著者
原田 敬一
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.19-37, 2011-03-01

本稿は、新出の史料である「従軍日記」一編を使用して、「日清戦争」を従軍者がどのように描いているか、を追究する。この「従軍日記」の著者は、混成第九旅団野戦砲兵第五聯隊第三大隊第五中隊に属する将校であり、一八九四年六月六日から翌年二月一四日まで日記を書き続けた。戦後の清書や刊行物ではなく、現場で書いていた日記と推測され、日本が日清戦争開戦前に朝鮮に派兵した最初の部隊の一員であった。参謀本部が編纂し、刊行した『日清戦史』全八巻には、いくつかの遺漏や改ざんの跡が指摘されており、そうした点も、「従軍日記」という軍人自身の記述により再検討することができる。
著者
山崎 覚士
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.65-82, 2015-03-01

本稿は宋代都市における下層民を中心とした人口構成と、その都市内分布を考察した。そのために、従来十全に活用されなかった下層民に対する救済措置である賑済に関する史料をより詳細に分析し、賑済時における都市下層民の等級を明らかにした。その結果をふまえて明州城における都市下層民の人口割合をおよそ6割と概算した。さらに明州城内における下層民の分布状況を考察した。資産を有さない無産下層民は明州城の繁華な区域には比較的に少なく、むしろ月湖をたたえる西南区域に多かった。また零細な資産を有する微産下層民は城外区域に多かった。むしろ城外区域の発展は、そうした微産下層民の集住を起因とした。以上のような分析はこれまでの中国都市史研究に新たな成果をもたらすものである。
著者
塚本 栄美子
出版者
佛教大学歴史学部
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
no.4, pp.41-62, 2014-03

宗教改革やその後の宗派化のプロセスを通じて、自身や家族のために追悼説教パンフレットを作成する慣習が、王や諸侯たちの間ばかりでなく、より階層の低い貴族や領主層、ブルジョワ階層や裕福な手工業者たちにも広がっていった。とりわけルター派地域に浸透するが、改革派やカトリックの人びとの間でも認められ、近世ならではの慣習として注目される。本稿では、わが国であまり紹介されてこなかった当該史料の具体例を検討し、その史料的価値を考察する。近世ドイツ追悼説教パンフレットブランデンブルク・プロイセン
著者
宮澤 知之
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-63, 2015-03-01

中国貨幣史を跡づけるとき、国家財政で用いる貨幣と市場で流通する貨幣が一致しないことがある。それは貨幣の種類の違いであったり、貨幣機能の違いであったりする。本稿は実物貨幣と貨幣機能に注目して、市場とは異なる財政貨幣の展開過程を確認するものである。大きくいえば唐までの銭帛、宋元の銭鈔、明清の銭銀と変遷するが、貨幣種類の変化は主に実物貨幣でおき、その属性の違いが財政の運用・構造と密接な関係にある。
著者
工藤 美和子
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.47-58, 2014-03-01

法然源智交名願文像内納入