著者
神部 晴子
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
no.31, pp.51-64, 2000-01-31

1910年代、イタリア未来派画家ジャコモ・バッラ(Giacomo Balla) は、当時のメンズスーツに革新的なアイデアを持ち込み、19世紀初頭から続いていたメンズスーツの固定化したスタイルの改革を試みた。同時代のヨーロッパは20世紀初頭にイタリアで誕生した未来主義があらゆる分野に姿を見せ始めた時期でもある。未来主義者はイタリアの伝統に過度の重みを感じ、その歴史的遺産を破壊しようとしていた。次々と宣言を発表し、その全てが破壊しなければならないものに向けられた。そのひとつに1914年5月「LE VETEMENT MASCULIN FUTURISTE Manifeste(未来派男性衣装宣言)」と同年9月「IL VESTITO ANTINEUTRALE Manifesto futurista (未来派反中立衣装宣言)」がある。それは暗い色、対称的なシルエット、糊のきいたカラーやカフスといった伝統的なメンズスーツを廃止し、軽快で、衛生的、そしてダイナミックな色やデザインといった未来派的な新しい衣装を提案したものであった。成功するには至らなかったものの、今でも内容的に高い関心を持たれている。本論文では、バッラが創作した未来派スーツと各衣装宣言に書かれた内容と意味主張について未来派との関連において調べてみた。
著者
多々見 和子
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:02868059)
巻号頁・発行日
no.24, pp.169-180, 1993-01-31

V字ウエスト切り替えのワンピースドレスは舞台衣裳, ウエディングドレス,イブニングドレスなどに多く見られ, 又, 学生も好んで製作してきた。V字ウエスト切り替えのフレアースカートのワンピースドレスについて, これまで何回か製作を行なってきたが, 的確な製図方法はなかった。つまり, 従来の方法では, 身頃よりスカートのつけ寸法が大きく, 縫い合わせる段階でつけ寸法を調整したり, 感覚的に補正することが多いことに疑問を持ち, V字の傾斜のポイントが変化しても, 身頃とスカートのつけ寸法が合い, フレアーがきれいに落ちつくような, 補正の少ない正確な製図を出せないものかと思い, 理論的に解決すべく, 研究することにした。その結果, V字ウエスト切り替えのワンピースドレスのフレアースカートの製図について, ひとつの製図の方式を作り出すことができた。又, ギャザースカートへも同じ理論づけを得ることができ, これをヒントに, 円裁ちスカートの製図について, 全円のみでなく, 色々な角度のフレアースカートとギャザーフレアースカートに応用発展させていくことはできないものかと考え, 数値化を試み, 最終的には, フレアースカートとギャザーフレアースカートの製図半径を算出し, 表にまとめ, 色々な角度の円裁ちスカートを, これまでよりも容易に製図できるようになった。
著者
冨田 靖子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.37-44, 2000-01

ケーキデコレーションにおける表現技法の一つに装飾砂糖菓子と言われているシュガーデコレーションがある。ケーキの上にシュガーペーストでカバーリングを施し,シュガーペーストで製作したシュガーフラワーやアイシングなどでデコレーションした技法である。本報では,シュガーデコレーションを製作する上で必要な技法に関しての調査を行い,専門書に掲載されている128種を技法別,モチーフ別,用途別に分類した。技法別では「アイシングワーク」「ペーストワーク」「ペインテイング」「その他」と4区分に分類でき,その中に14技法があることが判明した。モチーフ別では,「花」「建物」「人形」「その他」と4区分に分類され,「花」が大半を占めた。用途別にみると「ウェディング」「アニバーサリー」「特別な日」の3区分に分類でき「ウェディング」が半数近くあった。シュガーペーストの扱いについても実験をした結果,調整後3~5分が最も扱い易く,伸展性,形状の観察結果ともに良好であった。この条件を用いて,ウェデイングケーキを製作した。
著者
松田 純子
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
no.30, pp.139-148, 1999-01-31

「空間」と「場所」については,様々な環境論が展開されている。しかし近似したこのニつの概念に対しては,人間の存在と「場所」を統一体としてとらえることは少ないように思う。本稿では,人間と「場所」とのつながりを研究している,イーフー・トゥアン(1930~)の「空間」に対する,人間の知覚経験の重要性と,それによって獲得する, 「空間」と「場所」の諸価値について取り上げ,その機能と意味について考察する。トゥアンの人間の身体レベルからとらえる「空間」と「場所」理論においては,「空間」のなかに,自分を基礎づけようとするために用いる様々な「場所」は,個人的経験によってのみ存在する安全で自由なものである。一方で,急速に変化してしいく社会が,人間中心の「場所」を変化させてしまい,長い年月の安定した環境は望めなくなってしまっていることを,我々は考えなくてはならない。そこには,人間の現存在の持続性と,変異変遷する「空間」の問題が反映しており,人間にとって親密な「場所」の形成過程を探る上で,重要な意味をもつ問題である。
著者
中原 五十鈴
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
no.25, pp.67-78, 1994-01-31

被服を製作する際に必要且つ適切な「ゆとり」を求めるために,日常生活上の基本的な動作(自然、立位,椅座位,仰臥位の三動作)時のウェスト部位並びに腹部最大突出部位における周径囲と横径の変化と,両部位における前面と側面での皮下脂肪厚の変化を,健康な女子大生を被験者として,超音波Bモード法を用いて測定したところ,次のような結果が得られた。即ち,周径囲・横径共にウェスト部位に比較し,腹部最大突出部位では約10%程度大きい傾向にあった。腹部最大突出部位は周径囲・横径共に自然立位が最大値を示し,椅座位,仰臥位の順に小さくなっていた。皮下脂肪厚では,姿勢変化による差は,各部位・各箇所共に同様な変化を示したが,ウェスト部位に比べ,腹部最大突出部位では,前面において約50%,側面では約20~30%程度多い傾向にあった。この傾向は, BMI並びに肥満傾向の高い者ほど強かった。椅座位での皮下脂肪厚がすべての姿勢において,最も大きい値を示した。これらの結果,両部位の形態的特徴および皮下脂肪厚の程度が,「ゆとり」分量に大きく関与していることが示唆された。
著者
長山 洋子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.111-119, 1995-01

人工現実感システム(通称V.R)は,現在,パーソナルコンピュータベースの,低コストV.Rシステムが開発され,インテリアデザイン支援装置として,その応用の可能性が広がった。そこで,このV.Rシステムをインテリアデザイン,特に,教育の支援装置として,どのような応用が可能なのかを検討した。さらに,この低コストV.R(VR maker)を用いる場合,人間がその空間をどのように感じるのか,過去の実験データを基に,大きさの比較,および空間把握を確認するための実験を行い,その応用の可能性について検討を行った。その結果, V.R空間でも,実際の空間と同様な,空間知覚が得られることが明らかになり,「VR maker」をインテリアデザイン支援の道具として応用する可能性を見いだした。
著者
多々見 和子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.169-180, 1993-01

V字ウエスト切り替えのワンピースドレスは舞台衣裳, ウエディングドレス,イブニングドレスなどに多く見られ, 又, 学生も好んで製作してきた。V字ウエスト切り替えのフレアースカートのワンピースドレスについて, これまで何回か製作を行なってきたが, 的確な製図方法はなかった。つまり, 従来の方法では, 身頃よりスカートのつけ寸法が大きく, 縫い合わせる段階でつけ寸法を調整したり, 感覚的に補正することが多いことに疑問を持ち, V字の傾斜のポイントが変化しても, 身頃とスカートのつけ寸法が合い, フレアーがきれいに落ちつくような, 補正の少ない正確な製図を出せないものかと思い, 理論的に解決すべく, 研究することにした。その結果, V字ウエスト切り替えのワンピースドレスのフレアースカートの製図について, ひとつの製図の方式を作り出すことができた。又, ギャザースカートへも同じ理論づけを得ることができ, これをヒントに, 円裁ちスカートの製図について, 全円のみでなく, 色々な角度のフレアースカートとギャザーフレアースカートに応用発展させていくことはできないものかと考え, 数値化を試み, 最終的には, フレアースカートとギャザーフレアースカートの製図半径を算出し, 表にまとめ, 色々な角度の円裁ちスカートを, これまでよりも容易に製図できるようになった。
著者
柴田 眞美
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.99-109, 1995-01
被引用文献数
1

騎乗者の全身の姿勢について分析した前回に引き続き,今回は脚部に着装する長靴の問題点を抽出する目的で,馬術のベテラン3名を被験者とし,鞍馬上での各扶助動作および歩行動作時の,履物の相違による動作の難易等についての自由発言による聞き取り調査と共に,フィルムリサーチングを行なった。その結果,普段長靴を着用している被験者は,長靴に対して脚が自由になり,履いていないかの様な感覚を要求しているものの,実際には,今日のように鞍や鐙を用いる馬術に於ては,革製長靴の有する脚の支持性(足根,足底,踵部)が,素足やゴム製長靴等に比べて,扶助動作に対して有用である事が判明した。しかし,馬術用革製長靴にも,扶助動作を繰り返すうちに,ヒトの踵と長靴の踵部がずれてくるなどの欠点があり,この点について,足根部の改良の他に靴底の動きの改良の余地があることが示唆された。伝統を重んじ制約がある中で能力と美を追求する馬術における,服装や馬具をより機能的にそして美的に改良するためには,ヒトとウマの生物としての構造や運動機構に照らした分析が今後更になされねばならない。
著者
畠山 紀子
出版者
文化学園大学
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究 (ISSN:0919780X)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.15-23, 1993-01

外装に工夫をこらし, いかにも入ってみたくなるようなファミリーレストランや, 手軽に持ち帰れるよう考えられた調理済食品店, 短時間に宅配されることが約束された専門店等々。現代は,様々な形の外食化の波が押し寄せてきている。厚生省の栄養調査でも外食率が年々大きく伸びているといわれる中で, 家庭の主婦達の社会参加が盛んに行われ, 実に半数近くの者が, 職業を持つようになった。又, 家庭外で活動する時間の多くなった主婦達により, 家庭内の食生活が, 外食や中食(出来上がったおかずを買ってきたり, 宅配や出前などによる食事形態を, 外食, 内食に対して呼ばれる名称) により賄われる機会も多くなったのではないかと思われる。本稿で, その実態を調査し, 主婦の職業による食生活の外食化の傾向を知ることができた。
著者
内野 昌恵
雑誌
文化女子大学紀要. 服装学・生活造形学研究
巻号頁・発行日
no.31, pp.167-174, 2000-01

今日、パンツは若い女性に定着し、完全に日常のワードローブの一つとなっている。それに伴い、学生のパンツに対する美しいシルエットと着心地への欲求は強く、指導するうえでパンツパターンを理解する重要性を感じた。そこで、本研究では、パンツ購入時の決定基準や試着の有無などを調査した結果、試着を約90%が行っているものの、購入する際に静立時の美的要素やシルエットなどのデザイン的要素を重視する傾向にあり、動作時の運動機能性まで考慮しているか疑問が残る結果となった。この調査結果より、本研究ではHLのゆとりなどの全体のシルエットに影響する構成要素は変化させず、前後股ぐりのカーブのみを変化させた実験服を設定し、どの程度、運動機能性の確保が可能かを日常生活で最も一般的動作と思われる椅座時において着くずれ実験を行い、相関分析した。結果としては、着くずれ量は微量であるが、各被験者とも、前股ぐりカーブが深く、後ろ股ぐりカーブが浅いパターンほど、後ろ股ぐり周辺のパターン面積が増加し、運動機能性が確保され、着くずれ量が少ない結果となった。