著者
高間 満
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.135-147, 2006-03-20

本稿では,ホームレス問題の歴史,実態,生活保護による制度的対応を概観した上で,ホームレス自立支援法成立以後の具体的なホームレス支援のあり方について検討した。ホームレスの人々は,歴史的に不定住的貧困として救貧制度から除外され,戦後の生活保護法でも病院や施設への入院・入所以外は救済対象とされず,近年のホームレス訴訟などを経て,ようやく在宅保護の途が開かれた経緯がある。また2002(平成14)年にホームレス自立支援法が成立したが,その主たる対象は就労による自立が見込まれる人々である。そして各自治体では自立支援センターの設置など,自立支援計画を実行しつつある。しかしホームレス自立支援では就労自立の見込みのない人,自立意欲のない人をも並列的に対象とすべきである。また自立支援の推進では行政主導ではなく,公民協働が重要であり,民間団体が開発した資源,ノウハウの活用が有効である。またその具体的支援にあたっては,生活保護の適切な運用の上,「半福祉・半就労」と「社会的つながり」の視点が求められる。さらにはホームレス予防策の整備とともに,市民ぐるみのホームレス支援が重要となる。ホームレス問題は地域福祉の究極的課題である。
著者
藤井 博志
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.65-77, 2007-03

本稿は、近年におけるわが国の新たなコミュニティケアサービスの動向を概観し、その特徴を明らかにする。また、それらの多くは制度的なケアサービスではなく、民間による自発的なサービスである場合が多い。その点に注目して、それらのケアサービスが自治体において、開発され、計画化される方法を提案する。その場合、自治体はもとより、それを推進する社会福祉機関として、社会福祉協議会が期待される。したがって、ここでは、これらの新たなコミュニティケアサービスを開発する社会福祉協議会の組織・機能にも言及している。また、これらのケアサービスを自治体において普及するためには、社会福祉計画による合意形成が必要である。とくに、わが国においてコミュニティケアを進める計画として地域福祉計画が注目される。最終的には、この地域福祉計画に新たなコミュニティケアサービスが位置づけられ、地域福祉資源整備の課題として、住民と行政の協働によるサービス開発を展望している。
著者
松本 英孝
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.3-14, 2007-01

この論文は1956年に刊行された岡村の労作『社会福祉学(総論)』が50年経過した現在もなお、何故意義ある社会福祉理論として存在し続けられるのかを検討している。吉田がいう超時代性に応えるべく、岡村の論理に着目して解明するものである。その方法は『社会福祉学(総論)』における社会福祉論理のすじみちを表現している文脈を抽出して考察を加えている。結論的には、岡村の論理は、動的・発展的論理であり、全体的関連の中で捉える媒介の論理であることから弁証法論理であることを明らかにしている。弁証法という語彙は使われなかったけれども、岡村の研究方法が弁証法であったことにより時代を超えて生き続けているのである。
著者
岩井 信彦 青柳 陽一郎 白石 美佳 大川 あや 清水 裕子 柿本 祥代
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.75-81, 2007-01
被引用文献数
1

回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者51例の日常生活活動(Activities of Daily Living ; ADL)を機能的自立度評価法(Functional independence measure ; FIM)を用いて、実際の生活の中で行っている活動「しているADL」を評価し、同時に理学療法室や作業療法室など限られた環境での潜在的な活動「できるADL」を評価し、その得点差の状況を比較検討した。その結果、入院時、低FIM群では更衣上半身、更衣下半身、トイレ動作で得点差が大きかった。一方、高FIM群では階段昇降、歩行で差が大きかった。さらにADL項目ごとの得点と「しているADL」と「できるADL」との得点の関係において、低FIM群ではその差は確認できなかったが、高FIM群においては得点が高いADLほど得点差が小さいという相関が確認された。このことから回復期脳卒中患者の「できるADL」と「しているADL」の格差の特性を知り、医療チーム全員が格差の早期発見と原因の解明に取り組んでいくことが重要であると思われた。
著者
山本 大誠 奈良 勲
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.97-104, 2006-03-20

この論文は精神疾患の理学療法に関する課題と展望について議論するものである。理学療法は身体的健康を維持するために不可欠である。また,身体的健康は精神保健に対して寄与している。しかし,わが国では精神疾患患者への理学療法による身体運動は確立されていない。精神疾患の治療は,主に医師,看護師,作業療法士,精神保健福祉士によって行われている。理学療法は身体症状の改善が主な役割であるとされ,精神科領域では重要視されてこなかった。しかし,近年では精神疾患患者に対する適正な医療が見直され始め,精神医療におけるリハビリテーションの重要性がさらに高まってきた。そして,精神科領域における身体医療の必要性から,理学療法の取り組みが期待されている。精神科領域のリハビリテーションにおいて理学療法を導入し,他職種と連携して取り組んでいくことが望ましい。
著者
西林 保朗 西村 望
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.69-74, 2006-03-20
被引用文献数
1

わが国の男子バスケットボールプレーヤーの多くはヒップホップファッションを取り入れて,大きいシューズと踝部の下方までしかない極端に短いソックスを履くようになっている。過去1年間に,そのために生じた足部障害と判断できる6例を経験したので報告する。このうち1例ではプレーの続行が不能となり,治療に局所麻酔薬とステロイド薬を混合して用いた局所ブロックが必要であった。潜在例を含めて,同様の障害が多発していることが推測される。流行に左右されたために生じた障害であり,適切に指導すれば解決する問題であるので,ヒップホップシンドロームと呼称して注意を喚起したい。