- 著者
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山崎 毅六
三井 光
- 出版者
- 一般社団法人 日本エネルギー学会
- 雑誌
- 燃料協会誌 (ISSN:03693775)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.7, pp.417-422, 1958-07-20 (Released:2011-10-21)
反応室において天然ガスを酸素により部分酸化して, いおゆる合成用ガスを得る方法は一般に知られている。ところが, この反応が内燃機関の燃燒室を反応器として利用して進めた場合にどうなるかに興味をもち, 生成ガス組成, 燃燒温度, 排気温度, 熱効率および機関出力を算出して4サイクルのオットー機関による天然ガス変成の可能性を検討した。天然ガスはほとんどメタンであると考えられるので, 純メタンおよび純酸素が反応して, 炭素ガス, 一酸化炭素, 水蒸気, および水素を生成し, さらに未反応のメタンおよび酸素が生成ガス中に存在するものとし, 物質収支, 熱収支および生成ガス成分間の平衡関係から, 燃燒時および排気時のガス組成, ガス温度, 熱効率および機関出力を計算によつて求めた。種々の混合比について計算した結果, 天然ガスの燃燒範囲の上限界附近において反応させることにより, 4サイクル機関を燃燒反応を利用した反応器として, 有効ガス (CO+H2) 86~88%, H2/CO 1.8のすぐれた組成の合成用ガスを生成すると共に, 熱効率6.5~7.0%ではあるが, 原料メタン1Nm3当り0.65~0.70kWhの動力を直接回収でぎることが推定された。近ごろ, 天然ガスを水蒸気あるいは酸素により変成して, アンモニア, メタノールなどの合成用ガスを製造する研究が盛んに行なわれ, すでに工業化されたものも多い。4サイクルのオットー機関中で天然ガスを酸素により部分酸化して, 水素と一酸化炭素を含むいわゆる合成用ガスを製造すると同時に, その反応熱を直接動力として回収する研究があるけれども, 著者らはこの方法を応用する場合の燃燒温度, 排気温度, 熱効率, 出力および生成ガス組成などをすでに報告した各種燃料化合物のシリンダ内における燃燒温度計算の手法を用いて算出し, すぐれた組成の合成用ガスを生成させながら, 直接に動力を回収しうることを計算値によつてたしかめた。