著者
鬼頭 陽菜 北村 涼乃 中村 凜 村山 雄飛 元木 康介 井関 紗代
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第21回大会
巻号頁・発行日
pp.92, 2023 (Released:2023-10-18)

近年,モバイル決済が急速に普及しているが,現金に比べて支払いの実感が乏しいと指摘されている。モバイル決済では,「○○で支払います」とブランドネームを口にしたり,ブランドネーム(e.g., PayPay,QUICPay)が決済音に使われていたりすることに着目し,本研究では,ブランドネームの音象徴が支払いの痛みに及ぼす影響について検討することを目的とした。結果として,共鳴音(m, n, l)を含むブランドネームは,有声閉鎖音(b, d, g)を含むブランドネームに比べて,”やさしい”と知覚されるだけでなく,支払いの痛みを和らげ,金銭的損失の知覚を低減することが明らかになった。これらのことから,企業は共鳴音を含むブランドネームを採用することで,モバイル決済の利用を促すことができると考えられる。一方,消費者は,共鳴音を含むブランドネームのモバイル決済では,特に浪費に注意する必要があると示唆される。
著者
有馬 多久充 梁 葉飛 森田 愛子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第21回大会
巻号頁・発行日
pp.83, 2023 (Released:2023-10-18)

内声化は頭の中で文章を音読する活動のことであり,内声化中に聞こえる声の種類や鮮明さには個人差がある。本研究では,大学生を対象に挿絵の有無 (研究1) や会話主の種類 (研究2) が,内声化の具象性にどのような影響を与えるか検討を行った。研究1では,挿絵の有無を操作した文章の読解後に,研究2では,文章の会話主 (人間・人間以外) を操作した文章の読解後に,内声化量と内声化の具象性について評定を求めた。その結果,研究1では,挿絵なし条件では,登場人物に合わせた声での内声化や声の使い分けがやや行われにくかった。研究2では,人間以外が会話主である条件では,文章によって内声化時の声の種類数が変化する人が多かった。これらの結果から,個人の内声化のしかたは一貫しているわけではなく,聞こえている声の種類数は文章によって変化しており,会話主の種類といった文章の特性によって変化のしかたが異なることが明らかとなった。
著者
澤田 和輝 野村 理朗
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第21回大会
巻号頁・発行日
pp.9, 2023 (Released:2023-10-18)

大自然の絶景等の広大かつ既存のスキーマを超越する刺激に対して生じる「畏敬の念」と呼ばれる感情反応がある.畏敬の念−好奇心−創造性の関連において,これまでの研究は各心理特性の個人間変化に着目するあまり個人内変化については未検討であった.本研究では,20代を対象に2時点4ヶ月間隔で畏敬の念,好奇心,創造的自己を測定し,潜在変化モデルを用いることで各変数の個人内の変化量の関連を検討した(N = 257; 平均年齢26.10±3.17歳,女性183名).潜在変化モデルにより推定された各変数の変化量に対して,ブートストラップ法を用いて媒介分析を実施した結果,畏敬の念を感じる頻度が増加した個人ほど知的好奇心が増加し,転じて自己を創造的に感じる程度が増加することが明らかになった(間接効果b = 0.18, 95%CI [0.09, 0.29]).本研究の結果は,個人内変化の観点から畏敬の念が知的好奇心の向上を介して創造性を促進することを新たに示唆する.
著者
矢ノ倉 萌 渡辺 めぐみ
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第21回大会
巻号頁・発行日
pp.94, 2023 (Released:2023-10-18)

音楽テンポの知覚と心拍数や内受容感覚の精度の関係を実験で検討した。予備調査より基準刺激のテンポを86.50bpmとし,そのテンポを0.5倍から1.5倍に0.1倍ずつ変えた11種類の比較刺激を作成した。参加者には基準刺激と比較刺激の差を視覚的尺度で回答させ,主観的等価点(PSE)とテンポが実際に位置する基準点の差を得た。実験前後に心拍数測定と内受容感覚として心拍数の自覚回数の報告を行わせた。テンポ倍率を独立変数,PSEと基準点の差を従属変数として一要因分散分析を行うと,テンポが基準値に近い程その差は有意に小さかった。参加者を群分けし,独立変数に基準刺激と心拍数の差または内受容感覚の精度を加えた二要因分散分析を行うと,群間の差に前者では有意差がなく後者では有意傾向が見られた。テンポ倍率が0.7倍と0.8倍の時,内受容感覚が高精度な群の方がPSEと基準点の差は有意に小さく,内受容感覚の精度がテンポ知覚に関わることが示唆された。
著者
実吉 綾子 稲田 尚子 敷島 千鶴 赤林 英夫
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第21回大会
巻号頁・発行日
pp.84, 2023 (Released:2023-10-18)

幼児、児童を対象とし、スマートフォンやタブレット等を用いて語彙力、視覚的ワーキングメモリ、推論能力を測定するためのオンライン認知検査を開発した。語彙力は「絵画ごい発達検査」を参考に、4種類のイラストを提示し、音声で提示される言葉に合致するイラストを1つ選択させ、その正答数を測定した。視覚的ワーキングメモリは欠落ドット検出課題(Di Lollo,1977)を参考に、マトリクス内に果物のイラストを配置した二つの画像を1000ミリ秒の刺激間間隔で継時提示し、画像を統合した時に空白となるセルを選択させその正答数を測定した。推論能力は「レーブン色彩マトリクス検査」を参考に、標準図案の欠如部分に合致するものを6つの選択図案の中から1つ選択させその正答数を測定した。全国から無作為抽出された年中児から小学2年生1300人以上から取得したデータについて、成績の分布、課題間の相関、年齢との相関などを検証する。