著者
水田 洋子
出版者
国際基督教大学
雑誌
教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.57, pp.91-98, 2015-03

自然言語量化子を2つ以上含む文は,量化子のスコープの違いに起因する曖昧性を持つが,更なる曖昧性を持つ場合もある。本稿では,自然言語量化子 most および two を含む文 Most travelers visit two citiesとその受身形 Two cities are visited by most travelers の読みの非対称性を示し,議論する。Most ではなくall を使ったもの(All travelers visit two cities)では,能動形と受身形が同様の曖昧性を持ち,文の 2 つの意味は量化子(all とtwo)のスコープの曖昧性に帰着できる。しかし,mostを使ったものでは,受身形が更に第 3 の読みをもち,能動形と受身形の読みは非対称となる。それらの読みについて経験的および論理的な観点から議論する。また基本文のバリエーションについての考察および,日本語データとの対照考察も行う。Sentences with natural language quantifiers (e.g. every, all, most, two, a few) exhibit an ambiguity attributed to the scope ambiguity of the quantifiers used. However, the sentence may have further ambiguity.This paper investigates the readings of the pair Most travelers visit two cities and its passive version Two cities are visited by most travelers and shows the asymmetry between them. The version with all (i.e. All travelers visit two cities and its passive version) share the same ambiguity between the active and passive sentences, which is attributed to the scope ambiguity of the quantifiers all and two. In the case of the sentences in question, however, there is a third reading in the passive sentence. The details of the three readings and their distribution are investigated on empirical and logical bases. The paper also investigates several variations of the basic sentences (e.g. Most of the travelers visited two cities; Most travelers are attracted to two cities) and discusses the different distribution of the readings. Furthermore, a contrastive analysis with relevant Japanese data is conducted.
著者
チェ スッキョン
出版者
国際基督教大学
雑誌
教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.56, pp.141-146, 2014-03

ソーシャルネットワークサービス(SNS)は大学生にとって重要な生活の一部となりつつある。特にフェイスブックは世界的に人気のあるサービスであり,高等教育における教育利用の研究が増えてきている。SNSの教育利用では,学習者間の相互作用を高め,人間関係を深めることによる学習効果が期待されている。しかしながら一方ではプライバシーの問題により学習に用いることに抵抗を示す問題も生じてきた。そのため,本研究はSNSを大学教育に導入するにあたって,その果たし得る教育的役割と考慮すべき点を明らかにすることを目指した。この目的のために,本研究では大学生を対象としたオンライン調査を実施した。特にフェイスブックに焦点を置いて、大学生がどのようにフェイスブックを用いているか,日常的な状況と教育的用途について調査した。また,フェイスブックを授業を支援するツールとして用いることについてSD法を用いて学生の認識を分析した。結果として,フェイスブック等には交流促進機能,情報のやり取り,共同作業の場としての機能が認められる。しかし,学生は教員とフェイスブック等を通して相互作用することに抵抗を感じていることから,この問題を解決するための指針を考察した。Social network services (SNS) have become an essential part of college student life. Facebook in particular is considered to be the most popular media, and much research has highlighted the values of Facebook in higher education. On the other hand, debates are heating up over students' privacy and negative attitudes toward the use of personal SNS for learning. This study attempts to discuss both the educational effects and limitations to be considered when incorporating Facebook into an educational context. To achieve its goals, this study surveys college students. Specifically, it investigates how students use Facebook in terms of both personal and educational applications. In addition, it analyzes the students' perceptions of Facebook as an instructional support tool, with a particular focus on the semantic differential scale. This paper concludes that Facebook can support learning and teaching by facilitating interaction between students and by providing an environment for information sharing and collaboration. It has also been revealed that students feel burdened when interacting with teachers over Facebook, however. This study provides guidelines on how such burdens might be relieved.
著者
西村 馨
出版者
国際基督教大学
雑誌
教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.48, pp.161-174, 2006-03

本論文では児童・思春期の子どもに対するグループ介入に関するいくつかの問題を取り上げ,効果的なものにしていくよう基本問題を検討した.そのひとつとして,グループが置かれている文脈に留意することがしばしば欠けてしまっていることを指摘した,状況においてどのようなグループが求められているのかは文脈によるため,目標は全体の状況の理解を踏まえて明確にするべきである.グループ目標を達成するために,グループ介入のいくつかの分類を提示し検討した.もうひとつの問題は,心理社会的発達の問題を実践家が特に軽視しているということである.グループは,子ども達が表面上見せている行動上,および心理学的な問題の背後にある発達的苦闘を克服するのを援助するためにデザインされるべきである.これを踏まえて,グループの意味と児童・思春期の発達課題を簡潔に概観し,発達位相に適した活動内容を提示した,さらに,実践技術の問題,すなわちグループ規範,グループリーダーの役割,グループダイナミクスの重要性を,グループの実践的有効性を検証するために考察した.グループでの抵抗の効果的な取り扱い,精神分析的理解に基づく対話的手法,問題解決と目標達成のためにプログラムをデザインすることに関して,例を示した.最後に,将来の実践に向けて,グループデザインのアイデアを提示し,心理療法訓練生による心理教育的な活動グループの実践例を紹介した.
著者
金 泰勲
出版者
国際基督教大学
雑誌
教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.50, pp.41-53, 2008-03

日本では「過熱する受験競争の緩和」を目的に大学入試の改革が進められてきたが,この10年来,推薦入学の拡大や新たな選抜方法であるAO入試の導入など大学入試における多様化・個性化へ新たな改革の動きが見られる.一方,日本同様に,長い間過度な受験競争に悩んできた韓国でも,近年,大学入試の改革への取組が進んでいる.本稿では,韓国における大学入試の改革がどのような背景に基づき行われたか,受験生の思考力や表現力を高めるためのどのような判定や選抜方法・評価基準を設けられたか,また,大学入試では,生徒の資質能力を養うために,どのような選抜方法で評価しようとするのかについて考察する.