著者
小林幹夫
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.141-159, 2016-06-20 (Released:2022-10-21)

日本産ササ類には,稈鞘の挙動によって特徴づけられる4種類の分枝様式が存在することが分かった.第一は,分枝が母稈の稈鞘の内部で起こり,枝の基部が包まれて維持される内鞘的分枝様式で,メダケ属,ヤダケ属,ならびにササ属の大部分に共通する.第二は,分枝に伴って稈鞘基部の辺縁側が母稈を離れ,稈鞘全体が枝を抱くようになる移譲的分枝様式で,スズダケ属,スズザサ属に共通し,アズマザサ属の多くに見られる.第三は,腋芽が母稈鞘の腋芽側を突き破って分枝する外鞘的分枝様式で,アズマザサ属のごく一部,ならびにササ属ミヤコザサーチマキザサ複合体の多くに見られる.第四は,同一の稈に外鞘的,移譲的の2種類の分枝様式が混在する外鞘・移譲混合型分枝様式で,アズマザサ属の一部に見られる.これらの分枝様式は,同定が困難なササ属とアズマザサ属,もしくはスズザサ属の種群間,ミヤコザサーチマキザサ複合体の識別を容易にする.
著者
数野 渚 鈴木 秀和
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.192-197, 2023-08-20 (Released:2023-08-20)
参考文献数
13

底生羽状珪藻タマスジケイソウ属(オビフネケイソウ科)のLuticola tropica (Hustedt) Levkov, Metzeltin and A. Pavlovの生細胞と被殻微細構造を光学および電子顕微鏡を用いて観察し,新たに以下の形態学的特徴を明らかにした.胞紋の殻内側開孔部は規則的散在型配列の穿孔をもつ薄皮によって閉塞される.半殻帯は最大4枚の帯片から構成され,いずれの帯片も片端開放型で,半殻帯の両端において開放端と閉鎖端が交互に重なる. 第1帯片の接殻帯片は表出部に2列の胞紋列をもち,内接部縁辺には小円鋸歯をもつ.第2帯片から第4帯片も表出部に2列の胞紋列をもち,各帯片の開放端の反対側にある小舌は,上に重なる帯片の開放端を裏打ちする.
著者
数野 渚 鈴木 秀和 溝渕 綾 半田 信司
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.98, no.3, pp.124-133, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

底生羽状珪藻タマスジケイソウ属(オビフネケイソウ科)のLuticola belawanensis Levkov & Metzeltinの生細胞と被殻微細構造を光学および電子顕微鏡を用いて観察し,詳細な殻微細構造とそれに基づく近縁種との形態学的相違点,そして新たに帯片に関する以下の形態学的特徴を明らかにした.半殻帯は最大4枚の帯片から構成され,いずれの帯片も片端開放型で,半殻帯の両端において開放端と閉鎖端が交互に重なる.第1帯片の接殻帯片は表出部に2列の胞紋列をもち,内接部縁辺には小円鋸歯をもつ.第2帯片から第4帯片も表出部に2列の胞紋列をもち,各帯片の開放端の反対側にある小舌は,上に重なる帯片の開放端を裏打ちする.本種は日本では沖縄から関東の広い範囲に分布し,特に河口の感潮域に生育すると考えられる.
著者
内貴 章世 仲宗根 忠樹 大井・東馬 哲雄 米倉 浩司 阿部 篤志
出版者
The Editorial Board of The Journal of Japanese Botany
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.98, no.3, pp.134-139, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
参考文献数
15

国内では沖縄県与那国島にのみ分布するヤエヤマハシカグサExallage auriculariaが約40年ぶりに再発見されたので報告する.近縁種を含めた分子系統解析を行ったところ,先行研究と同じく本種は単系統ではないことが示唆され,与那国のものはタイやフィジーに分布するものと近縁であることが示された.本種は形態が多型的で種内分類群が提唱されたことがあり,種内および近縁種との関係性を明らかにするためにはさらなる解析が必要である.