著者
寺本 あい 治部 祐里 渕上 倫子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.194-202, 2006-06-20
被引用文献数
3

本研究の目的は,冷凍卵液ゲルの物性の改良への高圧力と糖(グルコース,トレハロース,スクロース)の役割を調べることである。糖無添加およびグルコース,トレハロース,スクロースを5%添加した卵液ゲルを作成し,0.1〜686MPa,-20℃で冷凍した。-20℃で高圧処理中,糖無添加ゲルでは200〜400MPa,糖添加ゲルでは200〜500MPaで過冷却を保ち凍結しなかった。過冷却されたゲルは,圧力解除時に急速凍結(圧力移動凍結)し,細かい顆粒状の氷結晶が生成した。このため,圧力移動凍結した卵液ゲルは,物性(破断応力と破断歪率)の変化が少なかった。また,卵液ゲルへの5%糖添加は,冷凍卵液ゲルの組織及び物性からみた品質の向上に効果的であった。しかし,3種の糖の間で大きな差はみられなかった。
著者
木本 眞順美 寺本 あい 渕上 倫子
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

近年、我が国においてはエビアレルギー患者の増加が目立っている。欧米では、既にエビのアレルゲンとして筋肉繊維を構成しているタンパク質であるトロポミオシンが唯一同定されているが、日本においては、その研究は進んでいない。平成13年度は、本研究課題の計画に従って、順調に実験を進め、試験したすべてのエビアレルギー患者血清において唯一トロポミオシンがアレルゲン成分として同定された。さらに、本アレルゲンに対する特異的なモノクローナル抗体を作製し、これらを利用してトロポミオシンの微量定量法(サンドイッチELISA)を確立した。平成14年度は本アレルゲンの低減化の試みの一環として、調理操作によるトロポミオシンの除去方法を検討した。この際、前年度に開発した測定系の有効性が確認された。新鮮エビを沸騰水中で10分間煮ることにより、エビに含まれるトロポミオシンの約9割が浸出液中に溶出され、この操作がエビのアレルゲン性の低減化に一つの手段として利用し得ることが示唆された。さらに進んだ低減化を図るためにはトロポミオシンのアレルゲン性の解明が必須となる。従って、次いで、日本人が常食している車エビトロポミオシンをコードするcDNAのクローニングを行い、トロポミオシン全長ならびに数種のペプチドを大腸菌において発現させた。これら組換え型タンパク質のアレルゲン性は患者血清を用いるイムノブロット法により検討した。得られたcDNAクローンは284個のアミノ酸残基からなる全翻訳領域を含んでいた。また、トロポミオシン全長を含む組換え型タンパク質は天然型トロポミオシンと同じ強度で患者血清中のIgE抗体と交叉性を示した。さらに、トロポミオシン全長を3分割、6分割したペプチドとの交叉性を検討した結果、トロポミオシンのエピトープはポリペプチド鎖上の全域に点在し、少なくとも4〜5個の領域の存在することが示唆された。
著者
桑田 寛子 治部 祐里 田淵 真愉美 寺本 あい 渕上 倫子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.193, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 ダイジョは別名アラタと呼ばれ、東南アジア原産のヤマノイモ科ヤマノイモ属ダイジョ種に分類される。自然薯に次ぐ粘質多糖類含量であるため、粘りが強い。このため、とろろの起泡性を利用した菓子への利用が期待されるが、えぐみと褐変しやすいという欠点を持つ。今回は冷凍耐性およびえぐみの原因の1つと考えられる針状結晶に着目した。すなわち、ダイジョと他のヤマノイモとの比較を行い、ダイジョの調理特性を検討するための基礎研究を行った。方法 剥皮したダイジョ、ナガイモ、ツクネイモを5%食酢液に30分間浸漬後、すりおろした。砂糖無添加、および10%添加したとろろを-20℃、-30℃、-80℃のフリーザーで凍結した。その後、25℃の恒温器で解凍し、動的粘弾性測定装置でレオロジー特性を測定し、冷凍前と比較した。また、ヤマノイモの皮を含む5㎜角の試料を食酢原液、0.5%塩酸溶液、1%塩酸溶液に浸漬し、針状結晶の有無を低真空走査型電子顕微鏡で観察した。結果 砂糖添加の有無や冷凍温度によって、冷凍後のレオロジーに大差はみられなかった。すべてのヤマノイモの皮下部にシュウ酸カルシウムの針状結晶がみられた。ナガイモに最も多く、次いでツクネイモで、ダイジョは最も少なかった。皮を剥くとき手が痒くなるのは、細胞中に埋もれていた針状結晶が飛び出して、手に刺さるためである。1%塩酸溶液に30分浸漬すると、すべてのヤマノイモの針状結晶が溶けたが、食酢原液では溶けなかった。
著者
寺本 あい 大和 裕子 古海 圭菜
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】スチームコンベクションオーブン(以下スチコン)は焼き、スチーム、その複合機能など多機能を持ち合わせている。この機能を適切に活用すれば大量調理において提供できる料理の幅が広がる。そこで、準備から廃油の処理に至るまで作業負担や環境負荷が大きい揚げ物について、スチコンを用いた調理の最適条件を検討することにした。<br />【方法】本研究では、鶏のから揚げを題材とした。衣については粉の種類・配合、粉のまぶし方、油の付加方法、加熱条件については加熱モード、加熱時間について比較を行い、揚げ調理に近い仕上がりになる調理方法を検討した。完成品の評価は、こども園にて給食として実際に提供し、子供達の喫食状況の観察と、職員を対象とした嗜好調査を行った。<br />【結果】数種の粉を配合し、揚げ過程での吸油を下処理段階で油にくぐらせ均一にむらなく付加し、スチコンの複数のモードを組み合わせることで、肉のジューシーさを保ちながら揚げ物のカリッとした食感に近付け、粉っぽい部分が残ることがなく均一な仕上がりとなった。具体的な最適調理条件は、以下のとおりである。粉は薄力粉とコーンスターチ、粉全量の5%の重曹用いた。粉のまぶし方は、鶏肉に薄力粉をまぶした後、重曹を混ぜたコーンスターチを加えまぶした。油の付加は、バットに油を入れ粉の付いた鶏肉をくぐらせて、焼き網の上に並べ余分な油を落とした。加熱条件は、浅型パンの上に鶏肉を並べた焼き網をのせ、熱風モード220℃で8分加熱後コンビモード(スチーム80%)220℃で2分加熱した。また、こども園における完成品の嗜好調査や喫食状況の観察より、鶏の唐揚げとして提供できる品質であると考えられる。
著者
肥後 温子 寺本 あい 五十川 友子 引地 由佳里
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.382-391, 2011-08-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

多機能オーブンレンジのオーブン(Ov),グリル(Gr),スチーム(Sm),マイクロ波(Mw)加熱機能および過熱水蒸気のオーブン加熱機能(SSO),過熱水蒸気のグリル加熱機能(SSG),スチームとマイクロ波の併用加熱機能(Sm+Mw)の違いを,食パンのテクスチャー,水分,焦げ色を指標として比べた.<BR>(1) 過熱水蒸気を使用したSSG, SSOでは加熱初期に急速に軟化し,軟らかさとパリ感を兼ね備えた破断特性が得られた.オーブンとスチームを併用したSm 180℃では軟化効果のみが認められた.<BR>(2) 過熱水蒸気のグリル機能(SSG)では焦げ速度がGrの約2.5倍,過熱水蒸気のオーブン機能(SSO)では焦げ速度がOvの約2倍速く,Sm 180℃では焦げ速度がOvの約1.2倍速かった.<BR>(3) 一定の焦げ色に到達した時間はSSG<SSO<Gr<Sm 180℃<Ovの順となり,短時間で焦げた試料ほど残存水分量が多くなった.<BR>(4) モデル系を使って水分布を調べた結果,SSG, SSOに特有の破断特性は,試料表面の乾燥の速さ,焦げ速度の速さ,内部水分量の多さによって説明することができた.<BR>(5) マイクロ波加熱したパンは急速に硬化し,Ovの約2倍大きい破断特性を示した.スチームを併用することによって硬化時間は遅くなったが,長く加熱するとMwと同じ硬さになった.
著者
治部 祐里 寺本 あい 安川 景子 佐々木 敦子 渕上 倫子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.18, 2006 (Released:2008-02-28)

<目的> 本研究では、玄米・七分つき米・精白米を、100℃・107℃・130℃対応の電気炊飯器で炊飯し、飯の物性測定を行い、玄米をおいしく炊く条件を検討した。また、電気炊飯器・圧力鍋・土鍋で炊飯した飯の官能評価や玄米と精白米の混合飯の好ましい配合割合について検討した。<方法> 本研究では、玄米・七分つき米・精白米を、100℃・107℃・130℃対応の電気炊飯器で炊飯し、飯の物性測定を行い、玄米をおいしく炊く条件を検討した。また、電気炊飯器・圧力鍋・土鍋で炊飯した飯の官能評価や玄米と精白米の混合飯の好ましい配合割合について検討した。<結果> 130℃・107℃対応炊飯器は昇温期(炊飯開始から温度急上昇期に達するまで)に細かく温度調節され、緩慢な温度上昇であったのに対し、100℃対応炊飯器は釜の温度の上下動が大きかった。普通炊きと玄米炊きを比べると、玄米炊きの方が普通炊きに比べ昇温期の緩慢上昇が短く、短時間で沸騰期に達し、沸騰期が長かった。炊飯中の温度は圧力鍋は120℃であった。玄米飯の官能評価は七分つき米・精白米の飯に比べ悪く評価され、七分つき米・精白米の飯は大差なかった。玄米を圧力鍋・電気炊飯器・土鍋の3器具で炊いた飯を比較すると、炊飯直後、2時間室温放置後とも圧力鍋で炊いた飯が最もおいしいと評価された。好ましい配合割合については玄米と精白米を同量の配合割合で炊いた飯が最もおいしいと評価された。
著者
肥後 温子 寺本 あい 富永 暁子 井部 奈生子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.221-230, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水,バッター生地,食パンを試料とし,スチームコンべクションオーブンの7種類の加熱モードを用いて加熱速度,消費エネルギー量,力学特性を比較した。(1)水温上昇速度,バッター生地の凝固速度,食パンの焦げ速度とも熱風モードに比べてスチームを併用したコンビモードの方が速くなった。(2)180℃の熱風モードを基準とした単位時間当たりの消費電力量は,280℃熱風では1.87倍となり,コンビモード(スチーム100%)では3.62倍(180℃),3.95(280℃)倍となった。(3)180℃の熱風モードを基準とした水,バッター生地加熱時の消費電力量は,280℃熱風では1.37~1.44倍となり,コンビモード(スチーム100%)では2.41~3.01倍となった。(4)食パンの焦げ速度は,庫内温度を180℃から280℃に上げると6倍以上となり,一定の焦げ色にするための消費電力量は庫内温度180℃の1/2以下となった。(5)熱風モードでは加熱時間が長くなると乾燥して硬くなる傾向があるが,コンビモードでは食パンの力学特性の変化が速いにもかかわらず長時間加熱しても硬化が少なかった。
著者
木村 安美 治部 祐里 寺本 あい 桑田 寛子 渕上 倫子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> サワラはサバ科の回遊魚で、ばら寿司の具材に使用されるなど岡山の郷土料理に欠かせない食材である。岡山県はサワラの取扱量は全国一で、大半を県内で消費し「岡山県の魚」とも呼ばれている。本研究では岡山県におけるサワラの喫食状況の特色を明らかにするとともに、サワラを用いた郷土料理がどの程度日常食の中に溶け込んでいるのかを検討することを目的とした。<br><b>方法</b> 日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学」-魚介類の調理-(平成15年7月~平成16年9月)で得られたデータを集計、比較分析を行った。調査地区に10年以上居住している者を対象とし、全国(3,431世帯)、中国・四国(931世帯)、岡山県(380世帯)から回答を得た。得られたデータからサワラ料理を抽出し、喫食率、調理法、郷土料理について比較検討を行った。<br><b>結果</b> サワラの喫食状況は、全国44.5%、中国・四国60.3%に比較し岡山県が156.8%(複数回答)と圧倒的に高く、調理方法では、全国、中国・四国では大半を焼き物が占めるのに対し、岡山県では生ものや煮物が多い結果となった。岡山県南部では北部に比較して生もの、煮物、飯物の割合が多く、北部では焼き物の割合が高かった。飯物の内訳では、押し寿司は全国34.8%、中国・四国61.5%、岡山県0%に対し、チラシ寿司が全国13.0%、中国・四国0%、岡山県72.5%であり、南部・北部に分類すると、南部はばら寿司、北部はサバ寿司が高い結果となった。このことから、岡山県におけるサワラを用いた料理は生もので食べる習慣が今も続き、南部では瀬戸内の新鮮なサワラを用いたばら寿司、北部ではサバ寿司を食する郷土料理の伝統が結果に顕著に表れたと考えられる。
著者
寺本 あい 大和 裕子 古海 圭菜
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.113, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】スチームコンベクションオーブン(以下スチコン)は焼き、スチーム、その複合機能など多機能を持ち合わせている。この機能を適切に活用すれば大量調理において提供できる料理の幅が広がる。そこで、準備から廃油の処理に至るまで作業負担や環境負荷が大きい揚げ物について、スチコンを用いた調理の最適条件を検討することにした。【方法】本研究では、鶏のから揚げを題材とした。衣については粉の種類・配合、粉のまぶし方、油の付加方法、加熱条件については加熱モード、加熱時間について比較を行い、揚げ調理に近い仕上がりになる調理方法を検討した。完成品の評価は、こども園にて給食として実際に提供し、子供達の喫食状況の観察と、職員を対象とした嗜好調査を行った。【結果】数種の粉を配合し、揚げ過程での吸油を下処理段階で油にくぐらせ均一にむらなく付加し、スチコンの複数のモードを組み合わせることで、肉のジューシーさを保ちながら揚げ物のカリッとした食感に近付け、粉っぽい部分が残ることがなく均一な仕上がりとなった。具体的な最適調理条件は、以下のとおりである。粉は薄力粉とコーンスターチ、粉全量の5%の重曹用いた。粉のまぶし方は、鶏肉に薄力粉をまぶした後、重曹を混ぜたコーンスターチを加えまぶした。油の付加は、バットに油を入れ粉の付いた鶏肉をくぐらせて、焼き網の上に並べ余分な油を落とした。加熱条件は、浅型パンの上に鶏肉を並べた焼き網をのせ、熱風モード220℃で8分加熱後コンビモード(スチーム80%)220℃で2分加熱した。また、こども園における完成品の嗜好調査や喫食状況の観察より、鶏の唐揚げとして提供できる品質であると考えられる。
著者
桒田 寛子 寺本 あい 治部 祐里 田淵 真愉美 渕上 倫子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.137-144, 2011 (Released:2014-07-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

玄米をおいしく炊く条件を探る目的で,玄米を七分つき米,精白米に搗精し,テクスチャーと組織構造を比較した。玄米の20°C,30°Cでの吸水速度は搗精した米と比べ遅かった。しかし,60°Cに2時間浸漬すると,七分つき米,精白米と同じ吸水率となった。炊飯後の玄米飯の水分含量は搗精した米飯と比べ少なく,サイズは小さかった。クライオ走査電子顕微鏡観察すると,米の搗精度が高くなるに従って,果皮,種皮,糊粉層が除かれていた。米を水に浸漬すると,玄米より搗精米のほうが,デンプン貯蔵細胞中のアミロプラストがより大きく膨らんでいた。米の搗精度が高くなるほど,小孔(水の痕跡)が増加した。これはデンプンの糊化が十分であったことを示唆している。玄米の官能評価は搗精米より悪かった。
著者
バグム ナズニーン 横井川 久巳男 寺本 あい 磯部 由香 河合 弘康
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.729-733, 1999-07-15

塩化ナトリウムを含む数種の培地で増殖したパン酵母の発酵力を,数種のタイプの生地中で評価した.3種類の増殖培地を実験に用いた.すなわち,YPG培地(5%グルコース,1%ペプトン,0.5%酵母エキス,0.1%リン酸一カリウム,0.1%硫酸マグネシウム・7水塩,pH5.6),YPS倍地(2%スクロース,4%ペプトン,2%酵母エキス,0.2%リン酸一カリウム,0.1%硫酸マグネシウム・7水塩,pH5.6),MO培地(1%尿素,0.2%リン酸一カリウム,5%糖蜜由来糖分,pH5.6)である.これらの培地への3%塩化ナトリウムの添加は,増殖培地の種類にかかわらずパン酵母の増殖を明らかに抑制した(細胞収量は,定常期において15〜60%低下した).これらの塩ストレスにさらされた細胞の発酵力を調べたところ,増殖培地や生地のタイプにかかわらず,塩化ナトリウム非存在下で増殖した細胞より高い発酵力を示した.塩化ナトリウムの存在による発酵力の増加率は,3%塩化ナトリウムを含むYPSまたはYPG培地と5%グルコースを含む生地を用いた場合が最大であった(45%の増加率).しかしながら,発酵力の増加率は,増殖培地の種類にかかわらず,無糖生地では低いレベルに留まった(2〜7%の増加率).酵母の発酵力は,主に糖の取り込み速度によって制限されることから,塩化ナトリウム存在下で増殖したパン酵母の高い発酵力は,糖取り込み速度の増加によるものと推定される.また,増殖培地中の塩化ナトリウムの存在は,種々のサッカロミセス酵母の発酵力も高めた.
著者
寺本 あい 小川 典子 渕上 倫子
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.11-18, 1999-01-15
参考文献数
15
被引用文献数
3

To compare the effects of storage and thawing methods on the quality of high-pressure-frozen tofu, momen-tofu (soybean curd) was frozen at ca. -20℃ under 100, 200, 340, 400, 500 or 600 MPa of pressure and then thawed at atmospheric pressure (A, 90 min frozen; B, 90 min frozen and then stored 2 days at -30℃, C, 160 min frozen) or thawed at a high pressure (D, 90 min frozen). The texture and structure (cryo-SEM observations) of the tofu were investigated under each condition. The rupture stress, strain and pore size of A-D frozen at 100 or 600 MPa all increased. However, the textural quality of tofu frozen at 200-400 MPa was better than of tofu frozen at 100 or 600 MPa regardless of the thawing method used. When tofu was frozen at 200-500 MPa, the ice crystal size was (largest to smallest) B<A and C<D; the pore size and texture of D were the same as those of untreated tofu. These results show that ice crystals did not grow when tofu was frozen at 200-500 MPa. However, ice crystal growth under reduced pressure at ca. -20℃ and growth while thawing at atmospheric pressure due to phase transition were noted.
著者
渕上 倫子 寺本 あい
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

冷凍耐性の悪い食品のテクスチャー改善を目的として、ゲル状食品(卵豆腐、寒天、高粘弾性寒天、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、κ-カラギーナン・ローカストビーンガム混合、カードラン、脱アシル型ジェラン、ネイティブ型ジェランなどのゲル)および卵黄を約-20℃、100〜686MPaの高圧力下(高圧冷凍後大気圧下の-30℃で保存)、または、大気圧下の冷凍庫中(-20℃、-30℃、-80℃)で冷凍し、解凍後の外観、離水量、物性(ゲル:クリープメータによる破断強度解析、卵黄:粘弾性測定)と微細構造(クライオ走査電子顕微鏡観察)を比較した。また、凍害防御物質として各種糖類(蔗糖、トレハロース、グルコース、糖アルコール等)の役割について検討した。更に、-20℃で高圧力処理中の試料の温度変化を測定することにより、-20℃での液相→氷Iへの相転移の挙動を検討した。その結果、200〜400MPaでは-20℃でも凍っておらず、圧力解除時に急速な試料の温度上昇がみられた。過冷却温度が低く圧力解除時に短時間に凍結し、微細な氷結晶が多数生成したため、圧力移動凍結品は良好であった。大気圧下や100、686MPaでは過冷却温度が高く、少ない核を中心として大きな結晶ができたため、離水も多く解凍後の品質が悪化した。5%、10%、20%と糖濃度の増加に伴い凍結点が低下し、解凍後の物性と微細構造が良好となったが、糖の種類により大差なかった。また、ゲルの種類により冷凍耐性や物性変化の様相が異なった。カードランやネイティブ型ジェランガム(脱アシル型ジェランガムは悪い)、ι-カラギーナンのゲルは冷凍耐性が良く、普通の寒天より高粘弾性寒天のほうが離水が少なく良好であった。κ-カラギーナンにローカストビーンガムを添加すると冷凍耐性が向上した。卵黄は200MPa以上でタンパク質の変性による粘度上昇が顕著であったが、蔗糖添加により卵黄の流動性が増し、冷凍および高圧力によるレオロジー変化が抑えられた。
著者
寺本 あい
出版者
関東学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ニンジン、ジャガイモを用い各種加熱方法を試みた。加熱時間は圧力鍋(B)<保温調理器(D)<過熱水蒸気(A)<ゆで(C)であった。最適加熱後の試料は、硬さが同程度であっても加熱方法によりトータルの食感に差異があった。また、煮崩れはD<C<Bであった。野菜の軟化と関係が深いペクチン質の総量はA<D<C<Bであった。また、加熱後のジャガイモの官能評価における総合評価ではA>C>B>Dの順に高い評価が得られた。