著者
幸田 仁志 岡田 洋平 福本 貴彦 森岡 周
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100012, 2013 (Released:2013-06-20)

【目的】 高齢者や重度障害者は,寝たきり予防のため車椅子を使用する.しかし,不良姿勢での長時間座位は,体位変換及び除圧動作を出来ない対象にとって,褥瘡発生の危険性を高める.褥瘡は治癒困難な慢性創傷の一つとして位置づけられ,理学療法士は褥瘡予防の観点から,車椅子座位に及ぼす外力に対して介入を行う必要がある.外力とは圧迫力と剪断力を示し,圧に剪断力が加わることで褥瘡発生の危険性を高めるとされている.車椅子機構が殿部圧迫力に及ぼす影響が数多く報告されてきたが,殿部剪断力に及ぼす影響を検討したものは見当たらない.我々は第47回日本理学療法学術大会においてリクライニングにおける前方への剪断力の増加,ティルトにおける後方への剪断力の増加を示した.しかし,ティルト・リクライニングの組み合わせによる外力の影響は明らかでない.本研究の目的は,ティルト・リクライニングを組み合わせた角度変化が,圧迫力および剪断力に及ぼす影響を検証することとする.【方法】 対象は神経疾患,骨関節疾患に特記すべき既往がない健常成人12名(23.9 ± 1.8歳,男性6名,女性6名)とした.対象者はティルト・リクライニング機構が備わった車椅子上で3分間の座位保持を行い,測定中に不快を感じても姿勢を変えないように指示した.アームレストは使用せず,両上肢を組んだ状態で保持するように指示した.フットレスト高は,同一検者が被験者の大腿部と座面が水平になる高さに調節した.衣服は,座面とズボンの摩擦を統一するため,全被験者が同じ素材のものを着用した. 測定は,リクライニング0°,10°,20°の3条件、ティルト0°,5°,10°,15°,20°の5条件を組み合わせた計15条件で行った.対象者の疲労の要素を考慮して,各条件はランダムな順序で実施した.殿部に生じる圧迫力および剪断力の測定は,車椅子の座面に設置した可搬型フォースプレート(アニマ株式会社,KtSmp)で行い,それぞれ3分間の床反力垂直成分および前後成分の平均値を各対象者の体重で除した値とした. 統計学的解析には,ティルトとリクライニングを2要因とした反復測定二元配置分散分析を使用した.下位検定として各要因について一元配置分散分析を行い,Bonferroni法を用いて多重比較検定を行った.有意水準は1%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は所属機関の研究倫理委員会の承認(H23-21)を受けて実施された.対象者にはヘルシンキ宣言に基づき,実験の目的,方法,及び予想される不利益を説明し書面にて同意を得た.【結果】 圧迫力においては,2要因間での交互作用は認めず独立した要因であった.リクライニングの角度変化に主効果を認め,多重比較の結果は全てのリクライニング条件間において,傾斜角度の増大に伴い圧迫力の有意な低下を認めた. 剪断力においては,ティルトとリクライニングの交互作用は有意であった.単純主効果検定の結果はティルトに有意差を認め,全てのティルト条件間に有意差を認めた.多重比較の結果はティルト0°条件に対してティルト5°,10°条件は,前方剪断力の有意な低下を認めた.ティルト5°条件に対してティルト10°条件は,前方剪断力の有意な低下を認めた.ティルト10°条件に対してティルト15°,20°条件は,後方剪断力の有意な増加を認めた.【考察】 本研究の結果,リクライニング傾斜に伴う圧迫力の低下,ティルト5°,10°における前方剪断力の軽減,ティルト15°,20°における後方剪断力の増加が示された.リクライニングは,殿部へ加わる力を背面へ分散することで圧迫力を軽減したと考察する.先行研究では,リクライニングが前方剪断力の増加を示したことから,組み合わせて用いる際,後方剪断力を誘発するティルト傾斜をより必要とすると予測した.剪断力は二要因の交互作用がみられたが,結果的に全てリクライニング角度条件において,ティルト10°に剪断力軽減がみられた。ティルト10°の際は,背面から生じる前方への反力と,座面傾斜により生じる後方への滑りの力が,互いにほぼ等しい力の大きさとなり,殿部に生じる剪断力を軽減したと考察する.従って,圧迫力軽減にはリクライニング,剪断力軽減にはティルト10°の介入が推奨される.今後は,骨盤や脊柱といった体節の変化についての言及が課題である.【理学療法学研究としての意義】 本研究では,ティルト・リクライニングの組み合わせが,殿部に生じる外力に及ぼす影響を検証した.リクライニング20°ティルト10°の設定が,圧迫力および剪断力の双方の軽減を得る可能性が示唆され,褥瘡予防を介入する上で臨床的意義は大きい.
著者
幸田 仁志 岡田 洋平 福本 貴彦
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.183-187, 2015-01-30 (Released:2015-03-04)
参考文献数
14
被引用文献数
1 3

本研究の目的は,車椅子のティルトおよびリクライニングの角度変化が殿部に生じる圧迫力および剪断力に与える影響を検証することとした。対象は健常成人12名とした。車椅子座面上に可搬型フォースプレートを設置し,殿部の圧迫力および剪断力を計測した。測定は6条件で行い,リクライニング0°ティルト0°(r0t0条件),リクライニング10(°r10条件),リクライニング20(°r20条件),リクライニング30(°r30条件),ティルト10(°t10条件),ティルト20(°t20条件)とした。各測定時間は5分間とした。圧迫力において,r0 t0条件に対してr10条件,r20条件,r30条件,t20条件は有意な低下,t20条件に対してr20条件,r30条件は有意な低下を認めた。剪断力において,r0t0条件に対してr10条件,r20条件,r30条件は前方剪断力の有意な増加,t10条件,t20条件は前方剪断力の有意な低下,t10条件に対してt20条件は後方剪断力の有意な増加を認めた(p<0.05)。車椅子座位において圧迫力軽減にリクライニング,剪断力軽減にティルト10°の介入の有効性が示唆された。
著者
幸田 仁志 甲斐 義浩 来田 宣幸 松井 知之 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 宮崎 哲哉 木田 圭重 森原 徹
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.127-131, 2018-10-16 (Released:2018-10-19)
参考文献数
25

〔目的〕投球肩・肘障害を有する高校野球投手の特徴を,関節可動域や筋力の非投球側差より分析した。〔方法〕京都府下の野球検診に参加した高校野球投手76名を対象とした。測定項目は,投球肩・肘障害の判定,関節可動域および筋力とした。関節可動域および筋力は両側に対して実施し,投球側から非投球側の値を減算することで非投球側差を算出した。統計解析には,投球肩・肘障害ごとに,対応のないt 検定を用いて陽性群と陰性群の関節可動域および筋力の非投球側差を比較した。有意水準は5%とした。〔結果〕投球肩障害では,陽性群の肩関節内旋可動域の非投球側差は陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。投球肘障害では,陽性群の肩関節外旋可動域の非投球側差は,陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。〔結論〕肩関節外旋可動域や内旋可動域の非投球側差による分析は,野球選手の機能低下や障害予測を判別する一助となる可能性がある。
著者
権野 めぐみ 西尾 真樹 来田 宣幸 野村 照夫 松井 知之 東 善一 平本 真知子 橋本 留緒 幸田 仁志 渡邊 裕也 甲斐 義浩 森原 徹
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.101-106, 2023-02-28 (Released:2023-03-02)
参考文献数
34

本研究では,下腿・足部スポ-ツ障害の有無とジャンプ前後の腓腹筋筋硬度の関係を検討することを目的とした。対象はジュニアアスリート43名であった。メディカルチェックでは,下腿・足部障害の有無を評価した。筋硬度測定では,20秒間片足8の字ジャンプをおこなわせ,ジャンプ前後の腓腹筋筋硬度測定を実施した。ジャンプ前後を被験者内要因,障害の有無を被験者間要因とした2要因分散分析をおこなった結果,有意な交互作用がみられた(F=5.586, p=.023)。単純主効果については,ジャンプ前後とも陽性者の筋硬度が有意に高く,陽性者,陰性者ともにジャンプ後の筋硬度が有意に高値であった。陽性者は陰性者と比べ,ジャンプ前後の筋硬度差が有意に大きかった。下腿・足部障害と腓腹筋筋硬度との関係を示すことができ,ジャンプ動作中の身体の使い方がジャンプ直後の筋硬度の上昇量および障害の有無に関係することが示唆された。
著者
廻角 侑弥 久保 峰鳴 幸田 仁志 福本 貴彦 今北 英高 藤井 唯誌 稲垣 有佐 田中 康仁
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.61-65, 2020-07-22 (Released:2020-08-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1

[目的]人工膝関節全置換術後患者の杖歩行が自立するまでの日数(歩行自立日数)に影響を及ぼす要因を術前項目より検討した。[対象]片側の人工膝関節全置換術を施行した99名とした。[方法]測定項目は歩行自立日数,自己効力感,痛みの破局的思考,安静時痛,歩行時痛,膝関節屈曲可動域および伸展可動域,等尺性膝伸展筋力,歩行速度とした。統計解析はピアソンの相関係数を用いて歩行自立日数との関係性を分析し,また歩行自立日数を目的変数,他項目を説明変数とした重回帰分析を行った。[結果]歩行自立日数は,自己効力感(r=-0.40),痛みの破局的思考(r=0.27),等尺性膝伸展筋力(r =-0.24),歩行速度(r=-0.25)との間に有意な相関関係を認めた。重回帰分析の結果,歩行自立日数に影響を及ぼす要因として自己効力感のみが抽出された。[結語]人工膝関節全置換術後の杖歩行の自立には筋力や歩行速度だけでなく,自己効力感が影響すると示唆された。
著者
幸田 仁志 森原 徹 甲斐 義浩 来田 宣幸 松井 知之 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 宮崎 哲哉 木田 圭重
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.127-131, 2018

<p>〔目的〕投球肩・肘障害を有する高校野球投手の特徴を,関節可動域や筋力の非投球側差より分析した。〔方法〕京都府下の野球検診に参加した高校野球投手76名を対象とした。測定項目は,投球肩・肘障害の判定,関節可動域および筋力とした。関節可動域および筋力は両側に対して実施し,投球側から非投球側の値を減算することで非投球側差を算出した。統計解析には,投球肩・肘障害ごとに,対応のないt 検定を用いて陽性群と陰性群の関節可動域および筋力の非投球側差を比較した。有意水準は5%とした。〔結果〕投球肩障害では,陽性群の肩関節内旋可動域の非投球側差は陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。投球肘障害では,陽性群の肩関節外旋可動域の非投球側差は,陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。〔結論〕肩関節外旋可動域や内旋可動域の非投球側差による分析は,野球選手の機能低下や障害予測を判別する一助となる可能性がある。</p>
著者
福島 秀晃 森原 徹 三浦 雄一郎 甲斐 義浩 幸田 仁志 古川 龍平 竹島 稔 木田 圭重
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.776-780, 2019

腱板広範囲断裂(Massive Rotator Cuff Tears: MRCT)における上肢自動挙上可能例と不能例の三角筋・肩甲帯周囲筋群の筋活動を比較検討した.対象は健常者12名12肩(健常群),MRCT36名を上肢自動挙上可能な21名25肩(挙上可能群)と挙上不能な15名16肩(挙上不能群)とした.被験筋は三角筋前部・中部・後部線維,僧帽筋上部・中部・下部線維,前鋸筋とした.測定課題は肩関節屈曲0&deg;,30&deg;位を各5秒間保持し,分析は0-30&deg;間のR-muscle値を算出した.<BR> 三角筋各線維のR-muscle値は,挙上可能群と挙上不能群間において有意差を認めなかった.僧帽筋上部線維のR-muscle値は,健常群と比較して挙上不能群で有意に高値を示した(p < 0.05).また僧帽筋中部線維のR-muscle値は,挙上可能群と比較して挙上不能群で有意に高値を示した(p < 0.01).<BR> MRCTにおける三角筋各線維の筋活動は,上肢自動挙上の可否に影響しないことが示された.一方,僧帽筋中部線維の筋活動特性がMRCTにおける上肢自動挙上の可否に影響する可能性が示された.
著者
幸田 仁志 甲斐 義浩 来田 宣幸 山田 悠司 三浦 雄一郎 福島 秀晃 竹島 稔 森原 徹
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.548-551, 2019 (Released:2019-09-18)
参考文献数
13

地域在住高齢者を対象に,腱板断裂,肩痛の自覚症状,他覚症状のそれぞれの有無により健康関連QOLを比較検討した.地域在住高齢者363名を対象とした.測定項目は,超音波診断による腱板断裂,アンケートによる肩痛の自覚症状,impingement signによる他覚症状の有無,SF-8の下位尺度およびサマリースコアとした.統計解析はMann-Whitney の U 検定を用い,それぞれの陽性群と陰性群で健康関連項目を比較した.肩痛の自覚症状の陽性群は,身体機能,日常役割機能(身体),体の痛み,全体的健康感,活力,身体的健康感が有意に低値を示した.他覚症状の陽性群は,身体機能,体の痛み,全体的健康感,活力,身体的健康感が有意に低値を示した.腱板断裂の有無では,いずれの項目にも有意差は認められなかった.地域在住高齢者の健康関連QOLには,腱板断裂の有無は直接的に関与せず,肩痛の自覚症状や他覚症状によって低下することが示唆された.
著者
甲斐 義浩 幸田 仁志 山田 悠司 三浦 雄一郎 福島 秀晃 竹島 稔 来田 宣幸 森原 徹
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.411-414, 2019 (Released:2019-09-18)
参考文献数
12

本研究では,肩関節の総合的な柔軟性を得点化できる肩複合柔軟性テストを考案し,そのテスト法の信頼性と妥当性について検討した.対象は,健常若年者43名,健常高齢者252名,肩病変を有する高齢者111名とした.肩複合柔軟性テストは,外転,内転,外旋,内旋,複合テストの5項目で構成される.各テストには,4段階(0, 1, 2, 3)の判定基準を設定し,5項目の合計得点を0~15点で算出した.分析の結果,本テストの判定一致度(k係数:0.81-1.00)および合計得点(ICC:0.91)ともに,優秀な検者間信頼性が確認された.また,合計得点と肩甲上腕関節可動域との間に有意な正相関が認められた.対象者の合計得点は,健常若年者:12.5 ± 1.7点,健常肩高齢者:10.4 ± 2.5点,病変肩高齢者:8.7 ± 2.8点であり,病変肩群の得点は他の2群と比べて有意に低かった(p < 0.01).これらの知見より,肩関節の総合的な柔軟性を得点化できる尺度として,本法の信頼性と妥当性が示された.
著者
松井 知之 幸田 仁志 甲斐 義浩 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 盛房 周平 森原 徹
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.219-221, 2018 (Released:2019-07-25)
参考文献数
13

背景:円背などの不良姿勢では,肩甲骨が偏位し,投球動作での肘下がりなど不良動作を来たす恐れがある.本研究では,中高生野球選手における肘関節痛と姿勢との関係を調査したので報告する. 対象・方法:中学生60例,高校生108例を対象に,スパイナルマウスを用いて,両上肢下垂・最大挙上における胸椎後弯角および腰椎前弯角,その変化量を測定した.理学所見で陽性と判断した選手を所見陽性群とし,対応のないt検定を用いて所見陽性群の特徴を検討した. 結果:中学生では,下垂時での腰椎前弯角が陽性群において有意に高値であった.高校生では,下垂時と挙上時の胸椎後弯角変化量が陽性群において有意に低値を示した.その他においては,有意差を認めなかった. 考察:不良姿勢では肘関節障害をきたす恐れがあることが示唆された.今後症例数を増やし,姿勢改善が障害予防につながるか前向きに検討する必要があると考えた.
著者
平本 真知子 森原 徹 松井 知之 東 善一 瀬尾 和弥 幸田 仁志 甲斐 義浩 盛房 周平
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.216-218, 2018 (Released:2019-07-25)
参考文献数
12

投球障害の原因としてこれまでに体格や身体特性など様々な要因が検討されている.本研究では高校生野球投手を対象に,関節可動域と肘関節障害の関係および肩関節と股関節の関係について検討した.対象は京都府高等学校野球連盟に所属する選手164名とした.肩関節2nd外旋・内旋,3rd内旋,股関節屈曲・内旋・外旋・外転,頚部・体幹回旋の各角度を測定した.対応のないt検定を用い,肘関節障害の有無で各関節可動域を比較・検討した.肘関節障害の有無に関わらず,関節可動域に有意差をみとめなかった.投球障害の原因は多くの因子が関係し,関節可動域自体も様々な因子に影響を受けるため,今後は多因子での検討を進める必要があると考えた.
著者
幸田 仁志 甲斐 義浩 来田 宣幸 松井 知之 山田 悠司 森原 徹
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.143-146, 2019-10-15 (Released:2019-10-17)
参考文献数
15

〔目的〕本研究の目的は,高校生野球選手における上腕近位部周径と肩関節挙上筋力との関係性を検討することとした。〔方法〕硬式野球部に所属する高校生125名を対象とした。測定項目は,投球側の上腕近位部周径と肩関節挙上筋力,および投球肩障害の有無とした。統計解析には,ピアソンの相関係数を用いて,上腕近位位部周径と肩関節挙上筋力との関係性を,健常群と投球肩障害群のそれぞれで検討した。〔結果〕健常群では,上腕近位部周径と肩関節挙上筋力との間に有意な正の相関関係が認められた。一方,投球肩障害群では,上腕近位部周径と肩関節挙上筋力との間に有意な相関関係は認められなかった。〔結語〕上肢の筋力を積極的に強化している高校生野球選手においても,上腕近位部周径は肩関節挙上筋力を反映する指標となることが示された。また,肩関節に何等かの異常がある場合では,その関係が認められない可能性が示唆された。
著者
熊澤 浩一 幸田 仁志 坂東 峰鳴 山野 宏章 梅山 和也 粕渕 賢志 福本 貴彦 今北 英高
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0536, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】フォワードランジ(以下,FL)とは,片脚を前方へ踏み出し,踏み出した脚の膝と股関節を曲げることで,姿勢を変えて体重を前脚にかける運動である。FLによって下肢の筋力,柔軟性,バランスの総合的な評価とトレーニングを行うことができ,スポーツ選手から高齢者まで幅広く用いられる。臨床現場において,膝前十字靭帯損傷など下肢運動器疾患を有する人を対象にFLを行う際では,踏み出し時に加わる膝関節への負荷を考慮して,前後に脚を広げた状態を開始肢位として行う場合もある。しかしながら,FLに関する先行研究では踏み出しの有無による膝関節への負荷軽減効果については分析されていない。そこで,本研究の目的は,膝関節への機械的ストレスの指標とされる外部膝関節モーメントを用いて,FL時の踏み出しの有無が膝関節へ及ぼす影響を検討することとした。【方法】対象は,下肢に整形外科疾患の既往のない男性12名(年齢20.8±2.0歳,身長171.6±7.6cm,体重63.9±7.6kg)とした。測定には,三次元動作解析装置(Vicon社)と床反力計(AMTI社)を用いた。対象者は利き足(ボールを蹴る足)を前脚とした踏み出し有りと無しのFLを各3回ずつ実施した。その際,踏み出し及び前後開脚幅は棘果長の80%,足幅は上前腸骨間距離,前脚足尖方向は前方と規定した。踏み込みの速度を統一するためにメトロノームを用い,2秒で踏み込み,2秒で開始肢位に戻るよう指示した。また,FL時は可能な限り前脚に体重をかけ,前脚踵が床から離れない範囲で足尖方向に膝を屈曲させた。動作中の外部膝関節屈曲モーメントと外部膝関節内外反モーメントを体重で除して正規化し,3回計測した平均値のピーク値を解析対象とした。統計学的解析には,踏み出しの有無の違いによる各モーメントの差異について対応のあるt検定を用いた。なお,有意水準は5%とした。【結果】外部膝関節内外反モーメントは,全例内反モーメントを示した。踏み出し有りのFLでは,外部膝関節屈曲モーメント0.89±0.19Nm/kg,外部膝関節内反モーメント0.65±0.23Nm/kgであった。踏み出し無しのFLでは,外部膝関節屈曲モーメント0.75±0.19Nm/kg,外部膝関節内反モーメント0.65±0.13Nm/kgであった。踏み出し無しでのFLは踏み出し有りと比較して,外部膝関節屈曲モーメントが有意に減少しており(p<0.05),外部膝関節内反モーメントには有意な差がなかった(p=0.89)。【結論】踏み出し無しのFLは,踏み出し有りと比較して膝関節へ加わる外部膝関節屈曲モーメントを軽減できるが,外部膝関節内反モーメントは軽減されないことが示された。踏み出し有りのFLは,外部膝関節内反モーメントを増加させることなく,外部膝関節屈曲モーメントを加えることができる。臨床では,踏み出し無しのFLが一様に膝関節への機械的ストレスを軽減するものでは無いことを念頭におき,運動方法を選択する必要があろう。