著者
壁谷 彰慶
出版者
学校法人 植草学園短期大学
雑誌
植草学園短期大学紀要 (ISSN:18847811)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.77-82, 2019 (Released:2019-03-28)

フランツ・カフカの短編「断食芸人」の終幕で、断食を続ける芸人が、見世物小屋の監督に対し、自らの 生き方は世間からの「感心」に値しないことを吐露するやりとりがある。彼が死に際に残したこの言葉は、 読み手にいくつかの解釈の余地を残しており、その多義性は、「よい/悪い」や「幸福/不幸」などの価値 に関わる倫理的概念について、哲学的な示唆を与えるように思われる。以下では、「断食芸人」の終幕から 読み取れる「感心」の多義性を整理し、この作品が価値や「幸福」に関して示唆することを確認する。
著者
長嶺 章子 石井 恵子 石井 博子 石橋 葉子 糸日谷 章子 柴辻 純子 水村 明子 山中 和穂
出版者
学校法人 植草学園短期大学
雑誌
植草学園短期大学紀要 (ISSN:18847811)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.29-43, 2019 (Released:2019-03-28)

本稿は、短期大学保育者養成課程1年生のピアノの授業(保育の表現技術Ⅰ(音楽表現))を対象に試み た、習熟度別指導の実践報告である。この授業は必修科目であり、1クラス約50名の学生に対し、8名の教 員による個別指導を実践している。履修者の習熟度は、初学者から長期間にわたって学習している者まで多 様である。以前は、各グループ内に多様な習熟度の学生が混在するグループ編成を採用していた。この編成 においては指導時間の公平性や学習者心理への影響等において課題があった。そこで本実践では、習熟度が 同程度の学生によるグループ編成を試みた。その結果、指導時間の不平等が是正され、各自の習熟度に適し た内容で指導することが可能となった。さらに、学修上の配慮を必要とする学生に対し、より適した支援を することも可能となった。
著者
山田 純子
出版者
植草学園大学
雑誌
植草学園短期大学紀要
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-29, 2008-03

発達障害児者・親の会が障害理解・受容、子育て、進路選択、こどもへの障害の説明にどのような影響を与えたのかを明らかにすることを目的に、A県親の会会員53人を調査し、43人から回答を得た。多くの人が入会によって障害の理解が深まり、子どもの理解ができるようになり、対応が望ましい方向に変わってきていること、進路選択、就労準備についても見学会や先輩の話が役に立ったことを挙げている。子どもが障害の説明を受けたときに示した反応のうち対照的な受け止め方をした2群「受容群」と「動揺群」を取り出し、その背景を比較をした。「受容群」は知的障害を診断名に入れた人が多く、療育手帳所持者が多い傾向がある。普通高校出身者は「受容群」で4割であるが、「動揺群」では9割と多い。「子どもの活動」の参加は、「受容群」で7割に対し「動揺群」では4割と低い。障害の説明の是非や説明の時期は「受容群」では両方とも「よかった」が大多数であるが、「動揺群」では、「わからない」や「遅かった」など説明に迷いがあった。両群は親の障害観、教育環境、子どもの仲間の有無などの環境に違う傾向があった。
著者
金 幸愛 田村 光子
出版者
学校法人 植草学園短期大学
雑誌
植草学園短期大学紀要 (ISSN:18847811)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.71-80, 2022-03-31 (Released:2022-06-30)

近年、少子化が進む中、特別な支援を要する子どもは増加傾向にある。本稿では、保育、幼児教育におけ る特別な支援を要する子どもへの対応について検討を深めることを目的とする。障害を受け入れる困難性に ついて、筆者が出会った韓国での保護者の意識、ならびに、実際的な保育観察と保護者へのインタビューか ら、インクルーシブ保育に必要な保育者の専門性について検討した。その結果、インクルーシブ保育には、 保育者が専門性を高めるとともに、子どもに寄り添い、その子どもを理解したうえで適切な保育を通して、 子どもが育ち、保護者との情報共有をはかることで保護者との信頼関係を築いていくことが把握できた。特 別な支援を要する子だけを特別に扱うのではなく、他の子どもたちと一緒に一つの集団として、共に楽しめ る方法を見つけていくことが大切であることを確認した。
著者
相磯 友子
出版者
学校法人 植草学園短期大学
雑誌
植草学園短期大学紀要 (ISSN:18847811)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.21-32, 2021-03-31 (Released:2021-03-25)

本稿では、特別支援学級において外国人の子どもの在籍率が高いとの報道を受け、外国人の子どもの就学相談に資する基礎資料を得るために、外国人の子どもの「障害」に関する研究を概観した。先行研究を1.外国人の子どもの学習の困難さと「障害」の見立ての難しさ、2.外国人の子どものアセスメントに関する研究、3.外国人の子どもの「障害」と判断されるプロセス、の3つに分けて知見を整理した。最後に、今後の外国人に子どもの就学相談に向けて、1.外国人の子どもに対するアセスメントのあり方、2.アセスメントと就学相談の経緯の記録、3.多分野連携の必要性、4.チームでのサポート体制の構築の4つの観点から考察した。