著者
宮内 倫也
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.1182-1187, 2017-09-15

Case日常型の心的外傷を有する一例患者:23歳、女性。発達に特記事項なし。小学校から大学まで、交友関係は平穏であった。現病歴:大学卒業後に、就職し働いていた。仕事中に泣いていることがあり、同僚が心配して受診を勧めた。診察中に本人から自発的には語られなかったが、医師から「昔あった嫌な記憶がフッと湧き出して、つらくなることはないか」と問うたところ、「入社当時に部長から大声で怒られたことを、突然思い出しちゃう。忘れようとしてもできなくてつらくて、夢にも出てきてうなされる」と話した。「そのようなつらいことがあれば、苦しくなるのも無理はないだろう。そのなかで頑張っているし、よく話してくれた」とねぎらい、四物湯と桂枝加竜骨牡蛎湯を2包/日ずつ処方した。4週間後には改善しており、表情にも優雅さが戻ってきた。
著者
内原 俊記 融 衆太
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.1507-1509, 2019-12-15

認知障害やParkinson病の背景となる疾患は多様で、臨床診断が病理と異なる割合は、Parkinson病で25%1)、認知症では15〜70%に及ぶとの報告がある2)。髄液や画像所見を用いて診断精度を向上させようとする研究は盛んで、病態の一端を反映していることは確かだが3)、最終病理診断を参照して、これらの臨床検査の精度を評価した研究はほとんどない。臨床診断との相関を見ているこれらの検査は、たとえ理論的背景があっても、臨床診断の精度を超えることはないことを念頭に置く必要があり、診断の確定には病理解剖が不可欠である現状に変わりはない。 各疾患についての臨床像は本特集の別稿に譲り、本稿では、臨床診断と病理診断がどのように乖離するかについて解説する。
著者
玉野井 徹彦 齊藤 裕之
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.29, no.10, pp.1230-1234, 2019-10-15

プレゼンテーションとは、「聞き手がその考えに同意し実行するよう促すこと」であり、学会発表や勉強会以外でも、外来診療やプライベートなどその機会は多いものです。それにもかかわらず、上手くいかないことがあるのはなぜでしょう? その理由を調べていくなかで、「プレゼンテーションの型」の存在に気づきました(図1)1)。「もっと早く知っていたら…」と過去の私への思いも込めて、本稿にて「その型=極意」を解説します。
著者
西澤 徹 谷浦 武仁 山田 瑞穂 青山 幾子 弓指 孝博
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.173-176, 2018-02-15

病歴患者:56歳、男性。主訴:鼻汁、咽頭違和感。病歴:来院前日の昼食(自炊のお好み焼き)摂取後から、急に水様鼻汁と咽頭違和感をきたした。来院当日朝、鼻汁と咽頭違和感は軽快していたが、「風邪薬」を希望して内科外来を受診した。病人・動物との接触歴や最近の旅行歴はなく、寒気、発熱、頭痛、眼・耳症状、嚥下痛・嚥下困難、嗄声、喘鳴、咳嗽、呼吸困難、腹痛、下痢、皮疹、瘙痒感、立ちくらみは自覚しなかった。既往歴:特記事項なし。薬剤歴:なし。サプリメント・漢方なし。アレルギー歴:小児期に喘息。家族歴:特記事項なし。生活歴:独居(単身赴任)、数年来性交歴(-)。喫煙:never smoker。飲酒:焼酎水割り3杯/日。職業:サラリーマン(営業職)。
著者
青島 周一
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.954-958, 2018-07-15

処方カスケードとは 薬物有害反応によりもたらされた身体症状が「新たな医学的プロブレム」と誤認されてしまい、その治療のために他の薬剤が追加で処方されることがあります1)。 たとえば、アムロジピンの薬物有害反応として下肢浮腫があげられますが、この浮腫がアムロジピンによるものと認識されずに、利尿薬が追加投与されてしまう、というような状況です。また、追加投与された利尿薬が頻尿症状をもたらし、さらに抗コリン薬の追加投与につながってしまうこともあるでしょう。
著者
大田 貴弘
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.537, 2019-05-15

gestalt 暗い中、側臥位で片眼(例:右眼)を枕にうずめ、左眼だけでスマートフォン(スマホ)の明るい画面を見る状況(図1)を想定する。スマホを消し両眼視に戻ると、うずめた枕の暗さに適応していた右眼に比べ、明るい画面に適応していた左眼は暗順応に時間を要し、一時的に見えづらく感じる現象のことを指す1)。
著者
丸山 哲弘
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.232-238, 2016-03-15

21世紀は「脳の世紀」といわれて久しく,現在多数の科学者により脳機能の解明に全力が注がれている.脳機能の解明とともに神経疾患の病態などの研究が進歩しており,最近の神経疾患の治療は目覚ましいものがある.“不治の病”といわれたParkinson病やAlzheimer病などの神経変性疾患においても病態解明が進み,症状緩和である対症療法から疾患そのものをターゲットにした根治治療に,大きな期待がかかっている.さらに将来的には,遺伝子操作のできる創薬が開発され,疾患撲滅につながることが期待される. しかしながら,現実に目を向ければ,現在悩んでいる患者をどのように治療してあげればよいのか目の当たりにし奮闘されているのは,現場の医療を支えているプライマリ・ケア医である.神経疾患を診療するなかで,現在使用可能な現代医療をもってしても治療困難を極める愁訴や症状がまだまだたくさんある.しかしたとえ神経難病であっても,プライマリ・ケア医は患者と向き合って,少しでもQOLを高めるために治療しなければならない.