著者
中田 安彦 周佐 喜和
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.35-39, 2002-03-15

最近の日本の流通小売業にとって、営業時間延長は売上高を増やすための最も効果的な方策の一つとして用いられている。しかし、営業時間延長が経営成果の改善につながるためには、経営管理面での対応が不可欠である。コンビニエンスストアや中堅百貨店(後に専門店ビルになる)の事例を通して、時間帯別に品揃えや店内展示をきめ細かく変えたり(マーケティング面での対応)、非正規従業員まで活用した職場配置やローテーションを作成したり(人的資源管理システム面での対応)するなどの経営管理上の対応が、営業時間延長の成果を得る上で不可欠であることを示す。
著者
横山 道史
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-33, 2007-03-28

本稿は、日本のフェミニズムにおいてエコフェミニズムが不在である理由とその背景について考察するものである。日本においても、エコフェミ論争(1985)が象徴しているようにエコフェミニズムに関する理論的知的格闘が存在してこなかったわけではない。しかし、日本においてエコフェミニズムがフェミニズムの一つの潮流として未だ根付いていないように見受けられるのはなぜなのか。本稿は、このような問題意識を基盤として、フェミニズムとエコロジー思想が接近・遭遇しつつも距離をとらざるを得なかった事情について考察するものである。その際、エコフェミ論争の議論を中心に検討し、また、日本におけるエコフェミニズムの可能性を探っていくという意味で欧米のエコフェミニズムの議論も併せて検討していきたい。
著者
石川 祐輔 大矢 勝
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-7, 2007-03-28

安全性に関する消費者情報の分析手法開発のための基礎的研究として、身近に存在する化学物質である洗剤と食品添加物の安全性に関する日本語、中国語、英語のWeb ページを調査した。調査対象Web ページは、検索エンジンGoogle で「LAS 界面活性剤」「合成洗剤」「石けん」(洗剤関連キーワード)及び「安息香酸」「ソルビン酸」「パラベン」(食品添加物関連キーワード)を検索し出力された上位200 件とした。それぞれのキーワードについて、対象物質の安全性に関する情報の割合、肯定・否定・中立情報の割合などを調査し言語間で比較した。その結果、①英語の洗剤関連の化学物質否定情報は農薬等を対象としたものが多い、②中国語情報では3 種の食品添加物の優劣を明確に打ち出しているが日本語と英語では添加物の種類による評価の差は少ない、③日本語は中国語・英語と比較して合成化学物質の安全性関連情報の割合が高く化学物質否定情報の割合も高い、などの結果を得た。
著者
加藤 慶
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.55-65, 2006-02-28

性同一性障害の表象はいかなるものであるのか。本稿は性同一性障害の表象を、新聞メディアを通じて明らかにすることに主題を置いている。分析対象とした時期は埼玉医科大学によって、性同一性障害に社会からの注目が集まった時期から、戸籍の性別訂正が可能となるまでである。
著者
横山 道史
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.23-35, 2004-12-15

本稿は、滋賀県で起こったびわ湖石けん運動を事例とし、その中で女性たちがその環境問題と環境運動の展開過程にどのように関わったのか、またその過程や他の様々な問題に取り組むなかで、女性たちがどのように社会的にエンパワーメントされていったのかについて、アンケート調査とヒアリング調査より把握し、石けん運動をエコロジカル・フェミニズムの実践として再評価するものである。
著者
黄 齡萱
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-20, 2007-03-28

本稿は、台湾における女性運動の変遷を概観したものである。国民党政権が台湾に撤退してから後、台湾は、軍事や経済、教育などにおいて、全面的にアメリカモデルを導入することによって「脱日本化」を図り、さらにまた「再中国化」(中国伝統価値の強化)を図ってきていた。台湾の女性学および女性運動の発展においても、政府のアメリカ路線、そして民間のアメリカ留学ブームのU ターンに大きく影響され、1960 年以降、欧米、特にアメリカで起こった第2 波フェミニズムの強い影響が見られる。第2波フェミニズムの蓄積は、上記のような政治的な原因で、アジア諸国よりも女性学の導入が遅かった台湾に、女性問題を取り上げる際の理論的拠りどころを提供した。そしてその蓄積の上に立つことによって、僅か10 年のうちに、売買春をめぐる台湾社会の政策的な取り組みは、先進諸国の水準へ、すなわち家父長制の枠の中で展開される売春児童保護運動から、セックスワーク問題をめぐる多元な論述やセクシュアリティの多様性を論じる次元へと急速に発展してきた。しかしながら一方でそうした売買春問題への理論的パラダイム転換を図りながらも、欧米の理論を採用した台湾の女性運動が直面しているのは、日本植民地支配を経て、「再中国化」した混合型家父長制社会であるという現実である。この「混合型家父長制」に特徴づけられる台湾社会における、女性運動にはどのような課題が存在するのか。本論では売春児童保護運動から「妓権」労働運動への女性運動の展開過程を分析することによって、現在台湾の女性運動が直面している課題の抽出と展望について取り組みたい。
著者
杉山 貴士
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.67-79, 2006-02-28

本稿は、性的違和を抱える同性愛の高校生へのインタビューを通して、高等学校における彼らの性的自己形成過程の一端を検討するものである。ジェンダー規範に包含される異性愛中心性は、高等学校の明示的カリキュラムにおける同性愛の封印と、隠れたカリキュラムによる同性愛嫌悪により支えられている。高等学校において、彼らは (1) 自己受容の困難、(2) 自己イメージ形成の困難、(3) 情報アクセスの困難、(4) 自己開示・人間関係づくりの困難、(5) 事故回避の困難に直面し、結果として、いじめ、不登校、家出などの教育問題を導いていた。特に、同性愛に関する情報へのアクセスを、学校外部にしか求められない状況は、同性愛の高校生が問題予知力を備える性的自己決定能力を育むことが保障されずに性的自己決定を迫られること示しており、現状の高等学校は同性愛の生徒の「性の学習」を奪うことになる。本稿は、高等学校での同性愛の封印解除と積極的なセクシュアリティ教育の必要性を提起するものである。
著者
石尾 絵美
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 = Yokohama journal of technology management studies (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.37-49, 2008-03

本稿は、障害の社会モデル理論の洗練を目指すとともに、その実践レベルへの応用を模索するものである。日本において障害学会が設立されて以降、障害学の中心理論である社会モデルは、多くの人々に受け入れられてきたかのように感じられる。しかし、そこで取り上げられる社会モデルというのは、「障害問題の負担は個人ではなく社会が負うべきである」と主張するものだ、という程度の認識でしかないのではないだろうか。社会モデルがただのスローガンではなく、実践に応用可能な理論となるためには、理論的探求が必要不可欠である。 そこで、個人モデルと社会モデルの一般的な説明をまずは紹介し、その後で、イギリス社会モデルに対してなされた障害学内外からの批判、それに対しての応答を概観する。そして、今まで障害者運動の側面でのみ取り上げられることの多かった、アメリカ障害学にスポットを当て、アメリカ社会モデル理論の分析を行う。また、国内においての議論を取り上げ、その中から誕生したディスアビリティの新たな解釈を模索した主張を考察する。 そして最後に、障害学と既存の障害研究との関連について考察し、社会モデルの実践レベルへの応用という課題につなげていきたいと考える。既存の障害研究との区別を明白にしなければ、障害学はやがて吸収されてしまうだろう。実践現場での支援を想定し、そこにいかして社会モデルが応用可能なのかを模索する。