著者
内田 悦生 中野 孝教
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.149-169, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
46
被引用文献数
2

Skarns are rocks consisting mainly of calc-silicate minerals (skarn minerals) such as clinopyroxene and garnet, formed by hydrothermal metasomatism along the contact zone typically between limestone and granitic rock. They are sometimes associated with economical Pb–Zn, Mo, Cu, Fe, Sn, and W mineralization (skarn deposits). Skarns consist mainly of one or two skarn minerals, and often show a zonation. In case of skarns (endoskarns) derived from Al-rich rocks such as granitic rocks and sedimentary rocks, in addition to temperature and pressure, the supply of Ca from limestone controls the zonation. On the other hand, in case of skarns (exoskarns) derived from limestone, the supply of Si, Al, Fe and Mg from related granitic rock and other rocks, degassing of CO2, and redox state govern the zonation. The mineralized metal species in skarn deposits are determined by the granitic rock related to the skarn formation. Isotope analyses revealed that magmatic water supplied from the related granitic rock is greatly involved in the early stage of skarn formation, and influence of meteoric water tends to increase in the later stage.
著者
内田 悦生
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.XI-XII, 2003-06-15
被引用文献数
1

カンボジアのアンコール遺跡は9世紀から13世紀にかけて建造されたヒンドゥ教・仏教寺院であり, 主たる建築材料として砂岩およびラテライトが用いられている. 建造以来, 樹木の成長(第1図)や地盤の不同沈下等により遺跡の崩壊が引き起こされているが(内田・小河, 1997), それと同時に砂岩材には種々の要因による興味深い劣化現象が見られる(Uchida et al.,2000). アンコール遺跡で多用されている砂岩は, 灰色~黄褐色砂岩(長石質アレナイト, 構成鉱物 : 石英,斜長石, カリ長石, 黒雲母, 白雲母, 岩石片)であり, 全ての時代にわたって岩石学的には同種の砂岩が使用されているが, その帯磁率には系統的な違いが認められ, 帯磁率に基づき石切り場の変遷が明らかにされている. この灰色~黄褐色砂岩には, 主として次のような劣化が認められる : (1) コウモリの排泄物に起因する劣化, (第2図, 第3図), (2) 方解石析出による劣化(第4図), (3)タフォニ(第5図~第7図), (4) 日射による膨張・収縮に起因する劣化, (5) 荷重による層理面に沿った亀裂, (6) 除荷による内部応力開放に起因する亀裂(シーティング). タフォニに関しては, その原因が必ずしも明らかではなく, 今後の解明が期待される. このような自然現象に伴う劣化・破壊ばかりでなく, 盗掘, 破仏や内戦による人為的な遺跡破壊も見られる.
著者
内田 悦生 前田 則行 中川 武
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩鉱 : 岩石鉱物鉱床学会誌 : journal of mineralogy, petrology and economic geology (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.162-175, 1999-05-05
被引用文献数
3 23

アンコール遺跡に使用されている主要石材の一つであるラテライトの研究を行った。調査はアンコール遺跡の主要25遺跡において行った。<br>   アンコール遺跡に使用されているラテライトはその組織によりピソライト質ラテライトと多孔質ラテライトとに分けられる。その主要構成鉱物はどちらも同じであり,針鉄鉱,赤鉄鉱,カオリナイトおよび石英である。<br>   調査した25遺跡は,使用されているラテライトの孔隙サイズと帯磁率に基づき5つのグループに分けられる。ただし,プノム・クロムとバンテアイ・スレイは例外である。この分類は微量元素であるAs, Sb, SrおよびVの含有量からも裏付けされる。このことはラテライトの石切り場が時代とともに変化したことを示している。<br>   ラテライト材の層理面方向を調査した結果,層理面が縦になっている石材の割合はアンコール・ワットより前の建造物では高いが,アンコール・ワット以降の建造物ではその値が低くなっている。このことは,アンコール・ワット以降では層理面方向を意識して建造が行われたことを示している。<br>   プラサート・スープラとクレアンに隣接する池は,その護岸に使用されているラテライトの孔隙サイズ,帯磁率,層理面方向および微量元素の含有量からクレアンと同じ時代に建造されたと推定される。
著者
原口 強 下田 一太 杉山 洋 登坂 博行 内田 悦生 山本 信夫 中川 武
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は密林に覆われた古代都市アンコール帝国の実像解明を目的としている.2012年に取得されたLiDAR地形データから作成した高分解能赤色立体図は密林下の地形と遺構を鮮明に描き出し,王都アンコール・トム周辺地域を含む往時の都市構造を解読することが可能となった.LiDAR地形データをベースに王都内の現況水路網の配水・排水検証と降雨に対する挙動を数値計算した結果、自然勾配を生かした水路網と溜池群などの水利都市構造が,雨季と乾季に二分されるこの地域の気象環境条件を克服し,多数の人口を維持するために機能していたことが推定された.