著者
二ノ宮 淳 荒井 章司
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
岩鉱 : 岩石鉱物鉱床学会誌 : journal of mineralogy, petrology and economic geology (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.235-249, 1998-07-05
参考文献数
19
被引用文献数
1 5

ニュージーランド,オケテのベイサナイトおよびそのかんらん岩捕獲岩とメルトの反応物中のかんらん石,スピネルを記載した。かんらん石斑晶は二種類に大別できる。斑晶 (I) (コアでFo<sub>85</sub>-Fo<sub>76</sub>, リムでFo<sub>76</sub>) は小型で自形性が高く,非変形で,細粒スピネルを包有する。斑晶 (II) (コアはFo<sub>90</sub> 以下で均質,リムはFo<sub>85</sub>-Fo<sub>76</sub> の正累帯) は大型で,自形&sim;他形である。コアは変形組織を有し,リムのみスピネルを包有する。斑晶 (I) のうち,低Fe<sup>3+</sup> グループのスピネル (高Cr#) を包有するものは,かんらん岩中の斜方輝石とメルトの反応物起源,高Fe<sup>3+</sup> グループのスピネル (低Cr#) を有するものは,メルトから結晶化したものであろう。斑晶 (II) は外来結晶 (かんらん岩起源) 起源で,化学的,形態的に様々な改変を受けている。ピクライト玄武岩やアルカリかんらん石玄武岩のような,かんらん石斑晶に富む火山岩中のかんらん石斑晶は,メルトとかんらん岩との反応により,多起源性たり得る。
著者
氏家 治 田中 るみ 渡邊 和徳
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
岩鉱 : 岩石鉱物鉱床学会誌 : journal of mineralogy, petrology and economic geology (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.94, no.9, pp.315-328, 1999-09-05
参考文献数
41
被引用文献数
7 8

毘沙門岳火山は単斜輝石&mdash;斜方輝石安山岩&sim;デイサイトと比較的少量の角閃石安山岩からなる。Sr/Y>40, SiO<sub>2</sub>&asymp;63%, Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>&asymp;18%の組成を有するこれらの岩石はアダカイト質であり,近隣の火山の岩石と比べてK<sub>2</sub>O, Rb等の液相濃集成分に乏しく,基本的には,広域的安山岩マグマと当火山に固有の珪長質マグマの混合物と考えられる。珪長質端成分マグマは,Mgに富む斜方輝石(Mg/(Mg+Fe)&asymp;0.80),単斜輝石(Mg/(Mg+Fe)&asymp;0.82)恐らくマントル由来の橄欖石(Fo&asymp;90)を特徴的に含み,その化学組成(SiO<sub>2</sub>>65%, Na<sub>2</sub>O&le;3.2%, K<sub>2</sub>O&le;1.2%, Rb&le;20 ppm, Y<10 ppm, Nb&le;6 ppm,全FeO/MgO&le;1.6,およびSr/Y>60)はアダカイトの特徴をより明瞭に示す。断定するには未だデータ不足だが,この端成分アダカイトマグマは沈み込みつつあるフィリピン海プレート海洋地殻の部分溶融作用で生じた可能性が高い。
著者
坂野 靖行
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩鉱 : 岩石鉱物鉱床学会誌 : journal of mineralogy, petrology and economic geology (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.189-194, 1997-05-05
参考文献数
17
被引用文献数
2

四国中央部猿田川地域の三波川変成域から得られた石英片岩中の角閃石のコアに含Mnウインチ閃石(MnOとして最大4.19 wt.%)が見出された。石英片岩の構成鉱物は石英,曹長石,角閃石,白雲母,ざくろ石,緑泥石,褐れん石,方解石,燐灰石,スティルプノメレン,電気石,赤鉄鉱,黄鉄鉱である。角閃石は自形から半自形で,最大長径700 μmである。角閃石のコアの組成は,バロワ閃石からウインチ閃石をへて含Mnウインチ閃石まで変動する。角閃石のリムはアルカリ角閃石(主にマグネシオリーベック閃石)とウインチ閃石である。石英片岩中のざくろ石はスペッサルティン成分に富む(59-79%)。
著者
内田 悦生 前田 則行 中川 武
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩鉱 : 岩石鉱物鉱床学会誌 : journal of mineralogy, petrology and economic geology (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.162-175, 1999-05-05
被引用文献数
3 23

アンコール遺跡に使用されている主要石材の一つであるラテライトの研究を行った。調査はアンコール遺跡の主要25遺跡において行った。<br>   アンコール遺跡に使用されているラテライトはその組織によりピソライト質ラテライトと多孔質ラテライトとに分けられる。その主要構成鉱物はどちらも同じであり,針鉄鉱,赤鉄鉱,カオリナイトおよび石英である。<br>   調査した25遺跡は,使用されているラテライトの孔隙サイズと帯磁率に基づき5つのグループに分けられる。ただし,プノム・クロムとバンテアイ・スレイは例外である。この分類は微量元素であるAs, Sb, SrおよびVの含有量からも裏付けされる。このことはラテライトの石切り場が時代とともに変化したことを示している。<br>   ラテライト材の層理面方向を調査した結果,層理面が縦になっている石材の割合はアンコール・ワットより前の建造物では高いが,アンコール・ワット以降の建造物ではその値が低くなっている。このことは,アンコール・ワット以降では層理面方向を意識して建造が行われたことを示している。<br>   プラサート・スープラとクレアンに隣接する池は,その護岸に使用されているラテライトの孔隙サイズ,帯磁率,層理面方向および微量元素の含有量からクレアンと同じ時代に建造されたと推定される。
著者
モリス ポール 三宅 康幸 古山 勝彦 ペレス パブロ
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩鉱 : 岩石鉱物鉱床学会誌 : journal of mineralogy, petrology and economic geology (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.442-452, 1999-11-05
被引用文献数
4 5

島根県東部中海の若い盾状火山である大根島の玄武岩について全岩の主要元素・微量元素·同位体組成を分析した。K-Ar年代は第四紀の約20万年前の噴出を示している。層準ごとのサンプルの化学組成の変異は,これらがすべて同一の玄武岩質親マグマ(100 Mg/(Mg+Fe)∼56, Ni 101-160 ppm, Cr 110-226 ppm)からの分化物であることを示している。SrとNd同位体組成からは,全地球組成に近い均一な起源物質が示される。初期のマグマは後期よりも低い溶融程度で生じ,より若い溶岩の間の化学的変異は,異なる溶融程度といくらかの地殻物質混合とにより説明される。