著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.247-261, 2006-03-01

1855年の日魯通好条約で日露国境が画定し、南千島は日本領となった。明治期から定住者も増えて、北千島とは異なり、根室と有機的に結びついた経済圏が成立してゆく。漁業・水産業を中心とする内国植民地的な発展は、1945年のソ連軍侵攻とその後の日本人強制退去によって終焉し、ソ連/ロシアによる実効支配が現在まで続いている。日本は、1960年代から南千島を「北方領土」と呼び、「日本固有の領土」としてロシアに返還要求しているが、南千島90年間の日本時代の実態を知る人は少ない。本稿は、南千島における日本人社会の成立とその構造、ソ連侵攻と占領下の南千島、日本人強制退去のプロセスを、元島民の目から明らかにするものである。
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.27-62, 2004-09-30

1955-56年の日ソ交渉を契機として、日本政府は、サンフランシスコ平和条約で日本が放棄した千島列島に南千島(択捉・国後)は含まれないとの立場をとり始め、それ以降、択捉、国後、色丹、歯舞は「北方領土」と呼ばれるようになった。「北方領土」が四島を指す固有名詞として定着すると同時に、千島列島は切断され、カムチャッカと道東を結ぶステッピング・ストーン(踏み石)としての役割も、かつて列島全体に居住していた先住民の歴史も捨象されてしまった。千島列島には、先史時代から現在までに、先住民共同体・日本人社会・ロシア人社会という三つのトポス(場所)が生成している。本稿は、日本とロシアという近代国家の邂逅と国境画定のプロセスの中で崩壊していった千島の第一のトポス、主にアイヌ共同体の盛衰をたどることによって、北方領土問題の歴史的側面を明らかにするものである。
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.179-196, 1999-07-31

1992年4月、ビザ無し渡航が始まり、根室花咲港がロシア船に対し解禁になると、根室と四島の交流は急速に進んだ。相互訪問の中で、四島の現状が明らかになり、現島民であるロシア人との親交も生まれた。根室に上陸するロシア人船員の数は年間延べ2万人に達し、海産物の水揚げとともに根室経済の活性化の新しい要因となっている。1997年11月、クラスノヤルスクで行われた日露非公式首脳会談で、2000年までの日露平和条約締結を目指し、双方が全力を尽くすとの合意が達成された。根室住民は、四島との自由往来や一体化した経済圏としての繁栄など、現実的な利益をもたらす領土問題の解決を望んでいる。領土問題の解決に不可欠と考えられている、信頼醸成、経済関係の強化、さまざまな協力関係の促進などの要因は、根室と四島の間で、日露国家間に先行して進んでいる。
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.185-197, 0000

岩手県久慈市とリトアニアのクライペダ市は、琥珀を産出する小規模な沿岸都市という共通点から1989年に姉妹都市提携した。当時、ソ連邦離脱による独立回復を目指すリトアニアは、ソ連政府と対立して制裁を受けていた。久慈市は、日本政府に先んじてクライペダ市の支援活動に踏み切り、大胆な自治体外交を展開する。その結果、両市民間に友情と連帯が生まれ、両市は距離や体制の差異を超えてユニークな交流を育んでいる。
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
リベラル・アーツ (ISSN:18816746)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.53-69, 2007

The territorial dispute has prevented Japan and Russia from signing a peace treaty for six decades after World War II. Today the Japanese government claims "The Northern Territories" as inherent Japanese territories, though for about 20 years after the war there had been no consensus in Japan on what lands the Soviet Union should give back. Some demanded all of the Kuril Islands ; others sought only the southern Kurils. Japan's first postwar claim to the Kurils came in the form of a petition, submitted by the Mayor of Nemuro to General MacArthur in December 1945. Until 1951, five more petitions were also submitted to the GHQ from Nemuro, where 90% of the former inhabitants of the Kurils had lived. This article analyses the logic of the territorial claim by the people of Nemuro on the basis of these petitions. It also analyses the Japanese official position toward this issue and clarifies how the national policy of the return of "The Northern Territories" had been formed.
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
リベラル・アーツ (ISSN:18816746)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.95-103, 2015

This is a report of a research trip from August 3 through August 9, 2014 to borderlands of Northeast China. Starting from Changchun, the author made a round trip of approximately 1,700km via Jiamusi, Mudanjiang and Yanji by railway. Historical places of Manchukuo (Japanese puppet state, 1932-1945) still remain along the railway lines. Both Heilongjian and Jilin Provinces have borders with Russia, and Yanbian Korean Autonomous Prefecture in Jilin Province has a border with North Korea.Railway construction in Northeast China was started by the Russian Empire at the end of the 19th century and was continued by the Japanese Empire in the first half of the 20th century. In the period of Manchukuo, South Manchuria Railway Company (Mantetsu) performed an important role for the Japanese domination over Manchuria. After the establishment of the People's Republic of China, the whole railway was nationalized.Being connected to Russia by land and having good access to the Japanese See, border regions of Northeast China have possibilities for further economic, social and cultural development.
著者
林田 理惠 横井 幸子 黒岩 幸子 宮崎 衣澄 金子 百合子 山本 有希 柳町 裕子 熊野谷 葉子 堤 正典 小林 潔 小田桐 奈美 角谷 昭美 加藤 純子 北岡 千夏 佐山 豪太 竹内 敦子 ボンダレンコ オクサーナ 三浦 由香利 宮本 友介 依田 幸子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

国内ロシア語教育各機関における教育カリキュラムの質的評価を行い,問題点を明確化,さらに各機関における語学能力到達度の相互比較を実施した.また全国高校・高専・大学ロシア語学習者1114名を対象にアンケート「ロシア語とロシア語学習に対する意識調査」を実施,量的・質的分析に基づき学習者の動機づけと学習環境との相関性観察を行った.国内外でその結果を発表,ロシア語学習者の傾向を明らかにし,ロシア語教育のあるべき方向性について明確な指針を提示した.さらに,カリキュラム・教材開発,指導方法,評価システム,就職関連情報等について,各機関教員の共同利用サイト『ロシア語教育支援・就職情報』を構築し公開した.
著者
エヴァンズ キャトリン 黒岩 幸子 三宅 禎子
出版者
岩手県立大学
雑誌
リベラル・アーツ (ISSN:18816746)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-17, 2008

大学の語学教育の現場では、時間的制約や学生の学習意欲の低下などの問題を抱えながらも、コミュニケーション能力の向上に重点を置いた様々な取り組みがなされている。本稿は、ビデオ撮影の手法を授業に取り入れた3ケース(岩手県立大学の第二外国語としてのロシア語およびスペイン語、同大学短期大学部国際文化学科の英語)を検証し、その効果と問題点を明らかにしたものである。3ケースともに、大学所有の施設や機器を使って、小グループの学生によるスキット作成やスタジオ収録、学生自身がビデオ機器を駆使したプレゼンテーションやビデオ番組の作成を授業の枠内で行っている。文法や語彙の理解と暗記に偏りがちな受身の語学学習とは異なり、ビデオ撮影は、学生が主体となって構想から実践まで関わる点で、ユニークな効果が見られる。第二外国語の場合は、ビデオ収録によって学習成果がビジュアル化されることが学習者への刺激となる。すでに中学・高校で6年間学んできた英語の場合は、簡単な日常会話だけでなく、テーマに即した発信型のビデオ作成も可能である。スキットやビデオ作成のプロセスでも、新しい語彙や表現の獲得、共同作業によるクラスの活性化などのメリットが見られる。ただし、ビデオ撮影は、シナリオ作成や準備などに、かなりの時間と労力を要するため、授業に導入するには、綿密な計画と教員による指導が必要である。
著者
佐藤 智子 黒岩 幸子 佐々木 肇
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.215-243, 2000-11-01

1999年9月、岩手県の全市町村に対して実施した「姉妹都市および国際交流に関するアンケート」は、100%の回収率で集計、分析を行った。岩手県内の9市町およびその提携先であるアメリカ、カナダ、オランダの8都市については、現地に出向いて調査も行った。これらの結果を総合することにより、岩手県の市町村レベルにおける姉妹都市および国際交流の現状と問題をある程度把握することができた。政治・経済・文化の中心地東京から遠隔の地というイメージが強く、国際化や国際交流とは疎遠と思われている岩手県だが、県内59市町村の約3割にあたる18市町村が10カ国23市町と姉妹都市提携を行っており、市町村レベルでの積極的な国際交流への取り組みの姿勢が見られた。岩手県の姉妹都市交流の特徴は、欧米先進国志向、青少年交流、官主導に集約される。この三つの特徴は、岩手県の姉妹都市交流の推進力であると同時に、交流の意義や継続にかかわる問題も孕んでいる。交流の問題点および今後の課題としては、民間レベルでの交流の拡大、アジア諸国との交流、姉妹都市交流の意義と目的の見直しがあげられる。