著者
丸山 道生
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.266, 2008 (Released:2008-05-27)

流動食は最も重症な病人が食する食事で、それぞれの民族や地域での健康を祈願し、生命の再生を願う儀礼的な食事である。世界20カ国の50病院を訪問し、流動食を中心とした病院食を検討した。東洋(アジア)の流動食は穀物の煮汁が主体で、西洋(ヨーロッパ、オセアニア、南北アメリカ)ではブイヨン、ブロスに代表される肉の煮汁である。東洋ではさらに、北方は雑穀(粟)、日本を含む中間では米、南では大麦の煮汁が流動食の代表であることがわかった。
著者
田中 雅一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.64, 2008 (Released:2008-05-27)

本報告の目的は、強壮剤(精力剤)から見たヘテロセクシュアルな男性身体の分析である。具体的に考えたいのは勃起不全(ED)の男性身体である。あえて本質主義的な表現を使えば、勃起不全は、ヘテロセクシュアルな男性の否定であり、「死」を意味する。この「死」をいかに克服し、蘇ることができるだろうか。その方法のひとつが強壮剤である。強壮剤の分析を通じて、いままで隠蔽されてきた男性身体にあり方に迫りたい。
著者
大川 謙作
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.234, 2008 (Released:2008-05-27)

かつてのいわゆる「チベット旧社会」においては貴族(sku drag)が存在した。旧社会は1959年の新中国による「民主改革」によって大規模な構造転換を余儀なくされ、公的には貴族階級も消滅したかに見えたが、それから半世紀を経た今日においてもなお貴族集団は存続している。 本発表の目的はこの貴族の存続のロジックについて、先行研究を批判しつつ分析することであり、特に現代ラサでの日常会話を手がかりとしたい。
著者
河西 瑛里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.166, 2008 (Released:2008-05-27)

キリスト教到来以前のヨーロッパにおける信仰の復興運動、ネオペイガニズムを通して、伝統の創出について考える。本運動は、外部からは創られた伝統とされるが、当事者は過去との連続性を主張し、「本物」の信仰の復興をめざしている。その一方で、北米やオーストラリアの先住民族の文化を積極的に取り入れている。ここでは、とりわけドルイドの実践を取り上げ、彼らがなぜ「伝統」を復興させようとしているのか、考えてみたい。
著者
岸上 伸啓
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.146, 2008 (Released:2008-05-27)

本報告では、狩猟採集をめぐる「生業」概念や「生業」としての狩猟採集活動に関する研究アプローチがどのように展開されてきたかを整理、検討する。そのうえで、極北地域の狩猟採集民(先住民)の生業活動の一般的な特徴とイヌイットのシロイルカ猟の諸特徴を検討し、イヌイットの狩猟採集活動にかかわる生業モデルを提案する。報告者は、このモデルの汎用性を主張する。

1 0 0 0 OA マナと聖霊

著者
石森 大知
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.171, 2008 (Released:2008-05-27)

マナをめぐる議論は、19世紀末のコドリントンによる報告以来、大変な蓄積がある。しかし、太平洋の人々がキリスト教徒となった現在でも、マナは伝統的信仰の象徴として扱われる一方、同概念とキリスト教的価値観との関連性は不問にされてきた。そこで本発表では、ソロモン諸島の事例に依拠し、マナは、聖霊とも結びつき、名詞的または実体的な「超自然的力」と認識されていることを明らかにするとともに、その社会・歴史的背景について考察をおこなう。
著者
長島 節五
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.345, 2008 (Released:2008-05-27)

科学技術の現在、民俗民間信仰の場に於いて古い信仰形態を色濃く残した儀礼や習俗が見られる。御嶽講の成立はさほど古くは無いものの、その巫術を行う宗教活動において、弾圧の対象となったこともある。明治に入ると神仏分離政策による弾圧の可能性あった。普寛、覚明、一心等によって確立した御嶽講の神仏混淆習合形態は、他の習合形態を取る修験道やその影響を受けた信仰形態と同じように、弾圧の対象になっていたが、御嶽講は国家神道の流れに乗り教派神道を表に据えて神社になり御嶽教になった。
著者
青柳 孝洋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.76, 2008 (Released:2008-05-27)

本発表は、イスラーム社会における歌の受容と生産をとりあげる。特にナシード・ディーニーと称されるイスラーム的宗教歌謡ジャンルについて、主に2007年8月~10月の2ヶ月間にシリアで行った現地調査を基に論じる。 伝統的にはアッラーへの信仰を促すような内容のものが宗教歌謡では一般的であった。しかし近年、現代的な要請を受けてその内容は広がりを見せてきている。