著者
春日井 昇平
出版者
日本再生歯科医学会
雑誌
日本再生歯科医学会誌 (ISSN:13489615)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.3-11, 2003 (Released:2005-06-03)
参考文献数
18
被引用文献数
2

歯科では口腔組織の欠損部を材料により補填し, 機能を回復する治療法がおこなわれている. 一方, 喪失あるいは機能の低下した組織や臓器を再生する再生医療が注目されている. 1920年にHermannが水酸化カルシウムを断髄面に使用したのが歯科領域での再生医療の始まりとされている. その後, 1980年代になってGTR法とGBR法が報告され, 1990年代に入って仮骨延長法の口腔領域での適用がおこなわれた. 1990年代の後半には, Emdogainによる歯周組織の再生, rhBMPによる骨増加法, PRPによる骨増加法についての臨床報告がなされた. 現在FGF2の歯周組織の再生への効果について臨床試験がおこなわれている. 一方, 歯科領域での細胞を用いた再生治療として, 粘膜の再生, 顎骨の再生, 歯周組織の再生が試みられており, さらに歯の再生プロジェクトも開始されている. 再生医療が社会に受け入れられるためには確実な治療効果と共に, 安全性と簡便性さらに経済的な利点も要求されると考えられる.
著者
加藤 英治 小林 正義 古賀 久嗣 橋本 一慶 神作 拓也
出版者
日本再生歯科医学会
雑誌
日本再生歯科医学会誌 (ISSN:13489615)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.41-61, 2004 (Released:2005-06-03)
参考文献数
7

顎顔面領域では, 環境造り (スペースメーキングやバリヤーメンブレン等) と自己細胞活性(コルティフィケーションや移植), 誘導・成長因子(PRP, BMP, エムドゲイン®など)が単独や, 組み合わせで応用されている. これらを支持する骨造成の臨床は, 安全でより簡便な方法が望まれ, バイオマテリアルも生体適合性, 形状、機能, エピデンスが求められている. 今回, PRP 作成操作を手術前に行い手術日の負担軽減を計るための凍結保存PRP, 血小板の活性化やデリバリーのためのコラーゲン応用, 下顎骨からの骨原性間葉系幹細胞の採取や培養細胞移植材の可能性を探り, それらを組織再生まで支持する担体やバリヤーとしてHA・コラーゲンの複合体を作成し, 組織再生のピラミッド(図 1)を完成させるべく, 実験および臨床応用を行った. 凍結 PRP・コラーゲン・HA・培養細胞を組み合わせ, 今後の臨床化への可能性をお示ししたい.
著者
原口 裕次 清水 達也 大和 雅之 菊池 明彦 岡野 光夫
出版者
日本再生歯科医学会
雑誌
日本再生歯科医学会誌 (ISSN:13489615)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.83-92, 2004-12-30
被引用文献数
3

最近,欠損または機能不全に陥った組織・臓器に対する新たな治療法として細胞を用いた再生医療が注目され,すでにいくつかの治療法が臨床応用されている.また歯学分野においても幹細胞を用いた細胞移植により歯周組織の再生を目指した研究などが行われている.再生医療には細胞を注射針で不全部に注入する細胞移植療法と細胞から組織を再構築した後,移植する組織工学(Tissue engineering)的手法がある.後者は生命医科学分野だけでは実現が困難であった研究領域であり理工学的な技術との連携により急速に進歩しつつある.当研究所では,独自に開発したユニークな組織工学的手法「細胞シート工学(Cell sheet engineering)」を用い,種々の組織の再構築および再生医療への応用を目指し研究を行っており,一部の組織においてはすでに臨床応用もされ画期的な治療効果を得ている.
著者
三島 弘幸 門田 理佳 尾﨑 真帆 服部 淳彦 鈴木 信雄 筧 光男 松本 敬 池亀 美華 見明 康雄
出版者
日本再生歯科医学会
雑誌
日本再生歯科医学会誌 (ISSN:13489615)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.11-22, 2014 (Released:2016-05-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究はメラトニンが象牙質の組成や組織構造に及ぼす影響を分析学的及び組織学的に解析することを目的とした.本研究は出生後5日,6日,7日令のSDラットを用いた.メラトニン投与群では象牙前質に石灰化球が多く見られ,投与濃度上昇につれ象牙前質中の石灰化球数は増加し,大きさも大きくなった.ALP染色は対照群と比べて高濃度群により強い青紫色のALP発現が見られ,メラトニン投与濃度が上昇するにしたがって,象牙芽細胞のALP発現が強くなった.SEM-EDS分析,EPMA分析では,昼間,夜間試料共に投与群でCa及びPが多く含有していた.顕微レーザーラマン分光分析は,PO43-ピークが高濃度群でピークが高く,半価幅も狭まり,メラトニン投与によって,PO43-の分子配向性,アパタイト結晶性が良好となった事が判明した.メラトニンは象牙質の組織形成を促進し,石灰化を亢進し,象牙質の石灰化に影響を及ぼすと考察される.