著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B12, 2015 (Released:2015-05-13)

この分科会は、発表者の各々が文化人類学、社会人類学、生態人類学、医療人類学、芸術人類学、宗教学等の学徒として、各々のフィールド経験からインスパイアーされた「犬との出会い」を、さまざまな文献を渉猟しつつ、知的に再構成した試論の集成として出発する。本分科会は、従来の「人間と動物」の関係論という研究分野が、もはや「動物一般」として取り扱えない状況に到来しつつあることを、多様な事例を通して指摘する。
著者
渡邉 暁子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E20, 2015 (Released:2015-05-13)

本発表は、アラブ首長国連邦(UAE)とカタル首長国という2つの湾岸アラブ諸国において、カトリックからイスラームに改宗したフィリピン人、とりわけ女性家事労働者と国際結婚者を対象にする。国籍、社会階層、宗教、文化等の違いがヒエラルキーとして人びとを「分断」する両国社会のなかで、キリスト教国フィリピンからの移民労働者たちの改宗を契機とする親密なつながりの変容を描き出す。
著者
片岡 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.D07, 2015 (Released:2015-05-13)

本報告は、タイ国における大乗系漢文経典を用いた読経方法、およびその知識の継承方法に関する調査の中間報告である。タイ国では漢文経典の読み方として最も普及しているのが、「五音」と俗称される特殊な人工言語によるものである。本報告では「五音」のタイ国での普及過程、および念仏会や寺廟儀礼での「五音」経典の用いられ方を検討することで、タイ国における漢文リテラシーの所在の一端を明らかにすることを試みる。
著者
関口 由彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E15, 2015 (Released:2015-05-13)

本発表は、北海道日高地方におけるアイヌ民族の文化継承をめぐる動きを事例として、そこに浮かび上がる「血」、「系譜」、「地域」の観念を検討する。それぞれの観念の複雑な絡み合いが、直接的な人と人とのつながりに基づく「アイヌ」や「仲間」といった自己認識を生み出し、自己のエスニックな帰属が文書資料によって規定される「人種化」(=出自/血統にもとづく帰属集団の固定化)という現実に抗う様態を考察する。
著者
山田 仁史
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B14, 2015 (Released:2015-05-13)

人類とさまざまな仕方で、長く付き合ってきた犬。ヨーロッパ中世でも、犬は猟犬、番犬、愛玩犬、野犬などとして人間とともに、あるいは人間の近くに生きてきた。本発表は、そうした犬のさまざまなあり方のうち、食肉としての犬をとりあげ、その諸相を論じることを通じて、動物全般と人間との関係、および犬の特殊性をあらためて考え直すことを目的とする。
著者
渕上 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.H09, 2015 (Released:2015-05-13)

中国同胞(朝鮮族)代理母による韓国人不妊夫婦相手の代理出産において、従来主流であったホストマザー型代理出産に代わって、近年、韓国人の不妊夫婦の夫が、中国同胞代理母の所に赴き、性交渉を行って子どもを産ませた後、DNA鑑定を行ってその子を認知する形態のものに変わってきている。その理由を、韓国の代理出産をめぐる文化伝統と、韓中両国の生殖市場を取り巻く近年の法的・社会経済的状況の変化に照らして考察する。
著者
松本 尚之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F08, 2015 (Released:2015-05-13)

本発表では 、在日アフリカ人の間で2000年を前後して隆盛を極めた服飾ビジネスについて、特にナイジェリア出身者の事例を通して報告する。対象とするビジネスは、アメリカのポピュラー文化(ヒップホップ)の流行を背景として生まれたもので、彼らが携わるエスニック・ビジネスのなかでも日本人を対象とした点に特徴がある。服飾ビジネスの概要と変遷を論じ、ポピュラー文化のグローカル化と移民の関係について考察を行いたい。
著者
井上 淳生
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F10, 2015 (Released:2015-05-13)

現在の日本には高齢者が社交ダンス(ballroom dance)を楽しむ施設が何種類かある。カラオケパブもその一つである。本発表ではそこで展開されている踊りの分析を通して、ダンスの領域における身体の規格化について考察する。なかでも、国家や社会的規範への反対運動の過程で構築されてきた「正しい/正しくない」という区分を取り上げ、現実に社交ダンスに参加する人びとの実践との関係に注目する。
著者
吉村 美和
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E11, 2015 (Released:2015-05-13)

旧ユーゴスラビア紛争における民族浄化は、大量虐殺、および組織的強姦や強制妊娠などの性暴力による排除が横行した凄惨なものであり今なお民族集団間に遺恨を残している。報告者は、コソボ紛争時にセルビア人男性からアルバニア人女性に対して行なわれた性暴力を対象に、性被害に遭遇した女性たちを支援しているコソボの民間施設を訪問し、紛争時の性被害とそれ以後の生活の実態について聞き取り調査を行った。その結果、アルバニア人の慣習法であるカヌン(Kanun)が、性暴力を受けた女性たちに大きな影響を与えていることが明らかになった。今回の報告では、先行研究とフィールドでの事例を照らし合わせながら、アルバニア人女性たちが経験した性被害の事例を3つ提示し、それらを分析することでカヌンと紛争時の性暴力の関係について考察していく。
著者
新本 万里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.G07, 2015 (Released:2015-05-13)

本報告では、月経についての観念がどのように変化しているのかを、月経処置法の伝承者と伝承の内容に注目して検討することを目的とする。調査対象としたのはパプアニューギニア・アベラム社会である。報告では、月経処置法の伝承者が母から上級生や友人、教師に変化していること、伝承内容にも変化があることを示す。伝統的には月経はヤムイモ栽培との関係において忌避されていたが、伝承者の変化に伴い羞恥心が意識されるようになったことを明らかにする。