- 著者
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岩科 司
- 出版者
- 日本植物生理学会
- 雑誌
- 日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- pp.S23, 2003-03-27 (Released:2004-02-24)
フラボノイドは陸上植物のコケ類、シダ類、裸子および被子植物に広く分布する化合物群で、これまでに5,000種類近くの物質が報告されている。しかしながら、植物におけるこれらの成分の機能についてはほとんどわからないままであった。唯一古くから知られていた機能は色素として花に含まれるアントシアニン系フラボノイドの花粉媒介のための昆虫や鳥の誘引作用であった。これらの昆虫誘引についてはその後、アントシアニンばかりでなく、フラボンやフラボノールのような、ほとんど可視域に吸収をもたないフラボノイドも昆虫の誘引に役立っていることが判明している。しかし、花以外の葉や根などに存在するフラボノイドの機能については長い間あまり知られていなかった。近年、やっとこれらの機能に関する研究が本格的になり、フラボノイドがそれを合成する植物と他の生物との間に重要な機能を果たしていることがわかってきた。例えば、カンアオイ類やミカン科植物に含まれるフラボノイドのチョウに対する産卵刺激作用、クワの葉などのフラボノイドの昆虫に対する摂食刺激作用、マメ科植物の根などのフラボノイドの根粒菌誘引作用、またその逆の抗菌作用などである。さらには最近、生物間の作用ではないが、葉に含まれるフラボノイドについて、生物に有害な紫外線から植物を保護する機能も実証された。本講演では、これまでに判明しているフラボノイドの植物における機能について紹介する。