著者
元木 康介 石川 伸一 朴 宰佑
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20402, (Released:2021-01-31)
参考文献数
108
被引用文献数
2

The potential use of insects as a novel food resource has recently attracted a great deal of attention because of their environmental and nutritional benefits. Nevertheless, despite growing interest in the use of insects as food, residents of economically developed countries tend not to accept insect-based foods. This study reviewed earlier reports of the literature of consumer acceptance of insect-based foods. Based on the literatures, this review established a theoretical model of acceptance of insect-based foods. Sensory attributes (e.g., taste, smell, appearance) and cognitive attributes (e.g., nutritional value, environmental benefits), and individual traits (e.g., gender, food neophobia, sensation seeking) might influence the acceptance of insect-based foods via emotional processing (e.g., disgust, anxiety, excitement, curiosity). The practical implications for industries and future prospects are discussed.
著者
元木 康介 米満 文哉 有賀 敦紀
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1_2, pp.1_2_1-1_2_22, 2021-03-31 (Released:2022-01-22)
参考文献数
82
被引用文献数
2

科学は再現性の危機に瀕している。心理学を中心として、研究結果が再現できないことが続々と報告されている。また、近年の有力誌に掲載された消費者行動研究の結果が再現できないことがわかってきた。この再現性の危機には、p-hackingやHARKingなど疑わしい研究実践(questionable research practices: QRPs)がかかわっている可能性がある。実際、消費者行動研究においてQRPsが研究慣習として存在するという指摘がなされている。本稿では、消費者行動研究の立場から、再現性問題とそれにまつわる諸問題について論じる。まず、消費者行動研究においてこれまでに暗黙的な研究慣習とされてきたことが、QRPsを内包するものであることを指摘する。次に、消費者行動研究で再現性問題やこれまでの研究実践がどのようにとらえられてきたかを論じる。最後に、QRPsの対処策として、消費者行動研究に求められる研究実践を提案する。事前登録制度(pre-registration)を中心として、統計値・実験マテリアルの報告やオープンデータなど、信頼できる研究実践の取り組みを紹介する。
著者
元木 康介 石川 伸一 朴 宰佑
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.52-67, 2021 (Released:2021-04-25)
参考文献数
108
被引用文献数
2

The potential use of insects as a novel food resource has recently attracted a great deal of attention because of their environmental and nutritional benefits. Nevertheless, despite growing interest in the use of insects as food, residents of economically developed countries tend not to accept insect-based foods. This study reviewed earlier reports of the literature of consumer acceptance of insect-based foods. Based on the literatures, this review established a theoretical model of acceptance of insect-based foods. Sensory attributes (e.g., taste, smell, appearance) and cognitive attributes (e.g., nutritional value, environmental benefits), and individual traits (e.g., gender, food neophobia, sensation seeking) might influence the acceptance of insect-based foods via emotional processing (e.g., disgust, anxiety, excitement, curiosity). The practical implications for industries and future prospects are discussed.
著者
齊藤 俊樹 元木 康介 高野 裕治
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.1, 2022 (Released:2022-04-20)

コロナウィルス感染対策により、マスク着用が世界的に普及している。これまで、マスクをした顔に対する感情認知は困難であることが示されているが、この影響が文化(国)によって異なるのかは明らかではない。本研究では、感情表出・認識に重要となる情報が文化によって異なるという表情認知の文化学習理論に基づき、マスクが感情認知に与える影響の文化差を検討した。日本人209名、アメリカ人203名の参加者は顔画像を見て、その顔の感情状態(感情カテゴリーと感情の強度)を判断した。顔画像は、表情が6種類(笑顔、怒り、悲しみ、恐怖、嫌悪、真顔)、マスク着用の有無が2種類の計12種類であった。その結果、笑顔表情の認知がマスクによって阻害され、その影響はアメリカ人でより大きいことが分かった。この結果は、表情認知の文化学習理論を支持するとともに、マスクによる表情認知への影響が感情や文化によって異なることを示すと考えられる。
著者
岡部 沙麗 元木 康介
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
pp.202410.005, (Released:2023-12-20)
参考文献数
44

近年、社会的・学術的に性的マイノリティに関する研究の重要性は増している。性的マイノリティとは、性的指向や性自認におけるマイノリティを指し、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィアなどが含まれる。消費者行動研究においても、多様性・公平性・包括性の観点から、性的マイノリティは注目を集めている。本稿は、性的マイノリティに関する近年の消費者行動研究を体系的にレビューすることで、最新研究動向と今後の方向性を示す。既存研究は、性的マイノリティ消費者に関する研究、性的マイノリティが登場するマーケティング刺激に関する研究に大別できる。前者の研究群では、異性愛者と比較した性的マイノリティ特有の消費者行動が扱われている。後者の研究群では、広告を主な題材として、異性愛と比較した同性愛イメージの影響を検討している。今後の研究展望として、多様な性的マイノリティ・異性愛消費者と性的マイノリティ消費者の相互作用・広告以外のマーケティング活動における性的マイノリティ・中長期的な影響等が挙げられる。
著者
鬼頭 陽菜 北村 涼乃 中村 凜 村山 雄飛 元木 康介 井関 紗代
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第21回大会
巻号頁・発行日
pp.92, 2023 (Released:2023-10-18)

近年,モバイル決済が急速に普及しているが,現金に比べて支払いの実感が乏しいと指摘されている。モバイル決済では,「○○で支払います」とブランドネームを口にしたり,ブランドネーム(e.g., PayPay,QUICPay)が決済音に使われていたりすることに着目し,本研究では,ブランドネームの音象徴が支払いの痛みに及ぼす影響について検討することを目的とした。結果として,共鳴音(m, n, l)を含むブランドネームは,有声閉鎖音(b, d, g)を含むブランドネームに比べて,”やさしい”と知覚されるだけでなく,支払いの痛みを和らげ,金銭的損失の知覚を低減することが明らかになった。これらのことから,企業は共鳴音を含むブランドネームを採用することで,モバイル決済の利用を促すことができると考えられる。一方,消費者は,共鳴音を含むブランドネームのモバイル決済では,特に浪費に注意する必要があると示唆される。
著者
朴 宰佑 外川 拓 元木 康介
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.6-16, 2023-01-10 (Released:2023-01-10)
参考文献数
46

本稿ではマーケティング関連の感覚要因が消費者の健康的な食行動に与える影響に焦点を当て,2000年以降のマーケティングのトップジャーナルに掲載された関連研究をレビューした。その結果,感覚要因と健康的な食行動の関連性は,消費者行動,広告,公共政策,小売など,マーケティングに関連する様々な分野において関心が寄せられていることが確認できた。また,レビューを通じて,健康的な食行動に関するセンサリーナッジ研究の課題として,視覚以外の要因,複数の感覚要因の関連性および文化差の検討,現実の食行動に即した研究の推進,健康的な食生活の実践と感覚マーケティングの関連性に関するより包括的かつ長期的な検証の必要性の5つを提示した。