著者
中川 良隆
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.359-368, 2004

本研究はオーレスンリンク、東京湾横断道路、首都高多摩川・川崎航路沈埋トンネル等の大型海洋横断連絡路プロジェクトの建設マネジメントを比較して、我が国のこれからの建設事業の効率的な遂行の方策を検討することを目的としたものである.調査の結果、発注方式、発注ロット規模・数、発注者組織、発注者・コンサルタント・建設請負会社の関係、品質管理方法、設計変更方法、受注者への支払査定方法、インセンティブ等に大きな差異があることがわかった.これらの要因により工事期間が長くなる等の非効率が発生している.検討結果を踏まえ、今後の我が国の大型建設事業の遂行に当たっての効率的な建設マネジメントを提言した.
著者
青木 俊明 中居 良行
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.427-432, 2004

本稿は、合意形成の効率化という観点から、社会資本整備に関する市民講座の必要性を提案するものである。まず、合意形成の現状を把握する題材の一つとして、仙台市営地下鉄東西線の市民説明会における市民発言について内容分析を行った。分析の結果、市民発言には、1) 説明責任の果たし方、2) 事業コスト、3) 行政に対する不信感の表明、が多いことが分かった。同時に、市民発言の中には社会資本整備に関する初歩的知識を有していれば回避される質問が約2割含まれていることも分かった。これを踏まえ、効率的な合意形成を図るための方策を検討した。その結果、多くの市民が社会資本整備に関する基礎知識を得ることで合意形成に要する時間コストが節約されるとともに、建設的な市民発言が増加する可能性が挙げられた。これより、社会資本整備に関する市民講座を積極的に開設すべきであることが提案された。
著者
阿部 賢一 金子 博治 藤原 基文
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.23-34, 1995

後進国の人々が職を、より良い収入を、より良い生活を求め、国境を超えての移動が増加している。我が国の外国人労働者の大半が不法就労者である。我が国の入国管理制度の内容と外国人労働者の実情を検討した。不法就労者の存在は、劣悪な労働条件、安い賃金・労働災害および疾病の多発など深刻な社会問題を引き起こしている。日本人労働者との差別、基本的人権問題もある。彼らの存在は、我が国の産業構造の転換の障害ともなり、社会底辺層の増大による安心社会の基盤崩壊にもつながる。外国人労働者問題の解決は極めて難しい。欧米の事例はそれを示している。現行の入国管理制度には種々の問題点があるが、現時点では単純外国人労働者の導入を阻止すべきである。一方、外国人実習制度は建設業界においても好評であり、国際協力の観点から、これを充実・促進し、技術移転を進めるべきである。しかし、人手不足の対応のみに利用されないように監視が必要である。
著者
青木 俊明 荒砥 真也 塩野 政徳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.55-64, 2007

公共事業の合意形成では、周囲の他者の意向が自己の態度形成に強く関わることがある。特に、地方部では、強いコミュニティーが残っている地域も多く、この傾向は強まると思われる。一般に、交渉においては、その過程の公正さが重要であることが報告されているが、他者の意向の影響を取り込んだ検討は十分には行われていない。そこで、本稿では、不利益を想起させる同調圧力が、行政担当者から示される場合を想定し、市民の態度形成の仕組みについて検討を行った。東北工業大学の学生を対象にシナリオを用いた心理実験を行ったところ、次のような知見を得た。すなわち、1) 周囲の人の反対を相千に伝えた場合には、同調圧力が生じる一方で手続き的公正さの評価が高まる。2) 周囲の反対とそれによる不利益受忍の可能性が知覚された場合には、自己利益保護の観点から賛否態度が形成される傾向が示唆された。このとき、手続きの公正さは重要な態度形成要因ではないことも示唆された。3) 周囲の人の反対が知覚されない場合には、自己利益感と手続きの公正さに基づいて態度が形成されることが改めて確認された。