著者
鈴木 一秀 筒井 廣明 三原 研一 牧内 大輔 西中 直也
出版者
Japan Shoulder Society
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.489-492, 2007

The purpose of this study was to clarify the condition of reattachment of the labrum to the glenoid rim after an arthroscopic Bankart procedure using suture anchors with an MR arthrography (MRA). We studied 48 cases ( 35 males and 13 females) after surgery with a recurrent anterior dislocation or subluxation. The patients ranged in age from 16 to 53 years old (average, 24.7). An MRA was performed at an average 11.8 months after the operation. In the MRA with an axial image and an oblique axial image in abduction and external rotation (ABER) position, we evaluated the invasion of contrast materials between the labrum and glenoid rim using the inferior 6 slice images of the glenoid rim. The 576 slices were categorized into 1 of 3 groups : good, fair, and poor. We used the JSS Shoulder Instability Score (Instability Score) for clinical evaluation. Axial images (total of slices : 288) revealed good (83.3%), fair (14.9%), and poor (1.7%). Oblique axial images in the ABER position (total of slices : 288) revealed good (77.43%), fair (19.8%), and poor (2.8%). The clinical results using the Instability Score had no significant differences between the group that had all good results in six slices and the group that had fair or poor results more than 1 slice in 6 slices of axial images and oblique axial image in the ABER position. The healing of IGHL-LC to the medial glenoid neck was recognized in 97-98% of the total slices. A non-union or re-avulsion of the labrum to articular cartilage of the glenoid were recognized in 15 to 20 % of the total slices, however the clinical results of arthroscopic Bankart repair were satisfactory.
著者
尾崎 尚代 千葉 慎一 嘉陽 拓 西中 直也 筒井 廣明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101619, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに】古くから諸家によって肩関節機能に関する研究がなされてきている。腱板機能訓練に関しては筒井・山口らの報告を契機に多くの訓練方法が用いられ、近年では肩甲骨の機能が注目され、肩関節求心位を得るための訓練方法が多々報告されている。しかし、肩関節の動的安定化機構である腱板を構成する各筋が肩関節求心位を保つための機能について報告しているものは渉猟した限りでは見つからない。今回、腱板断裂症例の腱板機能を調査し、肩関節求心位を保持する腱板機能について興味ある知見が得られたので報告する。【方法】2011年9月末までの2年間に当院整形外科を受診し、初診時に腱板断裂と診断された症例のうち、「Scapula-45撮影法」によるレントゲン像を撮影し、手術した症例35名(年齢60.8歳±12.7、男性19名・女性16名、罹患側 右22名・左13名)について、術前MRI所見および手術所見からA群(棘上筋単独断裂 23名)、B群(棘上筋+棘下筋断裂 5名)、C群(肩甲下筋を含む断裂 7名)の3群に分類した。 「Scapula-45撮影法」によるレントゲン像のうち肩甲骨面上45度挙上位無負荷像を用い、上腕骨外転角度、肩甲骨上方回旋角度、関節窩と上腕骨頭の適合性について、富士フィルム社製計測ソフトOP-A V2.0を用いて計測した。上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度は任意の垂線に対する上腕骨および関節窩の角度を計測し、関節窩と上腕骨頭の適合性は、関節窩上縁・下縁を結ぶ線を基準線として関節窩に対する上腕骨頭の位置関係を計測した値を腱板機能とした(正常範囲-1.11±2.1、大和ら1993)。統計学的処理は、Kruskal-Wallis検定、Mann-Whitney検定、χ²検定を用いて危険率5%にて行い、上腕骨外転角度、肩甲骨上方回旋角度、腱板機能について3群を比較検討し、さらに腱板機能については正常範囲を基に3群間で比較検討した。【説明と同意】当院整形外科受診時に医師が患者の同意を得て診療放射線技師によって撮影されたレントゲン像を用いた。なお、個人情報は各種法令に基づいた当院規定に準ずるものとした。【結果】測定平均値をA群、B群、C群の順で示す。上腕骨外転角度(度)は43.59±8.84、45.64±7.04、33.83±7.54、肩甲骨上方回旋角度(度)は10.17±13.46、0.96±5.02、24.87±22.92であり、上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度については3群間で有意差は認められなかった。腱板機能は-0.75±4.76、5.44±12.61、7.84±5.07であり、3群間で有意差は認められ(p=0.007)、なかでもC群はA群と比較して関節窩に対して骨頭の位置が上方に移動していた(p=0.0008)。腱板機能について正常範囲を基に各群間で比較した結果、A群では正常範囲に入るものが23名中10名(43.5%)であり、関節窩に対して骨頭が上方に移動しているもの、下方に移動しているものがそれぞれ26.1%、30.4%あったが、B群、C群では正常範囲に入るものが0%、14.3%であった。B群は骨頭の上方移動および下方移動を呈するものが半数ずつであったが、C群では7名中6名(85.7%)が骨頭の上方移動を呈しており、有意差が認められた(p=0.03)。【考察】腱板断裂の指標として用いられる肩峰骨頭間距離は下垂位前後像で計測し、その狭小化を認める症例は腱板断裂の疑いがあるとされているが、今回用いた機能的撮影法は肩甲骨面上45度拳上時における肩甲骨と上腕骨の位置関係を調査している。 当院では、肩関節疾患患者に対し理学療法実施時に疼痛誘発テストとして肩甲骨面上45度挙上位での徒手抵抗テストを行ない、理学療法プログラム立案の一助としているが、このテストと同一の撮影肢位であるレントゲン像を用い、腱板断裂症例の腱板機能を断裂腱によって分類して調査することによって肩関節の求心位に作用する筋が明らかになると考えた。その結果、棘上筋の単独断裂では約半数は正常範囲にあり、残りの半数および棘下筋を含む断裂では関節窩に対して上腕骨頭が上方あるいは下方へと移動するが、肩甲下筋を含む断裂では関節窩に対して上腕骨頭の上方移動が認められたことから、肩甲下筋の機能不全が肩関節求心位に大きく影響することが示唆された。また、上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度は各群間で差がなかったことから、腱板機能不全を呈する症例は上腕骨を空間で保持するために肩甲骨が様々な反応を示すことが推測でき、前回報告した結果を裏付けするものと考える。 臨床上、肩甲下筋を選択的に収縮させることによって肩関節可動域が改善する症例を経験するが、肩甲帯の土台である肩甲骨の機能はもちろんのこと、腱板機能不全に対し肩関節求心位を確保するために選択する理学療法プログラムは肩甲下筋を考慮する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】今回の結果から肩関節疾患症例に対しておこなわれる腱板機能に関する理学療法プログラム立案を再考する必要性が示唆された。
著者
井上 駿也 髙橋 裕司 前田 卓哉 田村 将希 阿蘇 卓也 野口 悠 高橋 知之 古山 駿平 尾﨑 尚代 古屋 貫治 西中 直也
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.181-186, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
16

リバース型人工肩関節全置換術(RTSA)後の自動屈曲可動域,臨床スコアに対して術前三角筋体積が関係するかを検討した.術後2年以上経過観察可能であったRTSA患者23名を包含した.画像解析ソフト上で三角筋を前部(AD),中部(MD),後部(PD)に区分けし,各部位の指数を得た.術後自動屈曲可動域(6カ月,1年,1.5年,2年)とJOAスコア(2年)との相関の有無を,Spearmanの相関係数を用い検討した.術前AD体積指数と術後各時期での自動屈曲可動域との相関係数は,0.57(p < 0.01),0.73(p < 0.001),0.72(p < 0.001),0.70(p < 0,001)と全ての時期で有意な正の相関を認めた.術前PD体積指数と術後各時期での自動屈曲可動域との相関係数は,-0.34(p=0.11),-0.49(p < 0.05),-0.56(p < 0.01),-0.63(p < 0.01)と術後6カ月以外の時期で有意な負の相関を認めた.JOAスコアとの相関は術前AD体積指数のみ0.50(p < 0.05)と有意な正の相関を認めた.術前AD体積指数が高い症例ほど術後自動屈曲可動域およびJOAスコアは高くなる傾向にあり,術前PD体積指数が高い症例ほど術後自動屈曲可動域獲得に難渋する可能性が示唆された.
著者
尾崎 尚代 千葉 慎一 嘉陽 拓 西中 直也 筒井 廣明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101619, 2013

【はじめに】古くから諸家によって肩関節機能に関する研究がなされてきている。腱板機能訓練に関しては筒井・山口らの報告を契機に多くの訓練方法が用いられ、近年では肩甲骨の機能が注目され、肩関節求心位を得るための訓練方法が多々報告されている。しかし、肩関節の動的安定化機構である腱板を構成する各筋が肩関節求心位を保つための機能について報告しているものは渉猟した限りでは見つからない。今回、腱板断裂症例の腱板機能を調査し、肩関節求心位を保持する腱板機能について興味ある知見が得られたので報告する。【方法】2011年9月末までの2年間に当院整形外科を受診し、初診時に腱板断裂と診断された症例のうち、「Scapula-45撮影法」によるレントゲン像を撮影し、手術した症例35名(年齢60.8歳±12.7、男性19名・女性16名、罹患側 右22名・左13名)について、術前MRI所見および手術所見からA群(棘上筋単独断裂 23名)、B群(棘上筋+棘下筋断裂 5名)、C群(肩甲下筋を含む断裂 7名)の3群に分類した。 「Scapula-45撮影法」によるレントゲン像のうち肩甲骨面上45度挙上位無負荷像を用い、上腕骨外転角度、肩甲骨上方回旋角度、関節窩と上腕骨頭の適合性について、富士フィルム社製計測ソフトOP-A V2.0を用いて計測した。上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度は任意の垂線に対する上腕骨および関節窩の角度を計測し、関節窩と上腕骨頭の適合性は、関節窩上縁・下縁を結ぶ線を基準線として関節窩に対する上腕骨頭の位置関係を計測した値を腱板機能とした(正常範囲-1.11±2.1、大和ら1993)。統計学的処理は、Kruskal-Wallis検定、Mann-Whitney検定、χ²検定を用いて危険率5%にて行い、上腕骨外転角度、肩甲骨上方回旋角度、腱板機能について3群を比較検討し、さらに腱板機能については正常範囲を基に3群間で比較検討した。【説明と同意】当院整形外科受診時に医師が患者の同意を得て診療放射線技師によって撮影されたレントゲン像を用いた。なお、個人情報は各種法令に基づいた当院規定に準ずるものとした。【結果】測定平均値をA群、B群、C群の順で示す。上腕骨外転角度(度)は43.59±8.84、45.64±7.04、33.83±7.54、肩甲骨上方回旋角度(度)は10.17±13.46、0.96±5.02、24.87±22.92であり、上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度については3群間で有意差は認められなかった。腱板機能は-0.75±4.76、5.44±12.61、7.84±5.07であり、3群間で有意差は認められ(p=0.007)、なかでもC群はA群と比較して関節窩に対して骨頭の位置が上方に移動していた(p=0.0008)。腱板機能について正常範囲を基に各群間で比較した結果、A群では正常範囲に入るものが23名中10名(43.5%)であり、関節窩に対して骨頭が上方に移動しているもの、下方に移動しているものがそれぞれ26.1%、30.4%あったが、B群、C群では正常範囲に入るものが0%、14.3%であった。B群は骨頭の上方移動および下方移動を呈するものが半数ずつであったが、C群では7名中6名(85.7%)が骨頭の上方移動を呈しており、有意差が認められた(p=0.03)。【考察】腱板断裂の指標として用いられる肩峰骨頭間距離は下垂位前後像で計測し、その狭小化を認める症例は腱板断裂の疑いがあるとされているが、今回用いた機能的撮影法は肩甲骨面上45度拳上時における肩甲骨と上腕骨の位置関係を調査している。 当院では、肩関節疾患患者に対し理学療法実施時に疼痛誘発テストとして肩甲骨面上45度挙上位での徒手抵抗テストを行ない、理学療法プログラム立案の一助としているが、このテストと同一の撮影肢位であるレントゲン像を用い、腱板断裂症例の腱板機能を断裂腱によって分類して調査することによって肩関節の求心位に作用する筋が明らかになると考えた。その結果、棘上筋の単独断裂では約半数は正常範囲にあり、残りの半数および棘下筋を含む断裂では関節窩に対して上腕骨頭が上方あるいは下方へと移動するが、肩甲下筋を含む断裂では関節窩に対して上腕骨頭の上方移動が認められたことから、肩甲下筋の機能不全が肩関節求心位に大きく影響することが示唆された。また、上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度は各群間で差がなかったことから、腱板機能不全を呈する症例は上腕骨を空間で保持するために肩甲骨が様々な反応を示すことが推測でき、前回報告した結果を裏付けするものと考える。 臨床上、肩甲下筋を選択的に収縮させることによって肩関節可動域が改善する症例を経験するが、肩甲帯の土台である肩甲骨の機能はもちろんのこと、腱板機能不全に対し肩関節求心位を確保するために選択する理学療法プログラムは肩甲下筋を考慮する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】今回の結果から肩関節疾患症例に対しておこなわれる腱板機能に関する理学療法プログラム立案を再考する必要性が示唆された。
著者
西中 直也 近 良明 Banks Scott A 三原 研一 鈴木 一秀 大田 勝弘 牧内 大輔 松久 孝行 筒井 廣明 杉本 英治 蒲田 和芳
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.509-512, 2008 (Released:2008-11-21)
参考文献数
16

The glenoid bare spot commonly is observed in the adult shoulder. Carter et al. proposed that cartilage thickness was affected by normal homeostatic loads. The purpose of this study was to measure glenohumeral translation during shoulder abduction in order to explore development of the glenoid bare spot. 10 healthy shoulders (average 31.1 years old) were studied. 3D models of the scapula and humerus were created from CT scans. Motions were recorded with fluoroscopy during active abduction in neutral rotation for unloaded and a 3kg loaded trial. 3D motions were determined using model-based 3D-to-2D registration. Humeral translation was referenced in the superior/inferior direction to the assumed location of the bare spot (center of the circle described by the bony margins of the inferior glenoid). The bare spot location averaged 4.3mm inferior to the superior/inferior midpoint of the glenoid. Glenohumeral contact was 2.6 and 3.1mm superior to the bare spot for unloaded and loaded conditions with the arm at the side. The humeral head moved upward gradually with abduction to 4mm above the bare spot above 70° abduction (p>0.05, 0 vs 3kg). The glenoid surface stabilizes humeral head translation. Carter et al. suggested that cartilage grew thickest with high mechanical demands (compression and sliding) and thinner where demands were low. Humeral translation away from the bare spot with abduction suggests that lower loads were experienced when the humeral head was near the bare spot and larger loads were experienced with humeral translation away from the bare spot. These kinematic observations were consistent with Carter's framework for cartilage growth and provided a plausible explanation for the development of the glenoid bare spot.
著者
古屋 貫治 西中 直也 鈴木 昌 松久 孝行 小原 賢司 磯崎 雄一 大澤 一誉 田鹿 佑太朗 木村 亮介 筒井 廣明
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.593-597, 2019

<b>【目的】</b>プロ野球投手のメディカルチェック(MC)でみられる,MR画像のposterosuperior impingement(PSI)と身体機能 との関係は不明である.今回,PSIと当院で重視しているゼロポジション保持機能との関連性について検討した.<BR><b>【方法】</b>当院のMCで,2年連続でゼロポジション保持機能と投球側MR画像を調査しえたプロ野球投手8名を対象とした.ゼロポジション近似肢位での外旋筋力(Zero外旋),肘伸展筋力(Zeroリリース)を両側測定し,MR画像の経年変化でPSI不変群4例と増悪群4例を比較した.<BR><b>【結果】</b>両群ともZero外旋,Zeroリリース,Zero外旋/リリース比は左右差がなく,投球側のZero外旋/リリース比のみPSI増悪群で有意に高かった(p=0.0209).<BR><b>【結論】</b>PSIとZero外旋、Zeroリリースの筋力は相関がみられなかったが,投球側のZero外旋/リリース比には相関がみられた.画像でPSI所見がみられた場合は新たな障害発生のリスクとなる可能性があるため,注意深く経過を診ていく必要がある.
著者
阿蘇 卓也 田村 将希 千葉 慎一 鈴木 昌 西中 直也
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.169-173, 2019

目的:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)症例の投球側と非投球側におけるゼロポジション近似肢位での肩関節外旋筋力(Zero外旋筋力)及び肘関節伸展筋力(Zeroリリース筋力)を比較することを目的とした. 材料及び方法:OCDと診断された野球選手6名(年齢163.0cm,体重53.5kg,年齢13.3歳)を対象とした.Zero外旋筋力及びZeroリリース筋力はハンドヘルドダイナモメーターを使用し,立位にて肩関節ゼロポジション,肘関節90度屈曲位,前腕回内外中間位での等尺性肩関節外旋筋力及び肘関節伸展筋力を測定し,投球側と非投球側で比較した. 結果:Zeroリリース筋力のみ投球側が非投球側より低値を示した. 考察:投球時加速期以降の肘関節伸展位保持機能を評価するZeroリリース筋力の低下はOCD発症の一因になることが示唆された.