著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B12, 2015 (Released:2015-05-13)

この分科会は、発表者の各々が文化人類学、社会人類学、生態人類学、医療人類学、芸術人類学、宗教学等の学徒として、各々のフィールド経験からインスパイアーされた「犬との出会い」を、さまざまな文献を渉猟しつつ、知的に再構成した試論の集成として出発する。本分科会は、従来の「人間と動物」の関係論という研究分野が、もはや「動物一般」として取り扱えない状況に到来しつつあることを、多様な事例を通して指摘する。
著者
太田 好信 瀬口 典子 辻 康夫 松島 泰勝 池田 光穂 冨山 一郎 加藤 博文 北原 次郎太
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、①(自然人類学と文化人類学との両方を包含する広義の)人類学とこれまで分断されてきた批判的社会運動との間に、公共哲学を媒介として新しい連携を構想、②日本において萌芽的状態にある先住民族研究(Indigenous Studies、Native Studies)という研究領域と海外の先住民族研究との間でのネットワーク形成を促進、③この研究領域を日本の公共空間においても意味のある探究として根付かせるために必要な政治・哲学理論と倫理の構築を目指す。
著者
池田 光穂 井上 大介 Ikeda Mitsuho Inoue Daisuke イケダ ミツホ イノウエ ダイスケ
出版者
大阪大学COデザインセンター
雑誌
Co*Design (ISSN:24349593)
巻号頁・発行日
no.9, pp.31-45, 2021-01-31

本稿は、サイバースペース(=インターネット空間)におけるサイバーパンクという概念を扱い、その倫理的あるいは非倫理的特質について人類学的に分析するものである。その際、社会に対するサイバーパンクの抵抗者としての特徴を確認するとともに、それがアイデンティティとよばれる社会的拘束に根差した概念ではなくエージェンシーという言葉で表現されうる、より行為実践に依拠した概念と関連する性質のものであることが論じられる。
著者
徐 淑子 池田 光穂 近藤 千春 PETERS Gjalt-Jorn
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

ハームリダクションという薬物使用者支援アプローチがある。日本では、公式的な実践例はないが、近年、海外の実践例などに関心がもたれるようになった。本研究で、ハームリダクションに関する精度の高いモノグラフを作成した。そして、ハームリダクションの早期採用国であるオランダと、日本との間の比較調査を行い、ハームリダクションあるいはハームリダクション的実践についての言説の幅について検討した。
著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C15, 2020 (Released:2020-09-12)

先住民の権利宣言(UNDRIP, 2007)の国連総会採択以降、これまでの人類学関連分野における先住民の遺骨(主に頭蓋骨)の研究のための収集の歴史が再検証され、それぞれのケースにおける倫理的・法的・社会的含意(ELSI)において今日的な意味でのインフォームドコンセントの欠如と反倫理行為が明らかになりつつある。歴史における研究の反倫理行為を現在から断罪するだけでなく、先住民への集合的謝罪と「和解」がどのような形で可能になるのかを文化人類学の立場から検証する。
著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F11, 2021 (Released:2021-10-01)

先住民(族)を「異類の他者」として客観的な表象としてのみ扱ってきた学問の倫理的姿勢を、哲学者の植木哲也(2011)氏は「学問の暴力」と呼び、それを厳しく糾弾する。遺骨返還運動の抗議の矛先は自然人類学に向けられているが、このような歴史的な負債を負っているのは、はたしてわれわれのキョウダイ学問だけではあるまい。私は文化人類学もまた、過去の歴史からの反省し学問が倫理的にノーマライズすべきであることを主張する。
著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

この分科会は、発表者の各々が文化人類学、社会人類学、生態人類学、医療人類学、芸術人類学、宗教学等の学徒として、各々のフィールド経験からインスパイアーされた「犬との出会い」を、さまざまな文献を渉猟しつつ、知的に再構成した試論の集成として出発する。本分科会は、従来の「人間と動物」の関係論という研究分野が、もはや「動物一般」として取り扱えない状況に到来しつつあることを、多様な事例を通して指摘する。
著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B16, 2017 (Released:2017-05-26)

この発表では、ラテンアメリカ(とりわけ中央アメリカ)における人種=民族カテゴリーに関するエスノグラフィーやエスノヒストリーを再検討しつつ、私自身がその地を訪れてきた際に参照してきた文献にもとづく知識が私のフィールド経験とどのように交錯してきたのかについて考察する。
著者
池田 光穂
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.309-327, 2002-12-30 (Released:2018-03-27)
被引用文献数
1

先住民社会に存在している薬草や治療技術の総体としての民族医療を、グローバルな資本主義の流通形態から解放する。これが本論文の目的である。人類が享受している医薬品の多くが先住民における利用にもとづくものであったことは自明の事実であるが、今日では歴史上の逸話にとどまり、人類全体が受けてきた便益に対する償還が検討されることは稀である。この理由を、筆者は近代医療の確立とともに生起した民族医療的知識の独自性と見なされている「非近代医療的性格」の主張であると考え、この主張が近代医療に付与されている知的財産権の概念を民族医療に付与しなかった根拠になったと考える。民族医療は、土地固有の知識と実践の体系であるという説明は、薬草が薬局方として成立したり、その有効性が近代医療によって証明されるという近代医療との相互交渉という歴史的証拠から、立論の限界が生じる。また近代医療は、民族医療の要素を取捨選択しながら領有することで、医療概念を確立してきた経緯ゆえに、近代医療そのものが民族医療に対して排他的な知的独立性を主張することにも限界が生じる。それゆうに民族医療の知識形態を知的財産として捉える立論の可能性を検討する必要が生じる。近代医療は民族医療を領有することを通して人類に便益をもたらしてきたという事実を認め、これまでの知的所有権に関する報酬の概念を拡張しつつ、その償還に関する方法が提案されてきた。人類学諸理論が、これらの実践的問題に対する法的および社会的整備に寄与する可能性は大きい。
著者
池田 光穂 Ikeda Mitsuho イケダ ミツホ
出版者
大阪大学COデザインセンター
雑誌
Co*Design (ISSN:24349593)
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-17, 2020-08-31

軍事的インテリジェンスという用語は第二次大戦後に広く世界に膾炙するが、その起源はそれ以前の連合国ならびに枢軸国と呼ばれる国々ですでに1920年代末から始まっていた。本稿は、軍事的インテリジェンスと当時それらの地域で研究が本格化する民族学(文化人類学)との倫理的な関係について論じる。それらの関係は「協働」という言葉で表現することができ、(i)積極的協力、(ii)相反あるいは矛盾する協力、(iii)価値中立的関与、という3つの関係に整理できる。これらの関係性の検討のため、将来における具体的な研究課題として「ペーパークリップ作戦」(米軍によるナチ科学者のリクルートと戦争犯罪免責)と「オデッサ」(正体不明の戦犯ナチ移送支援組織)を紹介、分析する。戦争の苛烈な現実に我々が直面した際に「科学がもつ冷徹さ」と「道徳的かき乱し」との間の認識論的混乱を避けるために、この研究分野の倫理的-法的-社会的連累(ELSI)の検討が急務であることを指摘した。
著者
池田 光穂
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.62-72, 2016-07-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
29

本稿において筆者は、公衆衛生におけるヘルスコミュニケーションを通した介入における倫理問題について論じる。まずヘルスコミュニケーションという用語の出現を1980年以降のプライマリヘルスケアやヘルスプロモーションのオタワ憲章の時期に求め、それ以降増加傾向があることを指摘した。コミュニケーションを介した公衆衛生活動のレパートリーについて紹介した後に、この活動領域における規範的倫理の項目11項目に指摘した。また、それに関連する5項目の倫理的関与の領域を指摘した。このことから構成されるマトリクスを提示して、規範的倫理の項目の分布について理解することの意義を提示した。終章においてヘルスケアにたずさわる人たちが抱く価値自由で中立的な希望とは裏腹に、現実の公衆衛生政策の現場にはさまざまな価値負荷=価値が介入することを、いくつかの実例をもって示した。そして、価値負荷するヘルスコミュニケーションの現場に、医療社会学者が関与してゆく可能性を示唆した。
著者
池田 光穂
出版者
関西鍼灸大学
雑誌
関西鍼灸短期大学年報 (ISSN:09129545)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-61, 1991-04-01

En este reportaje, se escribe la vida alimentaria de un pueblo mestizo hondureno segun el metodo etnografico,con su interpretacion del autor. La gente proyecta su propia relacion social en la explicacion de los procesos culinarios de ciertas comidas, por ejemplo,de maiz y frijoles. Tambien la imagen de la clase socio-economica que los pueblos mantienen, se presenta en el discurso sobre la vida culinaria y alimentaria. El autor recomienda que se consiga mas reconocimiento de los datos, porque hace falta etnografia de los mestizos centroamericanos ante la acumulacion etnografica de los grupos indigenas.
著者
池田 光穂
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢
巻号頁・発行日
vol.77, pp.45-71, 2003-03-20
著者
奥島 美夏 永井 史男 金子 勝規 池田 光穂 石川 陽子
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は引き続きASEANにおける看護・介護人材の調査を中心に進めた。まず、奥島はマレーシア、ブルネイ、インドネシア、ベトナムで現地調査を実施した。本プロジェクト初のマレーシア・ブルネイの調査では、保健省・看護師協会・大学などを訪問し、政策方針、外国人看護師の受け入れ状況、看護教育、卒業後の進路などについてインタビューを行った。両国はインドネシアと同じマレー語圏だが主に受け入れ国であり、しかし近年は現地看護師のシンガポールや中東への流出にも苦しんでいることがわかった。金子はタイ、カンボジアにおいて現地調査を実施し、医療政策や病院経営などについて調査を進めた。また、インドネシアにも奥島の調査に合流し、地方部(東カリマンタン州)における保健医療の現状を探るため、保健所(地域保健センター)、助産院、看護学校、現地民の自宅介護などについて参与観察・インタビューした。地方部では海外就労の機会は少ないが、結婚・出産・育児などのライフステージに合わせて大学や大学院への進学や、昇進にむけたプロモーション(地方勤務)などを行い、長期的な勤務を続けていくことが可能であることがわかった。永井は金子、および研究協力者の河野あゆみ教授(大阪市立大学看護学部)と、タイにおいて共同調査を実施し、医療政策や看護教育のほか、介護制度の普及と自治体の役割について調査した。なお、同教授には次年度の成果論集にて、主に看護教育面に関する報告・執筆などでも協力を依頼する予定である。さらに日本国内では、石川がEPA看護師や所属機関関係者へのインタビュー、池田は多様な保健医療の在り方と今後の動向について講演を行った。
著者
奥島 美夏 池田 光穂 石川 陽子 鈴木 伸枝 永井 史男 高畑 幸 服部 美奈
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究は保健医療人材の国際移動に関する学際共同研究であり、日本・東南アジア間で2008年より開始した経済連携協定(EPA)による外国人看護師・介護福祉士候補の送り出し・受け入れを軸として、送出諸国(インドネシア・ベトナムなど)の保健医療・教育・移住労働を先進モデル国であるフィリピンと比較つつ課題を分析した。送出諸国は、1990年代の中東・英米での受け入れ開放政策や2015年末のASEAN経済統合をうけて人材育成・学歴引き上げを急ぐが、受け入れ諸国との疾病構造や医療・教育制度の相違などから必ずしも即戦力にはならず、ポストコロニアル的紐帯が薄い日本では職場適応・定住化にも困難があるとわかった。
著者
池田 光穂 太田 好信 狐崎 知己 小林 致広 滝 奈々子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

私たちの研究は、メキシコとグアテマラ両国における先住民(先住民族)について、先住民運動の中にみられる政治的アイデンティティについて現地に赴く民族誌調査を通して明らかにしてきた。具体的には、世界の他の地域での民主化要求運動、すなわち自治権獲得運動、言語使用の権利主張や言語復興、土地問題、国政への参加、地方自治などの研究を通して、(a)外部から見える社会的な政治文化としての「抵抗」の実践と(b)内部の構成員から現れてくる文化政治を実践する際の「アイデンティティ構築」という二つのモーメントと、その組み合わせのダイナミズムからなる資料を数多く得ることができた。