著者
塩澤 全司 高橋 昭
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.10-19, 2000

向坂兌(1853年4月~1881年6月)は,明治維新に活躍した日本の法曹界の偉人である。28歳で夭逝したため,現在その名を知る人は少ない。向坂は佐野藩に育ち,明治3年に貢進生となり,大学南校に進み,東京開成学校で学び,学力優秀であった。入江陳重,岡村輝彦らとともに,明治9年に第2回文部留学生として英国に留学し,Middle Templeにて法律を学び,明治12年に英国の法廷弁護士・バリスター(barrister)の資格をとる。その後,ヨーロッパ各国を歴訪し,明治14年5月に帰国したが,肺結核のため,同年6月14日に他界した。夭逝を悼む人が多く,顕彰碑が建てられた。これは戦争で戦火に破損されてはいるが,今も龍巌寺に存在する。向坂兌の姉は「升」といい,名古屋大学第三代学長勝沼精藏の祖母である。升は,夫・精之允が35歳で自害し,息子・五郎が40 歳で遭難死したため,孫の精藏と六郎を養育した。国際的な活躍をし,多くの人々を導いた勝沼精藏は,若くして他界した向坂兌の遺影を大切にしていた。
著者
大矢正算 木戸啓 小松紀
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.21-26, 1988

著作者の意向により本文は非公開です。冊子版をご覧ください。 昭和61年2月13日、狩猟会のリーダーである50歳の男が山梨県の南アルプス山中でイノシシ狩中ライフル銃が暴発して死亡したとの届け出が警察になされた。法医解剖により、被害者には背面腰部に遠射による射入銃創が、陰茎根部直上に射出銃創が認められた。めずらしいことに陰茎包皮内に再貫通銃創もみられた。死因は腸および腸間膜破裂ならびに腰仙椎の粉砕骨折による腹腔内出血と考えられた。凶器は口径約8mm前後の小銃であると推定された。警察での取調べの結果、加害者は狩猟会の仲間の1人である43歳の男であることがわかった。彼は被害者をイノシシとまちがえ約70mほどの遠距離から口径7.8mmのライフル銃で射ってしまったと告白した。後の現場の見分によっても、被害者はおそらくしゃがんでいる姿勢で、背面を射たれたことが確かめられた。 On 13 February 1986, there was a report to the police that a 50-year-old man, leader of a hunting party ,accidentally shot himself to death with his rifle while hunting wild boars in the South Alps of Yamanashi Prefeture. Medicolegal examination revealed that the deceased sustained a distance entrance gunshot wound in the lumbar region of the back and an exit wound just above the root of the penis. A remarkable re-penetrating gunshot wound through the prepuce of the penis was seen, too. The cause of death was considered to be an intra-abdominal haemorrhage due to ruptures of bowels and the mesenterium as well as crush fractures of the lumbo-sacral vertebrae. The wearpon was determined to be a firearm of about 8 mm calibre. Crime investigation by the police disclosed that the assailant was a 43-year-old man, a member of the hunting party. He confessed that he misstook the victim for a wild boar and shot the victim with his rifle of 7.8 mm calibre at a range of about 70 m. Subsequent investigation of the scene confirmed that the victim had been shot in the back probably in a squatting posture.
著者
村松 仁 森 千鶴 永澤 悦伸
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.42-47, 2000
被引用文献数
5

近年,香りの人体へ及ぼす影響について検討した研究により,様々な効果があることが明らかとなってきている。その中に不安の軽減やストレス軽減などの精神面への効果がある。この精神面に対する効果を精神看護に応用することは,精神看護の幅を広げることにつながり,非常に意義深いことと考える。今回はその基礎的なデータを収集する目的で,精神的ストレスがある状態でグレープフルーツの香りを提示した場合,どのような影響が起こるのかを実験により検証した。その結果,グレープフルーツの香りには,心理指標において状態不安を軽減し,覚醒水準を上昇させる傾向があり,リラクゼーションに応用できる可能性があることが示唆された。