著者
山本 大誠 奈良 勲 岡村 仁 藤村 昌彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.55-60, 2003 (Released:2003-05-01)
参考文献数
25
被引用文献数
4 1

現在,国内では統合失調症者を対象としたリハビリテーション医療における理学療法はほとんど確立されていない。理学療法は基本的に身体的健康を回復,維持するために欠かせないものであるが,身体的健康は精神保健に対しても多大な寄与をなし得るものである。本研究の目的は統合失調症者12名に対して毎週1回,12週間の理学療法介入を試み,その有効性について検討することである。この結果,Body Awareness Scale(BAS) の「身体能力に関する項目」とPositive and Negative Syndrome Scale(PANSS)の「陰性尺度」および「総合精神病理尺度」において理学療法介入群に有意な値の変化が認められた。以上の結果より,統合失調症者に対する理学療法は身体面と精神面の両面において有効である可能性が示された。したがって,精神科領域のリハビリテーション部門において理学療法を導入し,他職種と連携して取り組んでいくことが望ましい。
著者
後藤 力 東 幸仁 佐々木 正太 中河 啓吾 木村 祐之 野間 玄督 原 佳子 茶山 一彰 河村 光俊 奈良 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-91, 2002 (Released:2002-08-20)
参考文献数
12

本研究では有酸素運動を行うことで一酸化窒素(NO)産生増加を介する血管内皮機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。対象は運動習慣を持たない健常男性8名(平均年齢:27±3歳)とした。血管内皮依存性拡張物質としてアセチルコリン(ACh)を使用し,血管内皮非依存性拡張物質として 硝酸イソソルビド(ISDN)を使用した。また,NO合成酵素阻害薬としてNG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)を使用した。運動方法は最大酸素摂取量の50%とし,1日30分,5回/週の頻度で3ヶ月間行った。前腕血流量の変化はプレチスモグラフにて測定した。ACh投与では運動後に有意な増加を認め,NO合成酵素阻害薬であるL-NMMA投与下では消失した。血管内皮非依存性拡張反応では有意な変化を認めなかった。これらより有酸素運動による血管内皮機能の増強は,NO産生増加を介することが示唆された。
著者
奈良 勲
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.162-166, 2000-12-15 (Released:2018-02-01)

How to handle patients' bodies has been one of the key issues in medicine. It is the same in physical therapy which is one of the special fields in rehabilitation medicine. In most cases, the patients who need physical therapy have some sort of disorders or disabilities and sometimes they have to live under those conditions throughout their life. The bodies are not just physical media but they also include the mind. Then, when we handle patients' bodies, we are handling their minds at the same time. Therefore, our philosophical view of humans determines the level of handling patients' bodies.
著者
奈良 勲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.85, 2018-01-15

ホモ・サピエンス(理性の人)としての人類は,古代にはボディーランゲージ,象徴的壁画(絵文字),そして文法の確立されていない単純なことばを媒介にして,ホモ・ファーブル(創造の人)として相互のコミュニケーション手段を考え出し,歴史の経過に伴い,各地域の文明化と文字文化が創造されてきた.しかし,古代文明を築きながらも,その民族の一部は文字文化を発展,継承することができなかった.例えば,これまで世界の四大文明は,メソポタミア・エジプト・インダス・黄河文明であると言われてきたが,近年そのほかにも文明化された地域が存在していたとの報告がある.いずれにせよ,小規模な文明を構築していた民族のなかには,文字文化を残していない民族もあり,仮にそれらの文明の遺跡は温存されていたとしても,文字文化は消滅している. 日本の歴史的な伝説や神話を含む『古事記』には,古代の事象が文字として記録され温存されているため,その文明と文化などを知る大きな手掛かりになっている.日本人の主な生活基盤は農耕民族として受け継がれてきたが,文字文化は朝廷および武士の時代に伝承されてきた.明治維新から太平洋戦争までは初等・中等教育としての尋常小学校,旧制中学,旧制高校,そして戦時中の旧制(帝国)大学は戦後に新制大学へと変遷してきた.このような長い歴史を経て日本語は古文から現代語へとさま変わりしてきた.
著者
奈良 勲
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法のための運動生理 (ISSN:09127100)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.153-158, 1993 (Released:2007-03-29)
参考文献数
7

片麻痺患者の動作分析について、運動分析を含めた概念でそれぞれの障害レベルにおける運動・動作分析について述べた。いづれの分析においても、それらを片麻痺患者の障害像の把握と理学療法施行上のプログラム計画、更に理学療法効果の指標に役立てることである。これまで筆者らが行ってきた運動・動作分析に関連した研究の一部を紹介し、片麻痺患者の何を対象に、そして何の目的で行う必要があるかを提示した。
著者
奈良 勲
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1042-1045, 2012-11-15

はじめに 2011年8月31日に,神戸市立王子動物園の園長から,当時勤務していた神戸学院大学の筆者のもとに電話があった.「動物園で生まれた4歳のインド子象(体重:600kg)が3年余り寝たりきり状態ですが,理学療法を開始したいので,園内の動物病院の獣医と飼育員に理学療法を指導して欲しい」との依頼である.筆者は「日本動物理学療法研究会」(現在の会員数約100人)に,2010年11月発足当時から顧問として協力しており,動物の理学療法が獣医との連携のもと欧米やオーストラリアなどで発展していることは認識していたし,日本における理学療法士の職域拡大という点からも,こうした動きは大変喜ばしいと感じていた.そのような動向もあり,2011年6月の世界理学療法連盟(WCPT)の総会(アムステルダム)では,動物の理学療法がサブグループの一つとして認められた. ちなみに筆者が大会長を務めた第13回世界理学療法連盟国際学術大会(1999年,横浜)では,セミナーの演題の一つに「動物の理学療法」を入れた.これは,日本における理学療法士の職域拡大を視野に入れてのことであった.現在,日本で動物の理学療法の臨床に従事している理学療法士は5~6人ほどと聞いている.しかし,この領域に関心を抱いている理学療法士や学生も存在しているため,日本理学療法士協会もこの領域に注目し,専門研究会を立ち上げると理解している. さて,電話で依頼を受けた筆者は,電話を受けた翌日の2011年9月1日にTシャツと短パン姿で動物園を訪問した.本稿は,今後この領域を展開するうえで少しでも役立てばと考え,王子動物園長の許可を得て論文にしたものである.
著者
奈良 勲 永冨 史子
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法のための運動生理 (ISSN:09127100)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.157-162, 1994 (Released:2007-03-29)
参考文献数
17

スポーツトレーニングにおけるコーチング理論の原則を紹介し,その原則を患者・障害者の基本動作,あるいは日常生活動作などの運動学習・再運動学習を援助する理学療法場面における応用,もしくは対応に関連付けて論述した。コーチングの基本概念は「育成すること」であることから,学習理論に基づき,対象者の運動はもとより,心理学,行動科学などを考慮したアプローチが必要になる。
著者
浅井 仁 奈良 勲 立野 勝彦 山下 美津子
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.137-141, 1989-02-15

Ⅰ.初めに これまで,ヒトの立位姿勢保持能力の評価については,姿勢の評価,足圧中心動揺の測定による平衡機能の評価など諸家により数多くの報告がなされている.しかし,それらのほとんどは平衡機能において重要な前庭系,視覚系,体性感覚系を含めた中枢神経系の作用を中心に論じられたものである.また,ヒトが立位姿勢を保持する際に直接大地と接触するのは足部であるが,足底あるいは足指の機能と立位姿勢の関係については,藤原ら1~3)の報告があるのみで,リハビリテーション医学の分野においても,現状では,月村4,5)の報告以外はほとんど皆無である. 最近では足部の変形,特に女性における履物による外反母指などの足指の変形に対する関心6)も高まっており,足指が立位姿勢保持においてどのような働きをするかを,検索する必要性を感じた. そこでわれわれは,まず立位姿勢保持における足指の作用について,母指と他の足指との機能的役割の違いに着目した.その検索方法として,健常人を対象にし足指を免荷した場合の足圧中心動揺の測定を,今回は外乱刺激を与えずに月村4)によるクロステスト(後述)を応用して行ない,その結果若干の知見を得たので報告する.
著者
山本 大誠 奈良 勲
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.97-104, 2006-03-20

この論文は精神疾患の理学療法に関する課題と展望について議論するものである。理学療法は身体的健康を維持するために不可欠である。また,身体的健康は精神保健に対して寄与している。しかし,わが国では精神疾患患者への理学療法による身体運動は確立されていない。精神疾患の治療は,主に医師,看護師,作業療法士,精神保健福祉士によって行われている。理学療法は身体症状の改善が主な役割であるとされ,精神科領域では重要視されてこなかった。しかし,近年では精神疾患患者に対する適正な医療が見直され始め,精神医療におけるリハビリテーションの重要性がさらに高まってきた。そして,精神科領域における身体医療の必要性から,理学療法の取り組みが期待されている。精神科領域のリハビリテーションにおいて理学療法を導入し,他職種と連携して取り組んでいくことが望ましい。