著者
服部 淳彦
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-11, 2017-03-29 (Released:2017-04-11)
参考文献数
30
被引用文献数
1

エイジングに伴って,様々な器官に衰えが生じることは避けられない。特に,睡眠障害や記憶力の低下,骨粗鬆症による骨折などは,高齢者のQOL(Quality of Life)低下につながり,その予防や改善策は喫緊の課題である。メラトニンは松果体から夜間にのみ分泌される「夜の時刻情報の伝達物質」であるが,その分泌量は加齢とともに激減する。近年,メラトニンは松果体以外の様々な器官においても合成されること,フリーラジカルや活性酸素を消去する抗酸化物質としての性質を併せ持つことが明らかとなった。そこで,この加齢に伴って減少するメラトニンを補充するという長期投与実験がなされ,マウスやラットでは寿命を延ばすことが報告されている。ヒトでも,閉経後骨粗鬆症の進行を抑制し,アルツハイマー病に対しても通常の治療薬との併用ではあるが,進行を抑制することが報告され,一段とアンチ(ウェル)エイジング効果に期待が集まりつつある。最近我々は,メラトニンの学習・記憶増強作用が,メラトニンの脳内代産物であるN-acetyl-5-methoxykynuramine (AMK)の長期記憶誘導作用に起因していることを見出し(特願2016-42875),老化によって長期記憶形成力が低下したマウスやコオロギにおいて,AMKの単回投与が記憶力の有意な改善をもたらすことを明らかにした。また,我々が見つけたメラトニンの破骨細胞(骨溶解)抑制作用を期待して,国際宇宙ステーション「きぼう」実験棟において実験を行い,宇宙でもメラトニンが破骨細胞を抑制することを確認した。
著者
服部 淳彦
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-11, 2017
被引用文献数
1

<p>エイジングに伴って,様々な器官に衰えが生じることは避けられない。特に,睡眠障害や記憶力の低下,骨粗鬆症による骨折などは,高齢者のQOL(Quality of Life)低下につながり,その予防や改善策は喫緊の課題である。メラトニンは松果体から夜間にのみ分泌される「夜の時刻情報の伝達物質」であるが,その分泌量は加齢とともに激減する。近年,メラトニンは松果体以外の様々な器官においても合成されること,フリーラジカルや活性酸素を消去する抗酸化物質としての性質を併せ持つことが明らかとなった。そこで,この加齢に伴って減少するメラトニンを補充するという長期投与実験がなされ,マウスやラットでは寿命を延ばすことが報告されている。ヒトでも,閉経後骨粗鬆症の進行を抑制し,アルツハイマー病に対しても通常の治療薬との併用ではあるが,進行を抑制することが報告され,一段とアンチ(ウェル)エイジング効果に期待が集まりつつある。最近我々は,メラトニンの学習・記憶増強作用が,メラトニンの脳内代産物であるN-acetyl-5-methoxykynuramine (AMK)の長期記憶誘導作用に起因していることを見出し(特願2016-42875),老化によって長期記憶形成力が低下したマウスやコオロギにおいて,AMKの単回投与が記憶力の有意な改善をもたらすことを明らかにした。また,我々が見つけたメラトニンの破骨細胞(骨溶解)抑制作用を期待して,国際宇宙ステーション「きぼう」実験棟において実験を行い,宇宙でもメラトニンが破骨細胞を抑制することを確認した。</p>
著者
服部 淳彦
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.115-122, 2008-02-01 (Released:2010-12-24)
参考文献数
36
被引用文献数
4 1

ウシの松果体より単離されたメラトニンは,近年生物界に広く存在する物質であることがわかり,また機能としては,時刻情報の伝達物質やフリーラジカルのスカベンジャーなど多彩な作用が報告されている.さらに最近では,メラトニンの骨形成・骨代謝調節に関わる新しい機能が明らかにされつつある.著者らは,メラトニンに破骨細胞の分化や機能を抑制する作用のあること,そして新規メラトニン誘導体の中に破骨細胞を抑制し,かつ骨芽細胞を活性化させるもののあることを見いだしており,骨粗鬆症の予防薬あるいは治療薬への新たな展開が期待される.
著者
三島 弘幸 門田 理佳 尾﨑 真帆 服部 淳彦 鈴木 信雄 筧 光男 松本 敬 池亀 美華 見明 康雄
出版者
日本再生歯科医学会
雑誌
日本再生歯科医学会誌 (ISSN:13489615)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.11-22, 2014 (Released:2016-05-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究はメラトニンが象牙質の組成や組織構造に及ぼす影響を分析学的及び組織学的に解析することを目的とした.本研究は出生後5日,6日,7日令のSDラットを用いた.メラトニン投与群では象牙前質に石灰化球が多く見られ,投与濃度上昇につれ象牙前質中の石灰化球数は増加し,大きさも大きくなった.ALP染色は対照群と比べて高濃度群により強い青紫色のALP発現が見られ,メラトニン投与濃度が上昇するにしたがって,象牙芽細胞のALP発現が強くなった.SEM-EDS分析,EPMA分析では,昼間,夜間試料共に投与群でCa及びPが多く含有していた.顕微レーザーラマン分光分析は,PO43-ピークが高濃度群でピークが高く,半価幅も狭まり,メラトニン投与によって,PO43-の分子配向性,アパタイト結晶性が良好となった事が判明した.メラトニンは象牙質の組織形成を促進し,石灰化を亢進し,象牙質の石灰化に影響を及ぼすと考察される.
著者
永田 知里 清水 弘之 服部 淳彦
出版者
岐阜大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、各種アミノ酸やDNAメチル化に関与するメチオニン、葉酸、ビタミンB6、B12の食事からの摂取推定を可能とし、がん罹患との関連性を一般住民における前向き研究のデザインで評価することを目的としている。前年度では、岐阜県のがん登録および高山市医師会の飛騨がん登録より、高山市に1992年に開始されたコホート(高山コホート)内におけるがん罹患データを得たが、コホート内における死亡者、転居者の情報が把握出来ず、本年度、高山市での住民票閲覧、除票情報の提供、法務局への戸籍閲覧などを依頼した。未だ一部の情報が入手できておらず、また国の食品成分委員会による各食品中アミノ酸含有量改訂発表が遅れているが、まず、葉酸、ビタミンB6、B12摂取と大腸がんと乳がん罹患についての関連性を評価した。対象者は1992年9月前向き研究開始時にがん既往があると回答した者あるいはがん登録情報からこの時点でがんに罹患していたことが判明した者を除き、男性14,185名、女性16,560名であった。2005年末までの期間に新しく大腸がんと診断された者は男性277名、女性233名、乳がん罹患(女性のみ)は134名であった。年齢、喫煙歴、BMI、アルコール摂取量で補正後、男性におけるビタミンB12の上位1/3の高摂取群は下位1/3の低摂取群に比べ大腸がんハザード比が1.39と統計的に有意に高く(p=0.03)、またビタミンB6摂取も高摂取群はハザード比が1.37 (p=0.056)と高かった。しかし、これらの関連性は肉・肉加工品類摂取の補正により低下した。大腸がんリスクと葉酸摂取との関連性は認められなかった。女性では大腸がん、乳がんともこれらの栄養因子との関連は有意でなかった。多重共線性の問題に配慮しつつ、アミノ酸を含み、各栄養素、食品群の交絡の影響もさらに考慮する必要があると考えられる
著者
安東 宏徳 服部 淳彦 西村 正太郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,単一LH細胞を用いてLHの合成と放出のバランスをとる分子メカニズムを明らかにすることである。まず始めに,溶血プラークアッセイ法を用いてサクラマスの下垂体初代培養細胞から単一LH細胞を同定すると共に,LH放出活性の定量系を確立した。また,単一LH細胞のLH合成活性を測定するため,LHβサブユニットのmRNA定量系をリアルタイムPCR法を用いて確立した。最小検出感度は約100コピーであり,単一細胞中のLHβサブユニットmRNAの定量には十分の感度を持っていた。また,遺伝子の転写活性を測定する系として,ヘテロ核RNAを検出するリアルタイムPCR系を検討した。単一細胞のヘテロ核RNAの測定には最小検出感度に近いレベルでの精度のよい測定が必要であることが分かり,より精度よく安定して測定できるようにさらなる条件検討を行うことが必要である。サクラマスを非産卵期と産卵期前に採集し,単一LH細胞の合成と放出の解析系を用いて性成熟段階の異なる魚におけるバランス制御系の機能の違いを調べた。溶血プラークアッセイによって同定されたLH細胞の数は,非産卵期の魚は産卵期前の魚に比べて少なく,放出活性が低かった。また,リアルタイムPCR法によって測定したLHβサブユニットのmRNAも非産卵期では低かった。しかし,GnRHに対する反応性を調べると,非産卵期ではGnRH投与により放出と合成の活性が上昇したが,産卵期前では放出は高まったが合成は変化しなかった。産卵期前ではLHβサブユニット遺伝子の発現調節に関わる細胞内シグナル伝達系のGnRH応答性が変化することが示唆された。次に,ディファレンシャルディスプレイ法の一つであるGeneFishing法を用いて,両時期のLH細胞の間で発現量の異なる遺伝子の探索を行ったが,これまでのところ候補遺伝子は得られていない。使用した任意プライマーの数が少ないためと考えられる。