著者
中村 吉伸 藤田 和也 足立 学 橘 祐太 飯田 健郎 浦濱 圭彬
出版者
The Adhesion Society of Japan
雑誌
日本接着学会誌 = Journal of the Adhesion Society of Japan (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.138-145, 2006-04-01
被引用文献数
1 1

碁盤目テープはく離試験で,セロハンテープが広く用いられているが,塗膜の表面状態やはく離条件に依存せずに一定のビール粘着力を示すことが必要である。この試験の精度に影響する粘着テープに関する因子について検討し,以下の結果が得られた。JISで規定されている粘着テープの貼り付け方法,放置時間,試験時のはく離角度や速度はこれに従うことが有効である。粘着テープのリールからの巻き戻しは,低速で一定にする必要がある。JISでは測定時の温度,湿度が規定されているが,保管時の注意も必要である。特に湿度は,はく離試験時の影響のみならず,保管時の粘着テープへの影響も大きい。セロハンテープ(ニチノン)と同じく汎用の粘着テープであるメンディングテープ(3M)を用い,ビール粘着力に及ぼす被着体の表面性質と表面粗さの影響について検討した。SUS,フェノール樹脂等の4種類の被着体を用い,表面をサンドペーパーで表面を研磨して粗面化した。セロハンテープは,これらの因子の影響がほとんどなかったが,メンディングテープは影響を受けた。セロハンテープは,碁盤目テープはく離試験の粘着テープとして適していることが分った。
著者
永田 員也 日笠 茂樹 酒木 大助 小林 淳 三橋 いずみ 川口 亮 福武 和正 平尾 裕之
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 = Journal of the Adhesion Society of Japan (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.309-315, 2001-08-01
参考文献数
7
被引用文献数
2

ヘンシェルミキサーを用い重質炭酸カルシウム(平均粒子径1.4mm)とタルク(3.2mm)をそれぞれ重量比3/1,1/1,1/3での混合と同時にステアリン酸による表面改質を行うことにより複合(ハイブリッド)フィラーを調製した。得られたハイブリッドフィラーおよび両者のフィラーを乾式で混合したブレンドフィラーをポリプロピレン(PP)に二軸押出機にて混練し,射出成形機で試料を調製した。これらフィラーの走査型電子顕微鏡観察の結果,ハイブリッドフィラーはブレンドフィラーと大きく異なり,混合時の衝突エネルギー,表面改質,粒子形状の違いなどにより微粒子炭酸カルシウムやタルクの凝集塊が十分に解砕されていた。ハイブリッドフィラー充填複合材料はそれぞれの粒子が均一にマトリックスに分散していた。得られた複合材料の力学特性を測定した結果,ハイブリッドおよびブレンドフィラー充填複合材料の弾性率や降伏強度はタルク配合比増加とともに向上し,タルクがこれらの力学特性改善効果に大きく寄与していることが明らかとなった。ブレンドフィラー充填複合材料ではタルク充填により衝撃強度が大きく低下した。一方,ハイブリッドフィラー充填複合材料の衝撃強度はフィラー充填量40%を除いてタルク含有量が10wt%以下ではマトリックスPPの38kJ・m-2よりも高い衝撃強度であり,炭酸カルシウムの配合比が高いほど優れた衝撃強度を示した。このハイブリッドフィラーの衝撃強度改善効果は解砕微粒子炭酸カルシウムの応力分散作用およびタルク凝集塊の解砕が主な要因であると考えられる。
著者
樋口 泉 沢 俊行 志村 穣
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 = Journal of the Adhesion Society of Japan (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.209-216, 2000-06-01
参考文献数
24

衝撃曲げモーメントを受ける同稲材料被着体のスカーフ接着継手における応力伝播と応力分布を三次元有限要素コードDYNA3Dを用いて解析した。解析においては,一方の被着体の端部を固定し他方の被着体の端部に衝撃荷重を作用させ曲げモーメントを発生させた。その結果,固定される被着体と接着層との界面にミーゼス相当応力の最大値が発生した。被着体のスカーフ角,接着層厚さおよび被着体の縦弾性係数が応力挙動におよぼす影響を調べた。その結果,スカーフ角が45.及び60.でミーゼス相当応力の最大値はより小さくなることが分かった。接着層の厚さが小さくなるに従いミーゼス相当応力は大きくなる。接着剤の縦弾性係数が大きくなるとミーゼス相当応力の最大値は大きくなることが分かった。接着層中央部端部近傍のひずみ応答に関する実験を行い,実験結果と解析結果はかなりよく一致した。
著者
堀 靖郎 穂永 信 石部 功
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 = Journal of the Adhesion Society of Japan (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.97-103, 2007-03-01
参考文献数
9

粘着テープを被着物から剥離する時の帯電について,その帯電量の測定手順,帯電の2次元分布測定を含めて,基礎的な研究を行った。ファラデーケージと前置増幅器,XY型帯電2次元分布測定装置を新たに作製した。用いた粘着テープは5種類,被着物は15種類を用い,それぞれの組み合わせについて剥離時帯電の測定を行った。得られた粘着テープの剥離時帯電量は,粘着剤がゴム系・アクリル系に拘わらず,普通の接触帯電と同様に被着物の帯電列に沿って,大きな負帯電(被着物:ポリメチルアクリレート(PMMA))から大きな正帯電(被着物:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))まで順番に変化した。但し被着物との組み合わせによっては,帯電量の大きさが順に並ばないものや,その帯電極性までも反対に出る組み合わせも有った。現在のところ,この原因は粘着剤に含まれる主剤以外の化合物と被着物との接触帯電作用によると推測している。剥離時帯電による,被着物の帯電2次元分布も測定し,いろいろな分布形態が有ることを見つけたが,この分布形態と接着形態及び剥離時放電との関係も考察している。
著者
中村 吉伸 藤田 和也 足立 学 衣川 義人 飯田 健郎 佐々木 眞利子 浦濱 圭彬
出版者
The Adhesion Society of Japan
雑誌
日本接着学会誌 = Journal of the Adhesion Society of Japan (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.498-506, 2005-12-01
被引用文献数
13 2

ポリスチレンーポリイソプレンーポリスチレントリブロックコポリマーをベースポリマーとし,ポリイソプレンと相溶性の高い脂肪族炭化水素C5系タッキファイヤを加えたモデル粘着剤で,タッキファイヤによる相構造形成について検討した。タッキファイヤは60wt%まで加えた。180°ピール粘着力は,タッキファイヤ量に伴って向上したが,40wt%以上で上昇の程度がより著しくなり,加熱なしに十分な粘着力が得られ,感圧性が発現した。タッキファイヤはポリイソプレン相中に溶解するが,同時にタッキファイヤ相も形成し,濃度とともにその量が増加することがパルスNMRから分った。透過型電子顕微鏡観察から,ベースポリマーはポリイソプレン連続相中に,約20nmのポリスチレンドメインが分散していた。ポリイソプレン相中にタッキファイヤの明碓なドメインは観察されなかったが,不均一になっており,これがタッキファイヤ濃度にともなってより顕著になった。このことからタッキファイヤ相はnmオーダーの濃度揺らぎであることが分った。このタッキファイヤ相は,粘着剤の凝集力を向上させていると考えられる。