著者
井上 裕美子 平 勝斗
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.269, 2021 (Released:2021-12-28)

継続的にトレーニングを行うためには、仲間と行ったり、応援があったりした方が続きやすいと考えられる。しかし、昨今のコロナ禍の影響で、なかなかジム等で仲間とトレーニングする機会が少なくなっている。この状況下では、1人でも手軽に家庭内でできるトレーニング環境が必要と考えられる。そこで、本研究では、家庭内で手軽にできるアバターの応援を付加したトレーニングシステムの開発を行った。また、アバターの応援効果を効率的に引き出すには、どのタイミングからアバターの応援が付加されると良いかについても検討した。 開発したシステムは、筋力トレーニングとして3分間のカーフレイズを行うシステムとした。アバターの応援効果を検討するため、アバターありとなしのコンテンツを作成し、アバターありでは、アバターの表示時間として3パターン(3分表示、1分経過後表示、2分経過後表示)を作成した。システム構成は、シングルボードコンピュータと制御用PC、ディスプレイとし、家庭内で簡単に利用できる構成とした。シングルボードコンピュータでは、ヒラメ筋から筋電図を測定し、その筋電図波形からカーフレイズの回数を算出した。トレーニング中の画面には、アバター、トレーニング回数、時間表示等を体験者に示した。 評価実験として、9人の大学生に開発したシステムを利用して貰った。その結果、アバター表示がある方が、継続できそうというアンケート回答が56%であった。また、表示時間としては、アバターを途中から表示させる1分経過後、2分経過後条件で9名中7名から良い変化があると回答を得ることができ、途中から、アバター表示をさせると応援効果が高くなる傾向が示された。今後の展望としては、さらに長期的な利用を考え、ゲーム性やアバターの応援のバリエーションを増す、トレーニングの種類を増やすなどの改良を行う必要があると考えられた。
著者
稲葉 健太郎 水野 基樹
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.287, 2021 (Released:2021-12-28)

厚生労働省と経済産業省が推進する「健康経営」に取り組む企業が増えている。経済産業省は「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」といった顕彰制度を設けたり、健康保険組合及び地方自治体と連携して健康経営を推し進めており、メディアで健康経営が扱われる機会も多くなっている。 しかし、経済産業省が行った中小企業を対象とした健康経営の認知度の調査によると、健康経営について「全く知らなかった」が52%、「聞いたことがあるが、内容は知らない」が32%と、約8割の企業が健康経営の内容について知らないという実態も明らかとなっている。以上より、健康経営という概念は徐々に広がりを見せてはいるが、より多くの企業や従業員に浸透させるためには草の根的な啓蒙活動の必要があると考えられる。 そこで本研究では、企業に勤める従業員に対するインタビュー及びSNSに投稿されたテキストを分析することで、健康経営が一般的にどのような認知をされているのかを明らかにすることを目的に調査を行った。 インタビュー調査では都内のIT系企業に勤める4名を対象とした。調査の結果、健康経営の実践によって従業員の離職意識を間接的に低減させるとの意見を得られたが、健康経営による定量的・定性的なエビデンスを得る機会が無いため、費用対効果については疑問があるとの意見を得られた。また、SNSのテキスト分析の結果、頻出語では「企業」「健康」「従業員」「働く」といった単語が抽出された。また、共起ネットワーク分析では「健康」と「企業」「従業員」「投資」「向上」といった語のリンクが確認され、健康経営の効果についてSNSを通して発信されていることが明らかとなった。
著者
劉 暢
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.91, 2021 (Released:2021-12-28)

日本武道の国際化については、これまで主に西洋諸国を対象とした柔道、剣道、空手などの伝播状況に関する研究が多く見られる。これに対して、地理的、そして文化的に近縁性のある中国において日本武道はどのように認識され、普及してきたのか。またその過程で中国武術などを含む中国の身体文化にどのような影響をあたえたのか。これらの問題を解明することは、日本武道の国際化をより相対的に捉えることができるだけではなく、グローバル化する今日の社会において、多様な身体文化の流通・融合を理解することにもつながると考える。海外における日本武道の伝播について協会の設立、人員の交流、活動の実態などの内容があげられ、それらに関する史・資料も多岐にわたる。そこで、本研究が体育雑誌に着目した理由は、雑誌には編集者ないし出版社の認識や主張が強く表れる傾向があるからである。そうしたメッセージがコミットメント度の高い読者に受信されやすく、ときには読者のフィードバックもみられる。このような考えから、本研究では初歩的な作業として(1)日本武道はどのように中国の体育雑誌で表象されてきたのか、また(2)それは中国武術の発展にどのような影響を与えたのか、という二つの問いの解明を試みた。なお、研究機関は中華人民共和国が成立した1949年から2019年までとした。また、具体的に用いる体育雑誌は以下の通りである。『新体育』(総合誌、国家体育総局中国体育報業総社、1950年創刊、現在月刊として発行)、武術雑誌『中華武術』(中国武術協会、人民体育出版社、1982年創刊、現在月刊として発行)、『武林』(広東武術協会、1981年創刊、2006年廃刊)、『武魂』(北京武術院、北京体育局、1983年創刊、2013年廃刊)、『柔道与摔跤』(山西省体育運動委員会、1983年創刊、1992年廃刊)。
著者
堀田 文郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.246, 2021 (Released:2021-12-28)

彫刻のような肉体を作り上げ、ポーズを取って競い合う「ボディビル競技」、この競技は以前より、薬物問題等の問題を抱えてきた。例えばWADA(2020)によると、2019年のボディビル競技における陽性サンプルの割合は20%と非常に高かった。また、プロボディビルダーの間では薬物が公然の秘密とされているとの指摘もある(増田 2000)。以上を踏まえると、ボディビル競技には薬物使用までは至らずとも、競技に強くのめり込む競技者が数多く存在すると考えられる。ボディビル競技者はなぜ、多大な犠牲や健康的なリスクを負ってまで競技にのめり込むのだろうか。 国内のボディビル競技に関する先行研究は、競技方法に関する研究や生理学的な研究が主であり、社会学的な研究は竹崎(2015, 2019)の一連の研究、すなわち、男性高齢者ボディビルダーがいかにしてボディビルの価値を構築しているのかについて分析した研究と日本のボディビル文化を対象とした歴史研究に限定されている。 そこで本研究は、ボディビル競技者が競技へとのめり込む要因とその過程を明らかにすることを目的とした。また、本研究では、コンテストへの出場経験・予定のある競技者7名を対象とし、調査時期は4月~6月、調査方法は半構造化面接、主な調査項目は「競技に関する個人史」、「肉体の捉え方」、「競技実践の内容」とした。 その結果、競技者は、鍛えればその効果が必ず現れるという特性を持つ肉体に極めて高い予見可能性と成長可能性を感じ取り、その感覚を基に競技実践を漸次的に拡大させつつ徹底的なルーティン化を行っていること、また、競技者の行った競技実践は常にその意味が未来の競技実践へと外化される、いわば「意味の事後決定性」という特性を持っているために、競技者は過去の実践の意味証明と未来における成果を獲得すべく、現在の競技実践に没入せざるを得ない状況に置かれていることが明らかになった。
著者
山口 裕士 笠次 良爾 仲井 志文 立 正伸
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.321, 2021 (Released:2021-12-28)

【目的】投球動作の反復による、後期コッキング期から加速期における骨盤回旋運動の変化を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】大学生野球投手6名(右投手3名、左投手3名)を対象とした。対象の年齢は 21.2±1.6 歳、身長は171.3±6.3cm、体重は 67.2±5.1kgである。10球10セット(計100 球)の投球を投球間隔15秒、セット間に3分間の休憩を取り行わせた。光学式三次元動作解析システム(Mac3D、Motion Analysis 社製)を用いて、1セット目(1~10球目の平均値)と10セット目(91~100球目の平均値)の投球動作の変化を検討した。【結果】後期コッキング期から加速期においての骨盤の回旋角度は、1セット目79.7±8.4(°)、10セット目72.9±11.6(°)であり、有意に低下した(p< 0.05)。また、骨盤の回旋角速度は、1セット目585.4±52.4(°/s)、10セット目530.1±60.1(°/s)であり、有意に低下した(p< 0.01)。球速と上胴の回旋運動に有意な変化は無かった。【考察】1 セット目と 10 セット目で骨盤の回旋運動が有意に低下したことから、投球動作の反復によって、安定した骨盤の回旋運動を行うために必要な筋力や可動域が低下した可能性が考えられる。また、骨盤の回旋運動の低下は、運動連鎖の破綻に繋がり、代償的に体幹回旋運動や肩関節水平屈曲運動を強めて、肩関節外旋運動を誘発することが報告されている(宮下.2012)。本研究では、骨盤の回旋運動が低下したにも関わらず、上胴の回旋運動と球速に有意な変化が認められなかったことから、骨盤の回旋運動低下を胸椎の回旋で代償したと考えられる。【結論】投球動作の反復により、後期コッキング期から加速期においての骨盤の回旋角度と回旋角速度が有意に低下した。