著者
宇野 智洋 高原 政利 原田 幹生 丸山 真博 高木 理彰
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.254-259, 2017

<p> 背景:本研究の目的は,野球選手における肘内側側副靱帯損傷(以下,MCL)の保存療法成績と,保存療法に反応しない危険因子を調査することである.</p><p> 対象と方法:肘MCL損傷を有する68名の野球選手を後ろ向き調査した.平均年齢は16.8歳(12~24歳)であった.診断基準は,肘内側痛,MCL直上の圧痛,moving valgus stress test陽性,以上3項目を満たすもので骨端線閉鎖前の内側上顆裂離を除外した.保存療法の平均観察期間は4.4か月(1~15か月)であった.3か月以内の野球への復帰状況を調査した.</p><p> 結果:3か月以内の完全復帰は23名(34%),不完全復帰は21名(31%),復帰不能は21名(31%),および不明は3名(4%)であった.</p><p> 結論:保存療法に反応しない危険因子は,初診時に高年齢,主観的評価の肘痛,KJOCスコアが不良,外反ストレスX線で不安定あり,MRIで靱帯高信号が50%以上,および肩甲上腕関節の柔軟性不良であった.</p>
著者
梶田 幸宏 岩堀 裕介 高橋 亮介 村松 由崇
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.350-353, 2017

<p> 超音波を用いて尺骨神経の前内側への移動量を肩の外転角度と肘の屈曲角度を変えて検討した.対象は健常人10名20肘で,超音波を用いて肘部管の短軸像を描出.上腕骨滑車から尺骨神経中央までの距離(TUD)を肩関節外転60・90・120度,肘関節屈曲30・60・90・120度の計12肢位で比較検討した.</p><p> 肘関節屈曲30・60・90・120度のTUDは各肩関節外転角度で利き手側と非利き手側の各肢位で有意差はなかった.肩関節の各外転角度において肘関節屈曲30度と比較して120度では有意にTUDは増加した.</p><p> 肘関節の屈曲角度を深くすることで,尺骨神経は有意に内側に移動したが,肩関節外転角度の影響は受けていなかった.肘部管における尺骨神経の位置の変化には肩関節の外転運動は関与しないことが示唆された.</p>
著者
齊藤 寿大 笹沼 秀幸 飯島 裕生 竹下 克志
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.280-282, 2017

<p> 後方型野球肘障害は比較的稀な障害である.本研究の目的は当施設における後方型野球肘障害の治療成績を調査することである.対象は2013年8月より2016年8月の間に,肘痛を主訴に受診し,後方型野球肘と診断された8選手とした.全例男性で平均年齢は16.1(13~22)歳であった.評価項目はポジション,骨折型,治療内容,内側障害の合併,復帰状況である.ポジションは投手が5肘,内野手が3肘であった.骨折型は古島分類のphyseal typeが3肘,transitional typeが1肘,classic typeが2肘と,肘頭先端裂離骨折が2肘であった.再発例は8肘中3肘(physeal typeが1肘,classic typeが2肘)であった.内側障害の合併は2肘で,内側上顆裂離骨折が1肘,内側側副靱帯損傷が1肘であった.治療内容は4肘が保存療法であり,classic typeの2肘と肘頭先端裂離骨折の2肘が手術治療を行った.最終診察時に全例治癒し,受傷前のレベルでの競技復帰を果たした.後方型野球肘の治療は骨折型や選手背景を考慮する必要がある.</p>
著者
宮澤 諒 中村 恒一 松葉 友幸 磯部 文洋
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.195-198, 2019

上腕骨外側上顆炎と肩関節可動域の関係性を調べるため,69名を対象に調査を行った.肩関節可動域(range of motion:ROM)を測定し,健側比率を用いて80%未満の場合を肩ROM不良,全て80%以上の場合を肩ROM良好と定義し内訳を調査した.また,2群に分けて性別,年齢,利き手,職業,罹病期間,肘・手関節,前腕回内外のROM,握力,ピンチ力,visual analogue scale(以下VAS)による肘関節の運動時の疼痛,重症度分類,DASH scoreの比較を行った. 結果は肩ROM良好群37名,不良群32名であり46.3%が患側の肩関節の可動域制限を認め,そのうち96.8%は内旋制限を認めていた.今回,患者背景で肩ROM不良群での特徴的な項目は認めなかったが,上腕骨外側上顆炎の治療プログラムにおいて肩関節の関与も考慮していく必要性があると思われた.
著者
阿蘇 卓也 田村 将希 千葉 慎一 鈴木 昌 西中 直也
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.169-173, 2019

目的:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)症例の投球側と非投球側におけるゼロポジション近似肢位での肩関節外旋筋力(Zero外旋筋力)及び肘関節伸展筋力(Zeroリリース筋力)を比較することを目的とした. 材料及び方法:OCDと診断された野球選手6名(年齢163.0cm,体重53.5kg,年齢13.3歳)を対象とした.Zero外旋筋力及びZeroリリース筋力はハンドヘルドダイナモメーターを使用し,立位にて肩関節ゼロポジション,肘関節90度屈曲位,前腕回内外中間位での等尺性肩関節外旋筋力及び肘関節伸展筋力を測定し,投球側と非投球側で比較した. 結果:Zeroリリース筋力のみ投球側が非投球側より低値を示した. 考察:投球時加速期以降の肘関節伸展位保持機能を評価するZeroリリース筋力の低下はOCD発症の一因になることが示唆された.
著者
松井 知之 幸田 仁志 甲斐 義浩 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 盛房 周平 森原 徹
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.219-221, 2018 (Released:2019-07-25)
参考文献数
13

背景:円背などの不良姿勢では,肩甲骨が偏位し,投球動作での肘下がりなど不良動作を来たす恐れがある.本研究では,中高生野球選手における肘関節痛と姿勢との関係を調査したので報告する. 対象・方法:中学生60例,高校生108例を対象に,スパイナルマウスを用いて,両上肢下垂・最大挙上における胸椎後弯角および腰椎前弯角,その変化量を測定した.理学所見で陽性と判断した選手を所見陽性群とし,対応のないt検定を用いて所見陽性群の特徴を検討した. 結果:中学生では,下垂時での腰椎前弯角が陽性群において有意に高値であった.高校生では,下垂時と挙上時の胸椎後弯角変化量が陽性群において有意に低値を示した.その他においては,有意差を認めなかった. 考察:不良姿勢では肘関節障害をきたす恐れがあることが示唆された.今後症例数を増やし,姿勢改善が障害予防につながるか前向きに検討する必要があると考えた.
著者
平本 真知子 森原 徹 松井 知之 東 善一 瀬尾 和弥 幸田 仁志 甲斐 義浩 盛房 周平
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.216-218, 2018 (Released:2019-07-25)
参考文献数
12

投球障害の原因としてこれまでに体格や身体特性など様々な要因が検討されている.本研究では高校生野球投手を対象に,関節可動域と肘関節障害の関係および肩関節と股関節の関係について検討した.対象は京都府高等学校野球連盟に所属する選手164名とした.肩関節2nd外旋・内旋,3rd内旋,股関節屈曲・内旋・外旋・外転,頚部・体幹回旋の各角度を測定した.対応のないt検定を用い,肘関節障害の有無で各関節可動域を比較・検討した.肘関節障害の有無に関わらず,関節可動域に有意差をみとめなかった.投球障害の原因は多くの因子が関係し,関節可動域自体も様々な因子に影響を受けるため,今後は多因子での検討を進める必要があると考えた.