著者
宮崎 由樹 鎌谷 美希 須田 朋和 若杉 慶 松長 芳織 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.50, 2022 (Released:2022-11-24)

マスク着用は感染症拡大防止に有効だが,その着用で表情が読みとりづらくなる。こうしたマイナス面の報告は,成人被験者を対象とした実証研究の知見に依拠しており,学童期の子どもを対象とした知見は極めて少ない。本研究では,マスクなし,不織布マスク,あるいは透明マスクを着用した顔表情画像を小学生に提示し表情弁別を求めた。そして成人の既データと比較した。実験の結果,成人では,マスクなし顔に比べて,不織布マスク着用顔において「喜び」「無表情」「悲しみ」の弁別パフォーマンスの低下が認められた。対して小学生では,「嫌悪」「恐怖」「喜び」「無表情」「悲しみ」「驚き」とより多くの表情でその低下が認められた。なお,このような低下は,透明マスク着用顔では総じて認められなかった。本研究の結果は,不織布マスク着用による顔表情認知の妨害は小学生でより大きい可能性,その対処として透明マスクの活用可能性を示している。
著者
神原 歩 満石 寿 原田 祐規
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.7-8, 2022 (Released:2022-11-24)

コロナ禍になり,親しい人とオンライン上で時間を過ごす人が増えた。本研究は,親密な他者とオンライン上で会うことが,直接会うことと同様の身体的・心理的効果をもたらすのかを検討した。参加者は22組の友人ペアで,独り群(個室に1人),対面群(友人と同じ個室),オンライン群(zoomを介した画面越しに友人が居るが個室に1人)の3群に割り振られた。参加者は個室でストレス課題が与えられ,課題前,課題中,課題後の3時点の心理指標(肯定的感情,覚醒度)と身体指標(血圧,心拍)が測定された。その結果,課題後の身体指標に群間の差が認められ,オンライン群と対面群は,独り群に比べてストレス後の回復が早かった。一方,心理指標には群間の差は認められなかった。従って,親密な他者の存在の効果は,オンラインと対面の両方で認められることが判明した。そして,その効果は認知的プロセスを経ずに身体に直接影響を与えている可能性が示された。
著者
池田 慎之介
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2022 (Released:2022-11-24)

COVID-19の影響によりマスクを付ける機会が増加しているが,マスクを付けた表情からの感情推測の正確さの個人差についての検討はまだ不足している。本研究では,日本人(n = 123)を対象として,社交不安と社会的感受性がマスクを装着した表情からの感情認識の正確さに及ぼす影響について検討した。その結果,日本人においてはマスクを装着すると悲しみと恐れの感情が読み取りづらくなる一方で,喜び表情は影響を受けず,怒り表情の読み取りはむしろ正確になることが示された。また,マスクを付けていない表情からの感情推測が得意であると,マスクを付けた表情からも正確に感情を読み取ることができるが,そうした関係とは独立して,社会的感受性の高さがマスクを付けた表情からの感情推測の正確さを予測していた。本研究の結果から,マスクを付けた表情からの感情推測は文化によって異なる可能性,そして微妙な手がかりから他者の複雑な心的状態を推測できる人はマスクの影響を受けづらい可能性が示唆された。
著者
長 雄希 國部 雅大
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.84, 2022 (Released:2022-11-24)

創造性は一般的に, 現在行っている課題から注意が逸れて自発的な思考を行うマインド ワンダリング(以下 MW)と関連があることが明らかになっているが, スポーツ領域におけ る両者の関係性は未だ明らかにされていない。また, サッカーにおいて, スポーツに特化 した創造性はポジションや競技経験との関連が深いことが報告されているが, これらの要 因と MW の関係性は不明である。そのため, 本研究ではサッカー経験者における創造性, MW 傾向の相違, ポジション及び競技経験の各要因の関係性を検討することを目的として, サッカーの競技経験(経験年数:15.6±3.3 年)を有する大学院生 18 名を対象にアンケート 調査, 質問紙調査及び創造性テストを実施した。その結果, 一般的な創造性と MW 傾向や 競技レベル, ポジションとの関係性は示されなかったが, ポジションの違いによって MW 傾向が異なる可能性は示唆された。本検討より, サッカーにおける各要因の関係性を検討 するには, サッカーに特化した創造性の課題や MW の尺度を利用することが望ましいと推 察された。