著者
芳鐘 冬樹
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.18-32, 2000-03-30

計量書誌学が扱う現象において, 偏った分布がしばしば観察される。例えば, 著者の発表論文数の分布では, 少数の著者が非常に多くの論文を発表している一方で, ほとんどの著者はごく少数の論文しか発表してない。つまり, 少数の著者に論文が「集中」している。そのような分布の「集中度」を測る指標が数多く提案されているにも拘わらず, 集中度の概念そのものは必ずしも明らかになっていない。そこで, 本論文では, 「絶対的集中」と「相対的集中」という2つの観点から, 集中度の概念の定義を試みた。そして, その定義に基づいて集中度の指標を分析し, 指標の特徴を明らかにした。
著者
長谷川 昭子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.77-103, 2009-06-30

本稿は,質問紙調査によって,専門図書館職員の人材育成の実態と意識を明らかにし,その結果をもとに今後の人材育成のあり方を考察したものである。研究の結果,専門図書館では(1)OJT,Off-JT,自己啓発に対する支援など能力開発のための体制は十分整っていないこと,(2)OJT,Off-JTの中でもっとも多いのは「基礎知識」に関する内容で,自己啓発でもっとも多い方法は「自学自習」であること,(3)非正規職員は正規職員に比べて学習意欲が高いが,教育訓練の機会や勤務先からの支援において格差があること,(4)OJTが能力向上に有効であるという結果は得られず,人材育成はOff-JTの充実と自己啓発への支援を基盤とせざるを得ないことが明らかとなった。今後は,専門図書館協議会が中心となって,(1)業務の一環としての研修事業の拡充と,(2)専門図書館職員が自ら能力開発を行える教育体制の整備が必要であることを指摘した。
著者
杉江 典子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.117-131, 2008-06-30

本研究の目的は,わが国の市町村立図書館におけるレファレンスサービスの利用者に関する既往調査を整理し概観することによりその傾向を明らにし,既往調査の全体像を示すことである。そのために,1970年代以降に実施されたレファレンスサービスに関する利用者調査を扱う文献29件を収集しそれらを分析した。さらに個々の調査結果からレファレンスサービスの利用者に関する調査結果を抽出し,分析した。その結果,既往調査の大半が図書館サービス全般の利用者調査の一部として行われており,調査手法は質問紙調査が主流であるなど限られた調査しか行われていないことが明らかになった。また利用者のレファレンスサービス利用として,1)調べものの利用者の割合が資料の借り出しや返却に比べると低いこと,2) 10代,20代の利用割合がその他の年代に比べて高いこと,3)学生の利用割合が高く主婦の利用割合がその他の職業に比べて低いこと,4)女性よりも男性の利用割合が高いことなどが明らかになっていることがわかった。
著者
顧 銘
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.34-47, 2002-03-30

1980年代以降中国の図書館情報学界において,コンピュータの発展に伴い,コンピュータ技術,情報検索や情報処理といった情報学要素が徐々に伝統的な図書館学の中に浸透し,図書館情報学という用語が用いられるようになった。こうした動向の下で,各大学は図書館学教育の中に情報学要素を取り込み,図書館学教育は図書館情報学教育へと移行した。さらに,1990年代に入ると,中国の急激な社会的・経済的変動に伴い,図書館学は情報学との相補性を図りながら経済学の関連知識も多く導入し始めた。こうした変革の中で,各大学は図書館学と情報学とを統合しながら,市場ニーズに対応できる人材養成を目指して,専攻を新設したり,科目を増設したため,カリキュラムが目まぐるしく変容してきた。こうした背景を踏まえて,本稿では,北京大学と華東師範大学の2つの代表的な事例を通して1980年代以降の中国における図書館情報学教育の改革を考察する。