の一貫として、はじめにテレビ番組におけるジャンルの生成と確立に言及し、これを踏まえクイズ番組の構成要素、出題と知、演出そして受容のされかたを番組の変遷を踏まえ考察する。
著者
田村 和紀夫 Wakio TAMURA 尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.53-63, 2014-03-31

モーツァルトのオペラ・ブッファ『フィガロの結婚』K.492 はオペラの歴史に画期的な一頁を開いた。バロックのオペラ・セリアは、登場人物の感情を表現することによって、劇を形成していた。しかし『フィガロの結婚』では、盲目的な「欲望」が劇を動かす。この全く新しい劇的原理を明らかにしたのが、ケルビーノのアリアである。この論文では、ボーマルシェの原作との比較を通じて、ダ・ポンテとモーツァルトの「改作」の意味を検証する。そしてそこから『フィガロの結婚』がもつ画期性を具体的に解明し、バロック・オペラからの決定的な訣別の軌跡を辿る。Mozart's opera buffa "The Marriage of Figaro" K.492 became a epoch-making work in the history of operas. The opera seria in the baroque era had formed a drama by expressing the various emotions of characters. However, in "The Marriage of Figaro", it is a blind "desire" thatdevelop the play. The aria of Cherbino revealed this completely new dramatic principle. This study, through the comparison with Beaumarchais's original play, intends to clarify the meaning of"adaptation" of Da Ponte and Mozart., and to verify the decisive progress of "The Marriage of Figaro" that made the farewell to baroque operas.
著者
鳴海 史生 Fumio NARUMI 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.27, pp.29-36, 2017-10

アメリカのチェンバリスト、ブレドリ・リーマンが2005 年に『アーリー・ミュージック』誌で発表した論文は、斯界に大きなセンセーションを巻き起こした。バッハがいかなるやり方で鍵盤楽器を調律していたのかは長らく不明であったが、われわれが頻繁に目にする《平均律クラヴィーア曲集》第1 巻の序文に記された渦巻模様こそ、その方法を示すものだ、というのである。加えてリーマンは、三種類の渦巻が5度の調整の度合いを具体的に表わすとし、「バッハ調律」の姿をきわめて鮮明に描き出した。こんにち、いわゆる古楽の世界では、それが定説となっている感がある。しかし、実際に「バッハ/ リーマン調律」で演奏してみると、多少なりとも違和感を覚えない人はいないであろう。本論は、それを再検討し、三種類の渦巻が示すであろう5度の調整の度合いを修正することによって、より快適な「バッハ調律」を提案するものである。Bradley Lehman's article in the "Early Music" (2005) made huge waves internationally in the world of music, especially of harpsichord and pipe organ. The exact temperament used by J. S. Bach has been unclear for a long time. Lehman claims that the key to the mystery has been hidden in the spiral diagram at the title page of "Das wohltemperierte Clavier" manuscript (1722). He regards three different kinds of spiral diagrams as intervals of narrowed 5ths: it could clear the tuning system used by Bach. Sadly, Bach/Lehman temperament is not comfortable. This paper aims to reconsider the temperament, and to propose the more comfortable keybord tuning for Bach's music.
著者
八木 慶太郎 KEITARO YAGI 尚美学園大学総合政策学部総合政策学科非常勤
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.28, pp.47-52, 2018-03

筆者は2015年度から主に音楽応用学科と情報表現学科の英語教育を担当しているが、音楽応用学科では音楽ビジネス、情報表現学科ではゲームビジネスに関わる世界的に著名な人物をそれぞれ1人取り上げ、これまでの人生や仕事、リアルタイムの活動状況について、1年間じっくり英語で学ぶ機会を提供することを試みている。本稿では、音楽応用学科における英語教育について述べる。音楽ビジネスに関わる人物としてテイラー・スウィフトを取り上げることの意義について考究した。学生と年齢が近く、また日本人のファンも数多く存在するテイラー・スウィフトを題材とすることで、学生の動機付けに資することが期待できるだけでなく、音楽応用学科での教育・研究の一領域である音楽ビジネスについて英語で学ぶ機会も同時に提供できるのではないだろうか。このような考えから、テイラー・スウィフトを通して、音楽応用学科ならではの英語教育をどのように構想・展開できるかということについての私見を提示した。I have considered the significance of using Taylor Swift as a subject for English-language education at the Department of Music Business Development. Because of her proximity in age to students, and her large number of Japanese fans, studying the music of Taylor Swift could increase students'motivation. It would also offer the opportunity for them to learn,in English, about the music business, one of the education and research areas covered at the Department of Music Business Development. Based on this idea, I have offered some observations on how Taylor Swift could be used as a subject to conceive and develop English-language education in a way that is unique to the Department of Music Business Development.
著者
茂出木 敏雄 Toshio MODEGI 尚美学園大学芸術情報学部情報表現学科非常勤
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.26, pp.85-104, 2017-03

既開発の音響信号からMIDI 符号に自動変換するツール「オート符」は、一般化調和解析に基づく周波数解析を採用することにより倍音を含む和音を高精度に解析できるという特徴があり、楽器音に限らずボーカルなど、標準的なMIDI 音源で近似的に原音響信号を再現可能なMIDI データを生成できる。このソフトウェアは、1996 年にWin32 アプリケーションとしてWindows NT/95 上で開発に着手し、2001 年より一般財団法人デジタルコンテンツ協会のホームページより約14 年間無償配布を行いながら、改良を重ねてきた。その間、Microsoft のWindows OS は数々のアップグレードがなされてきたが、本ツールはそれらの影響を受けず、最新OS のWindows 10/64bits 版まで問題無く稼働し続けてきた。しかし、2016 年夏に行われた"Windows10 Anniversary Update" により、MIDI 再生系に不具合が生じるようになった。これに対し、アプリケーション側に改良を加え、従来通り安定に稼働するように復旧させることができた。本稿では、本問題の調査結果と回避策について報告する。Our previously developed audio to MIDI-event converter tool "Auto-F" has a feature of highprecision harmonic tone analysis functions based on the Generalized Harmonic Analysis algorithm. Applying this tool, from given vocal acoustic signals we can create MIDI data, which enable to playback voice-like signals with a standard MIDI synthesizer. We began developing this software as a Win32 application on the Windows NT/95 platform in 1996. Since 2001, we have distributed this software tool for free at the Website of the Digital Content Association Japan for about 14 years, with several improvements added. In these years, Microsoft has released several upgraded Windows Operating Systems, and our developed tool could catch up with these updates and continue running on newer platforms until the latest Windows 10/64bits. However, the "Windows 10 Anniversary Update" released in the last summer, has influenced on the MIDI sequencer function of this tool. Then, we have improved this tool and we could successfully make its execution stable on this newest platform. In this report, we present results of our tracking of this software defect and our adopted technique for avoiding it.
著者
久保田 葉子 Yoko KUBOTA 尚美学園大学芸術情報学部
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.33-44, 2008-11-01

Johannes Brahms(1833-1897)は自作の交響曲、ピアノ協奏曲、声楽を含むオーケストラ作品、セレナーデ、序曲、ほとんどの室内楽作品をピアノ・デュオの編成にアレンジして残している。また、同時代の他の作曲家も次々とブラームスの作品を編曲し、彼の作品は当時、様々な編成で世に広まっていった。ここでは19世紀の編曲のあり方、作曲家と出版社の関係、ブラームスの作品がどのように市民に享受されたかを考えたい。Johannes Brahms (1833-1897) arranged most of his orchestral- and chamber music for piano duo. Many contemporaries of Brahms also arranged his works in various instrumental combination. The common practice in 19th century realized, that more people would have opportunity to play and know his music. In this report, I study arrangements not by Brahms, about arrangers who worked with piano music of Brahms, and how the publishers dealt with works of Brahms.