著者
佐藤 浩 宇根 寛 飛田 幹男
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.132-136, 2008-07-25 (Released:2009-01-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

2005年10月8日, パキスタン北部地震 (マグニチュード7. 6) が発生し, 2, 000ヶ所以上の斜面崩壊が引き起こされた。筆者らは既に, 90m解像度数値地形モデル (DEM) を使って, 斜面崩壊の大部分が逆断層の上盤側で, その断層の近くで発生したこと, 多くの規模の大きな斜面崩壊が南及び南西向き斜面で生じたことを報告した。本稿では, 250m2 (約15m× 15m) より広くて, 断層から4kmの範囲にある上盤側の977の斜面崩壊を選んだ。そして, TERRA/Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer (ASTER) データから得られた細かい15m解像度のDEMを用い, その斜面崩壊の方位を計算した。その結果, それぞれ30%以上の斜面崩壊が南と南西に生じていたことを確認した。さらに, その方位がEnvironmental Satellite (ENVISAT) /Synthetic Aperture Radar (SAR) で検出された上盤の地表変位 (地震断層運動による永久的な変位) の卓越方位と一致することを確認した。他の研究者によって記録された住民の証言によると, 変位の大部分は地震発生直後に一気に形成されたという。このことは, 地表変位の異方性が, 斜面崩壊の異方性の主要な要素であることを示唆している。
著者
八木 浩司 山崎 孝成 渥美 賢拓
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.294-306, 2007 (Released:2007-08-03)
参考文献数
20
被引用文献数
10 23

2004年新潟県中越地震にともなって発生した地すべり・崩壊の発生場の地形・地質・土質的特徴を地形図, GISならびに土質試験・安定解析を用いて検討した。その結果, 以下のことが明らかとなった。1. 2004年新潟県中越地震による地すべり (深層すべり) は, 芋川や塩谷川流域の梶金向斜沿いの地域に集中して発生した。それらは, 旧期の地すべり地形の一部が再活動したものである。これには, 魚沼丘陵を開析する河谷に沿った30°程度の急な谷壁斜面の発達が関わっていることが示唆された。2. 大規模な地すべりによる地形変位量を地震前後のDEM (数値地形モデル) から算出した。滑落崖付近での陥没, 移動体による旧河道の埋積, 旧地表面に対する乗り上がり・隆起が捉えられたほか, 移動体から受ける側圧で発生した河床の隆起も認められた。特に大日岳北側 (塩谷神沢川最上流部) では, 上下変動量がともに最大で40m以上の規模で発生した。3. 崩壊は, その6割以上が45°以上の急斜面で発生している。4. 地すべりの大半は層すべり型でその発生場での元斜面勾配は, 13-26°の範囲で, そのモードは21-26°である。そのうちモードは, 東北日本内弧・新第三系堆積岩地域のそれに比べ数度程度大きいことから, 地震動なしには地すべりが発生しにくい土質条件下にあった。5. リングせん断試験および原位置一面せん断試験によるすべり面のせん断強度は, 砂岩と泥岩の層界にすべり面が形成されている場合, 完全軟化強度c'=0kPa, φ'=35°, 残留強度はcr'=0kPa, φr'=30°の値を示し, 泥岩・シルト岩のすべり面では完全軟化強度c'=0~10kPa, φ'=30°, 残留強度はcr'=10kPa, φr'=20°の値が得られた。既報告の第三紀層すべり面の平均残留強度値 (眞弓ほか, 2003) と比較した場合, シルト岩のすべり面は10°程度大きな値である。