著者
水田 晴野
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.37, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】減塩食などおいしさに満足できない食をおいしくすることは、摂食量を増加させ、低栄養を防止するうえで重要である。シジミの味噌汁はコクがありおいしいことから、シジミに多く含まれるオルニチンを減塩味噌汁に添加することにより嗜好性が高まる可能性を動物の行動実験により検討した。【方法】C57BL/6雄性マウスを用い、減塩味噌汁とオルニチン添加減塩味噌汁をそれぞれボトルに入れ、2ビン選択実験を行った。24時間ごとに左右のボトルを入れ換え48時間の摂取量を測定し嗜好度を求めた。水とオルニチン水溶液の2ビン選択実験も同様に行い、オルニチン単独の味の嗜好性を調べた。また、味噌汁の好ましい味を構成すると考えられる甘味、うま味、塩味のいずれにオルニチンは影響を及ぼすのかを調べるため、ショ糖、グルタミン酸ナトリウム(MSG)、食塩の混合溶液、単独溶液につきオルニチンを添加し、2ビン選択実験を行った。さらに、コクの受容体とされるカルシウム感知受容体のアンタゴニスト(NPS2143)を用い、嗜好性増強効果がコク発現によるものかを検討した。【結果】減塩味噌汁の2ビン選択実験において、マウスはオルニチン添加の方を有意に好んだ。水の2ビン選択実験ではオルニチン単独の嗜好性は認められなかった。甘味、うま味、塩味の混合溶液にオルニチンを添加すると、3種混合溶液とMSG単独溶液にオルニチンを添加したとき有意に嗜好性が増大し、MSGとショ糖、MSGと食塩の混合液についてもオルニチン添加により嗜好性は増大する傾向を示した。NPS2143の作用によりオルニチンの嗜好性増大効果は消失した。減塩味噌汁に添加されたオルニチンは、味細胞のコク受容体に結合することによりうま味を強め、おいしさ増強効果を生じるものと考えられる。
著者
湯浅 正洋 田川 夕映奈 冨永 美穂子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.61, 2017 (Released:2017-08-31)

【背景】アルギン酸ナトリウムとカルシウムのイオン架橋により生じる球状のゲルは分子キャビアと呼ばれ、欧米諸国では様々な料理に利用されている。一方、わが国では人工イクラが分子キャビアの具体例として挙げられるが、和食へはほとんど応用されていない。そこで演者らは、分子キャビアの和食への応用を目的とし、和風の調味料の中でも汎用性の高い「めんつゆ」を用いた「めんつゆキャビア」を開発した。本研究では、めんつゆキャビアの実用化を目指し、キャビアの物性に及ぼす影響とその嗜好性を明らかにした。【方法】めんつゆは塩分濃度の異なる4種類の市販品を用いた。各めんつゆに対し約1%(w/w)重量のアルギン酸ナトリウムを溶解し、約5%(w/w)乳酸カルシウム溶液に滴下することで、めんつゆキャビアを調製した。調製後の時間経過がキャビアに及ぼす影響を明らかにするために、調製後60分までの破断解析を行った。また、調製後の時間経過の異なるキャビアを用いて、女子大学生30名による官能検査を行い、嗜好性を評価した。【結果・考察】4種類のめんつゆキャビアの破断荷重は、どれも調製後の時間経過に伴い高値を示した。時間経過に関わらず、塩分濃度の低いキャビアの方が破断荷重が高値を示した。そこで、用いためんつゆと同程度の濃度の食塩水キャビアの破断解析を行ったところ、食塩濃度が低い方が破断荷重が高値を示した。このように、キャビアの硬さには調製後の時間経過と塩分濃度が影響することが明らかになった。一方、調製後の時間経過の異なるめんつゆキャビア0、15、30分の嗜好性を評価したところ、「食感の好み」および「総合評価」は調製後の時間が短い方がより好まれた。以上より、めんつゆキャビアを料理として供する場合、調整後15分以内のものが適していることが示唆された。
著者
新澤 祥惠 川村 昭子 中村 喜代美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.226, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】石川県におけるおやつの特徴を検討した。【方法】平成25~27年に実施した「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の聞き書き調査(穴水町、金沢市、野々市町、白山市、小松市、白峰村)及び文献等により検討した。【結果】1)石川県全域で出現するものは「かき餅(欠餅とも書く)」がある。1月下旬に寒の餅をつき、赤、青の色をつけたり、黒豆、切り昆布、胡麻など混ぜてトボ型に入れ、薄く切ったものを縄で結んで屋内で乾燥するものである。これを1年中焼いて食したが、細かく切って煎り、砂糖や黒砂糖をまぶした「はぜ」としても利用した。「かき餅」は農山村では自家製であるが、都市部では菓子屋で搗いたもちを切ってもらい、自宅で干した。 2)「かき餅」以外にも餅類は多く、正月の終わりには、お鏡をおろして「善哉」とし、春と秋の彼岸、報恩講にはご飯を半殺し(半分だけつぶす)にした「おはぎ」を作った。また、春にはよもぎ団子、初夏になるとササゲを塩味にゆでてもちにまぶした「ささげ餅」が、また、笹のあるところでは笹の葉に包んだ笹餅が作られた。この他、春や秋に訪れるパクーン業者(パクーンとは米を煎り砂糖をまぶしたもの)に煎り米を作ってもらった。 3)夏は、スイカ、まくわ瓜、みの瓜を、秋は柿、ぐみ、栗、イチジクなどの果実がよく食べられた。渋柿は干してさわし柿とした。 4)以上の他に、大麦粉に砂糖を入れて水で掻いた「おちらし」、さつまいもを蒸して細く切り乾燥させた「干しいも」、さつまいもやじゃが芋(砂糖を加える)をつぶした「茶きん絞り」やテングサから作ったところてん、ザラメから作ったカラメル焼きなどが出現した。 5)白峰村では炒り豆や豆板、びやゆり・じゃが芋のデンプンに砂糖を入れ湯でかいた葛湯、かまし粉を番茶で掻いて砂糖を入れたおちらしや、栃の実の粉で作ったとち餅などこの地域独特のものがみられた。
著者
寺本 あい 大和 裕子 古海 圭菜
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.113, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】スチームコンベクションオーブン(以下スチコン)は焼き、スチーム、その複合機能など多機能を持ち合わせている。この機能を適切に活用すれば大量調理において提供できる料理の幅が広がる。そこで、準備から廃油の処理に至るまで作業負担や環境負荷が大きい揚げ物について、スチコンを用いた調理の最適条件を検討することにした。【方法】本研究では、鶏のから揚げを題材とした。衣については粉の種類・配合、粉のまぶし方、油の付加方法、加熱条件については加熱モード、加熱時間について比較を行い、揚げ調理に近い仕上がりになる調理方法を検討した。完成品の評価は、こども園にて給食として実際に提供し、子供達の喫食状況の観察と、職員を対象とした嗜好調査を行った。【結果】数種の粉を配合し、揚げ過程での吸油を下処理段階で油にくぐらせ均一にむらなく付加し、スチコンの複数のモードを組み合わせることで、肉のジューシーさを保ちながら揚げ物のカリッとした食感に近付け、粉っぽい部分が残ることがなく均一な仕上がりとなった。具体的な最適調理条件は、以下のとおりである。粉は薄力粉とコーンスターチ、粉全量の5%の重曹用いた。粉のまぶし方は、鶏肉に薄力粉をまぶした後、重曹を混ぜたコーンスターチを加えまぶした。油の付加は、バットに油を入れ粉の付いた鶏肉をくぐらせて、焼き網の上に並べ余分な油を落とした。加熱条件は、浅型パンの上に鶏肉を並べた焼き網をのせ、熱風モード220℃で8分加熱後コンビモード(スチーム80%)220℃で2分加熱した。また、こども園における完成品の嗜好調査や喫食状況の観察より、鶏の唐揚げとして提供できる品質であると考えられる。
著者
工藤 美奈子 小泉 昌子 峯木 眞知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.156, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】皮蛋は家鴨卵の加工品で、アルカリによるタンパク質の凝固性を利用した中国独特の食品である。日本では家鴨卵の入手ができないので、鶏卵を使用して加工した鶏卵皮蛋を考えた。それが普及すれば、安全性が高く安心して食することができる上、食用の機会が広まると考える。そこで、本研究では、国内で製造された鶏卵を用いた無鉛皮蛋の経時的変化を主に物性面や調理特性より台湾産皮蛋と比較した。【方法】白色レグホーン種鶏が産んだ鶏卵(福岡県産)を加工した鶏卵皮蛋を㈱丸紅エッグより入手した。25℃下で入手後58日間保管した。外観の観察、卵殻・卵白・卵黄の重量とその構成比、pH、色度、塩分、水分含有率、破断測定およびにおい識別装置によるにおいの測定を行った。【結果】鶏卵皮蛋100g あたりのエネルギーは151kcal、たんぱく質12.6g、脂質11.1gで、台湾産皮蛋の成分値と大差はなかった。熟成の様子を観察すると、入手28日目で卵黄が軟らかい溏心タイプの様になった。鶏卵皮蛋の重量割合を、台湾産皮蛋と比較すると、卵白の構成比が高く卵黄の構成比が低かった。卵白の破断エネルギー(×103J/m3)は、1日目46.70、28日目83.23、58日目65.04で、経過日数とともにかたくなる傾向が見られた。鶏卵皮蛋の卵白は台湾の市販皮蛋と比較すると、軟らかく弾力が劣ると考える。鶏卵皮蛋の卵黄のテクスチャーは台湾の市販皮蛋よりかたさ応力と付着性が低かった。鶏卵皮蛋の卵白および卵黄のにおいの強さを、臭気指数相当値でみると台湾市販品と有意差はなく、においの質の類似度では、卵黄の炭化水素系に違いがあった。鶏卵皮蛋の熟成期間は入手後28日と考える。
著者
塚原 知里 加古 さおり 中須 慧 依田 香子 新田 浩朗 奥西 智哉
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.4, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】炊飯をするのに大事な要素の一つに火加減がある。家庭用炊飯器においては、おいしく炊き上げるために常圧より高い沸点を実現できる圧力機能を付与したものが市場に供給されているが、そのほとんどは1.2気圧以下の微圧であり、家庭用炊飯器の高圧炊飯における炊飯米特性の学術的知見はほとんどない。今回、家庭用炊飯器では比較的高圧である1.5気圧程度での炊飯を行い、できた米飯の特徴を明らかにした。【方法】家庭用炊飯器(パナソニック製SR-SPX106)の調圧弁を調整することにより微圧(1.2気圧)あるいは高圧(1.5気圧)炊飯による米飯を得た。まず、32人のパネリストにより2つの試料を比較して7段階で評価した。その後、米飯をホモジナイズし、50%エタノール抽出物を得、遊離アミノ酸と、米飯表層および米飯全体の遊離糖含量を求めた。それぞれ、アミノ酸分析機(日本電子JLC-500/V2)、フェノール硫酸法、イオンクロマトグラフ(Dionex ICS-3000)で測定を行った。常温まで放冷した米飯のテンシプレッサーによる硬さ粘り測定を行った。米飯を粉砕後乾燥した試料を用いてRVA測定を行った。【結果】官能評価によると、高圧炊飯で得られた米飯は有意に硬く、粘りも大きな数値を示す傾向であった。味に関しては差が見られなかったが、米飯粒全体のアミノ酸量は多かった。物性評価では米飯の硬さと粘りは高圧炊飯で有意に増加していた。RVAでは高圧炊飯米飯はブレークダウンを示さず、微圧炊飯とはまったく異なる挙動を示した。これらの結果から高圧炊飯では、炊飯中に結晶構造の崩壊がより進み、かなり特徴的な米飯となることが明らかとなった。
著者
大石 紗佑里 若見 俊介 加藤 史朋 青山 忍 濱千代 善規
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.41, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】マヨネーズを肉(冷しゃぶ)の下ごしらえに使用することで、食感及び食味を改善する効果があることはすでに報告した。今回は、調理によって硬くパサつきやすい鶏ムネ肉を、マヨネーズでもみ込んだ場合の食感(やわらかさ)及び食味改良効果を明らかにすることを目的とし、検証を行った。 【方法】鶏ムネ肉にマヨネーズを加えてもみ込み、一定時間放置した後、家庭用オーブンで焼成した。対照品は、マヨネーズの代わりに、マヨネーズに含まれるのと同じ量の食塩を加えた。評価は「硬さ」、「ジューシー感」、「しっとり感」、「おいしさ」の四項目に関する官能試験(一対比較試験)で行った。更に「硬さ」については、機器測定も行った。 【結果】官能試験において、試験品は対照品と比べ、やわらかい、ジューシー、しっとり、おいしいという結果が得られた(有意差あり)。また、機器測定における結果もこれを裏付けるものとなった。以上より、鶏ムネ肉にマヨネーズを加えてもみ込むことで、鶏ムネ肉の食感及び食味が改良されることが明らかとなった。
著者
田村 安里 木下 純 庄司 龍市
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.73, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】がん治療における副作用や、妊娠時のつわりなどで、食物のにおいに対して吐き気やむかつきを感じて極端に食欲が落ちてしまう場合がある。吐き気やむかつきの元となる食物は色々あるが、肉や魚もあげられる。肉や魚は良質なタンパク質に富む食材であり、病気治療中や妊娠時には積極的に摂ってもらいたい食材である。そこで、マヨネーズを用いた調理工夫を行って、吐き気やむかつきの元となるにおいを抑えておいしく食べられることを目的とし検討した。【方法】肉は、鶏むね肉を選択し、調理工夫として「鶏むね肉のカレーマヨ焼き」を調理した。作り方は、①鶏むね肉はひと口大のそぎ切りにし、混ぜ合わせたカレー粉、マヨネーズを加えて漬け込む。②フライパンに油をひいて熱し両面焼き、火が通ったら①の残りのソースを入れ、からめて焼く。魚はカジキマグロを選択し、調理工夫として「カジキマグロのマヨネーズ焼き」を調理した。作り方は、①カジキマグロは3cm幅に切り、軽く塩・こしょうをする。②パセリはみじん切りにし、パン粉、マヨネーズとともに混ぜ合わせる。③①の表面に②を塗り、オーブントースターで焼く。上記のメニューに対して各々マヨネーズ抜きを作り対照品として比較を行った。評価は、パネラーによる官能評価、およびSPME-GC-MSを用いたにおい成分分析を行った。【結果】パネラーによる官能評価により、調理工夫がにおいに対して効果的であることが分かった。マヨネーズを用いた調理を行うことで、マヨネーズを用いない調理に比べてhexanalなどのにおい成分が有意に抑えられていることが分かった。