著者
佐藤 智子 黒岩 幸子 佐々木 肇
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.215-243, 2000-11-01

1999年9月、岩手県の全市町村に対して実施した「姉妹都市および国際交流に関するアンケート」は、100%の回収率で集計、分析を行った。岩手県内の9市町およびその提携先であるアメリカ、カナダ、オランダの8都市については、現地に出向いて調査も行った。これらの結果を総合することにより、岩手県の市町村レベルにおける姉妹都市および国際交流の現状と問題をある程度把握することができた。政治・経済・文化の中心地東京から遠隔の地というイメージが強く、国際化や国際交流とは疎遠と思われている岩手県だが、県内59市町村の約3割にあたる18市町村が10カ国23市町と姉妹都市提携を行っており、市町村レベルでの積極的な国際交流への取り組みの姿勢が見られた。岩手県の姉妹都市交流の特徴は、欧米先進国志向、青少年交流、官主導に集約される。この三つの特徴は、岩手県の姉妹都市交流の推進力であると同時に、交流の意義や継続にかかわる問題も孕んでいる。交流の問題点および今後の課題としては、民間レベルでの交流の拡大、アジア諸国との交流、姉妹都市交流の意義と目的の見直しがあげられる。
著者
米地 文夫 土井 時久 木村 清且
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.45-62, 2006-12

賢治寓話「黒ぶだう」の舞台である公爵別荘のモデルは,1926年に建てられ花巻市街に現存する洋館,菊池捍(きくちまもる)邸であることが明らかにされた(米地・木村,2006)。「黒ぶだう」とその他の賢治作品および菊池捍と彼の周辺の人物や事物を詳細に分析・検討した結果,この寓話は,建物ばかりでなく,建主の花巻出身で北海道清水町の明治製糖工場長であった菊池捍とその義兄佐藤昌介に深く関わるストーリーであることがわかった。「黒ぶだう」のあらましは,次の通りである。赤狐に誘われた仔牛が,留守中のべチュラ公爵別荘に入り,黒ブドウを食べる。狐はブドウの汁を吸って他は吐き出し,仔牛は種まで噛む。公爵一行が帰ってきたので,狐は逃げるが,残された仔牛はリボンを貰う。種まで噛む仔牛の登場は,製糖工場が甜菜を搾って糖液を採り,滓は乳牛の飼料として販売したことと関わる。また,華族を別荘の持ち主にしたのは,捍氏夫人の兄佐藤昌介北大総長が叙爵される時期であったからと考えられる。野生の狐はうまく逃げ,家畜の牛は残って人間との関係を深める,という寓話「黒ぶだう」には,野生動物も家畜もそれぞれが生きてゆける世界,賢治が酪農に期待をこめて描いた北海道と岩手とを重ねる北方的イーハトヴ,など小さな理想郷が見られるのである。「黒ぶだう」の執筆時期は,菊池捍邸完成時期,使用原稿用紙,叙爵時期,チェロの登場,などの諸点に基づいて,1927〜1928年と推定した。
著者
佐藤 智子 佐々木 肇
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.103-125, 2008-03

1992年釜石市を主会場として三陸・海の博覧会が開催されたが、博覧会の目玉のひとつが、ディーニュ・レ・バン市で1億9千5百万年前の地層から発見された、アンモナイト化石群の剥離標本(複製)の展示であった。この標本(複製)製作に力を貸したのが、ディーニュ・レ・バン市にあるオート・プロヴァンス地質学研究所であったことが縁で、釜石市は同市を知ることになった。市関係者の相互訪問を経て、1994年両市は姉妹都市提携を締結したが、最初の数年間は児童・生徒の絵画交換交流が続いたものの、2000年以降その交流は途絶えた状態になっている。本論では最初に、太平洋に面している海の町釜石市と、アルプスの麓にある山の町ディーニュ・レ・バン市がどのようにして知り合ったのかを詳しく解明した。そして次に、姉妹都市提携後どのような交流へと発展していったのか、その軌跡を辿った。さらに、初動期が過ぎると、瞬く間に交流活動が停止状態に陥ってしまった原因はどこにあるのかを考察した。最後に、両市の姉妹都市交流復活の道を探るべく、いくつかの提言を試みた。