著者
古市 将樹
出版者
常葉大学教育部初等課程研究企画部会
雑誌
教育研究実践報告誌 (ISSN:24360112)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.27-36, 2021-03-01

本論は、平安時代の能筆を意味する「三筆」(空海・嵯峨天皇・橘逸勢)と「三蹟」(小野道風・藤原佐理・藤原行成)に関するいくつかの疑問、特に、なぜ彼らが他の能書と比べて別格的な位置づけをされているのかについて、先行研究の状況を整理するとともに、記号学的な観点から、それら「三筆」・「三蹟」の呼称が記号としてはたらくことで、別格的な位置を確保したと考えられることを論じている。現在、これに関しては、「三筆」や「三蹟」が記号として成立し作用する具体的な場面が教育(教科書)に見い出せる。それは、特別な意図を含まない平明な歴史的事実の記述によって構成されているが、同時に、三筆・三蹟の説明文が、「三筆」「三蹟」の呼称を記号化し、書道史的に不明な部分を補って、それらを別格のものとしている状態でもある。本論はこのこと状況を分析・抽出するものであり、本稿はその第一弾である。
著者
姉崎 弘
出版者
常葉大学教育学部初等教育課程研究企画部会
雑誌
教育研究実践報告誌 (ISSN:24360112)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.1-10, 2023-03

筆者は、特別支援学校における自立活動の一指導方法である「スヌーズレン教育」に着目して一貫した研究を行っている。肢体不自由特別支援学校でさまざまな自立活動の指導方法が用いられているが、どの程度活用されているのか、また教師の各指導方法の習得希望を調査により明らかにすることは、今後のこの教育の発展のために意義があり必要であると考える。そこで本稿では、グループ教師の回答を分析対象にして「スヌーズレン教育」を中心に、各指導方法の活用度や担当教師の習得希望を明らかにすることで、今後特に障害の重い自立類型の担当教師に求められる自立活動の指導方法を検討し特定した。その結果、先行研究の知見より「摂食訓練」「動作法」「理学療法」「感覚統合」「作業療法」「静的弛緩誘導法」「音楽療法」「ムーブメント教育」「スヌーズレン教育」の9つに、新たに「インリアル法」と「心理検査等の評価法」の2つを追加できると考えられた。
著者
鎌田 公寿
出版者
常葉大学教育部初等課程研究企画部会
雑誌
教育研究実践報告誌 (ISSN:24360112)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.10-17, 2021-09

要旨:本稿の目的は、小学校社会科デジタル教科書に収録されている動画コンテンツの意義と改善に向けた課題を、「社会とのつながり」を視点に分析し、明らかにすることである。子どもが実社会とのつながりを実感し、自身が社会の一員であることを自覚できるような社会科授業の要素として、「価値の追求」と「社会の形成」が挙げられる。これらの視点から、指導者用デジタル教科書『新しい社会 6 政治・国際編』(東京書籍)の動画コンテンツを分析したところ、対象への関心の高まりや学習意欲の向上にとどまらず、「社会とのつながり」を実感するうえで、一定程度の効果が期待できることがわかった。一方で、とくに「価値の追求」については、願いやニーズの具体、そしてその生成理由に関する内容が手薄であり、問題解決へと向かう態度を形成するうえでは十分なものとはなっていない。これに関する内容を厚くすることが、動画コンテンツの改善に向けた課題といえる。
著者
青木 利樹 田中 亮 奥住 秀之 大井 雄平
出版者
常葉大学教育部初等課程研究企画部会
雑誌
教育研究実践報告誌 (ISSN:24360112)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.19-26, 2021-03-01

「特別の教科道徳(道徳科)」の改訂に伴い検定教科書(教科書)が導入された。小学校、中学校共に教科書の内容に、障害が扱われていることが注目されている。本稿は、道徳科の教科書を発行している小学校8社、中学校8社のそれぞれ全学年の教科書の内容を網羅的に調査し、道徳科の教科書において、内容項目ごとの障害の扱いの傾向を検討した。小学校の教科書では97教材、中学校では71教材で障害が扱われており、内容項目ごとに見ると、小学校では、「生命の尊さ」で障害を扱うことが最も多く、次いで「思いやり・親切」、「希望と勇気、努力と強い意志」が多かった。また、中学校では「生命の尊さ」が最も多く、次いで「希望と勇気、克己と強い意志」、「思いやり・感謝」が多かった。道徳科は、小学校、中学校の両方で、障害理解教育に関連する重要な教科であることが推察された。
著者
井上 亘
出版者
常葉大学教育部初等課程研究企画部会
雑誌
教育研究実践報告誌
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.35-42, 2020-09

まず本学でオンライン授業が実施された経緯をふりかえり、その内容と実施情況・学習効果・今後希望する形式などについてのアンケート結果をまとめて、それぞれの問題点を指摘し、特に Zoom や Teams 等を利用する「同時双方向型」が演習形式「対話的な学び」に長じている点を確認。そのうえで、現場の教員がまず「対面授業の再現」に取り組んだ経緯をたどる一方、レジュメに貼るハイパーリンクの機能を通じて「博物館や資料館などの施設の活用」および「遺跡や文化財などについての調査活動」を盛り込み、かつ専門家の解説を聞き、辞書を引く「主体的な学び」の案内をも行う「レジュメ:リンク+解説」方式を紹介して、リモート「アクティヴ・ラーニング」の可能性を探索した。
著者
出口 憲
出版者
常葉大学教育学部 初等教育課程
雑誌
教育研究実践報告誌
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-4, 2019-03-31

要旨:最近の教員養成に関する動向は目まぐるしいものがある。本学においても再課程認定が行われ,多くの教職員が対応に追われることとなった。再課程認定が行われたのは教育職員免許法及び同施行規則が改正されたことによるのだが,中央教育審議会教員養成部会等の答申や,文部科学省が平成26~28 年度まで行った「総合的な教師力向上のための調査研究事業」,及び平成29 年度から継続中の「教員の養成・採用・研修の一体的改革推進事業」の成果の多くが反映されていることが見逃せない。そこで,教員養成に関する最近の動向で注目すべきものとして,教育職員免許法及び同施行規則の変更点を取り上げながら,今後の初等教育課程のあり方について論じたい。