著者
武市 尚也 石阪 姿子 西山 昌秀 堅田 紘頌 山川 留実子 平木 幸冶 井澤 和大 渡辺 敏 松永 優子 松下 和彦
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.18, 2009 (Released:2009-08-11)

【目的】 昨今,筋力評価法の一つとして,簡便な筋力評価機器であるHand Held Dynamometer (HHD)を用いた方法が活用されている。また,一般的に筋力増強運動の負荷設定の方法としては,1 Repetition Maximum(1RM)が用いられる。しかし,入院患者を対象とし,HHDで測定した値をもとに1RMの予測の可否について詳細に検討されている報告は少ない。本研究の目的は,膝伸展筋に限定し,1RM法の再現性およびHHD値からの1RMの予測の可否について明らかにすることである。 【方法】 対象は,当院リハビリテーション科において理学療法施行中の入院患者134例268脚(男性71例,女性63例)である。このうち,1RMの再現性は,20例40脚(男性10例,女性10例)を対象とした。1RMの測定肢位は,体幹を60度後傾した端座位とした。検者は,測定側の大腿遠位部を固定後,重錘を対象者の下腿遠位部に負荷し,下腿下垂位から膝関節を完全伸展するように指示した。そして最終挙上位で3秒保持可能な最大重錘量(kg)を1RMとした。なお1RMは,3日以内に同方法で2度の測定を行った。 HHDは,アニマ社製μ-tasF1を用い,測定肢位は,端座位,膝関節屈曲90度とした。検者は,圧力センサーを対象者の下腿遠位部に固定し,下腿下垂位から膝関節を伸展するよう指示した。HHDの測定は,左右3回施行し,その等尺性膝伸展筋力値(kgf)をHHD値とした。なお患者背景は,基礎疾患,年齢,身長,体重を診療記録より調査した。解析には,級内相関係数(ICC)および1RM法による膝伸展筋力値を従属変数,HHD値を独立変数とする単回帰分析を用いた。統計学的有意差判定の基準は5%とした。 【結果】 1.基礎疾患および各指標の平均値 疾患の内訳は呼吸器47例,循環器38例,代謝23例,消化器18例,その他8例であった。各指標の平均値は,年齢:70.0±13.5歳,身長:157.3±9.5cm,体重:51.6±11.1kg,1RM:4.6±2.2kg,HHD値:22.5±10.0kgfであった。 2.1RMの再現性 1RMは1回目:4.2±2.1kg,2回目:4.4±2.2kg,ICCは0.93であった(p=0.01)。 3. HHD値と1RMとの関連 解析の結果,1RM=HHD値×0.183+0.474 (R=0.82,R2=0.67,p=0.02)の予測式が得られた。 【考察】 1RMの再現性は,ICCが0.93と良好であった。また,HHD値から1RMが予測できることが明らかとなった。以上より,HHDによる筋力評価で得られた値から,膝伸展筋力増強時の負荷設定が可能と考えられた。
著者
唐澤 俊一 青木 啓成 村上 成道
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.123, 2009 (Released:2009-08-11)

【目的】上腕骨近位端骨折に対する骨接合術は、プレートや髄内釘などを用いて施行されるが、臨床上、関節可動域が十分に確保されないまま理学療法(以下、PT)を終了する症例が散見される。また、骨接合術後のPTに関する報告は少なく、その要点は明らかにされていない。今回、骨接合術後症例の経過からPTプログラムについて検討する。 【方法】対象は、2003年4月から2008年9月までに当院整形外科にて手術を施行された15例(男性7例、女性8例)、プレート固定8例(LHSP2例、PHILOS6例)、髄内釘固定7例、平均年齢60.9±13.5歳。術後PTは2日以内に開始された。退院後は外来リハビリへ移行した。PT終了時の他動屈曲角度(以下、屈曲)120°以下を成績不良群として、成績良好群との比較を行なった。調査項目は、術式、年齢、術前待機期間、PT内容、骨癒合と転位やスクリューの緩みの有無、屈曲の経時的変化および改善率(各時期の前回の値を基準値として、各時期の値/基準値×100-100)、PT終了時の平均屈曲として調査し、屈曲の経時的変化と改善率は、術後1週、2週、3週、6週、3ヶ月、6ヶ月の値から算出した。 【結果】成績良好群11例、不良群4例。術式は、良好群プレート6例、髄内釘5例、不良群プレート2例、髄内釘2例。平均年齢は、良好群57±12.3歳、不良群71.8±11.6歳。平均術前待機期間は良好群5.8±2.7日、不良群12.5±10.1日。PT内容は、翌日から振り子、他動運動開始、3週より積極的な自動運動を開始。良好群1例に大結節の上方転位を認めたがほぼ全例骨癒合した。スクリューの緩みは両群1例ずつであった。屈曲の変化は、良好群では術後6週までに終了時屈曲の約90%が確保されていたが、不良群では2週から6週の可動域は停滞する傾向にあった。改善率は、良好群1週~2週12.4%、2~3週5.7%、3~6週8.4%、6週~3ヶ月4.6%、3~6ヶ月2.7%。不良群1~2週14.4%、2~3週-0.5%、3~6週4.2%。終了時平均屈曲は良好群159.1±8.6°、不良群112.5±8.6°であった。 【考察】術後成績においては、高齢、術前待機期間の長期化による関節内の瘢痕組織形成、早期のスクリューの緩みによる疼痛などが影響を与えると考えられた。肩甲胸郭関節の柔軟性低下、創部や関節内の炎症に伴う肩甲帯の緊張は、肩甲上腕関節の運動を阻害するため、安易に振り子運動や他動運動を進めるべきではないと考える。術後2週までの期間では、過度な緊張を抑え、肩甲胸郭関節の動きの獲得に重点を置く必要がある。特に可動域拡大の難渋が予測される症例では、2週以降に生じる関節内の組織間の癒着や軟部組織の連結障害を重視し、肩甲上腕関節の運動性の低下を最小限に抑える必要がある。
著者
伊藤 昭 田中 隆晴 上井 雅史 平野 弘之(MD、PhD)
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.117, 2009 (Released:2009-08-11)

【目的】平成18年4月に厚生労働省が「医療機能の分化・連携と在宅生活への早期復帰」を掲げた。平成20年8月時の一般病床平均在院日数が18.8日と、平成15年の20.7日に比べ短縮した。在宅リハビリテーション(以下:リハ)を担う診療所リハの役割が重要になってきた。今回、我々は診療所の運動器リハ開設から1年8ヶ月間の運動器リハの来院数の推移、疾患群別来院比率及び天気変化による来院数変化の関係について検討した。 【対象】平成19年6月~平成21年1月の間に運動器リハを行った512例(男性131、女性381)平均年齢が66.2±16.3歳であった。 【方法】平成19年6月~平成21年1月までの月別来院数を集計した。対象の疾患を肩関節疾患群(以下:肩群)腰部疾患群(以下:腰群)膝関節疾患群(以下:膝群)頸部疾患群(以下:頸群)2種類以上の疾患複合群(以下:複合群)骨折後リハ群(以下:骨折群)手術後リハ群(以下:手術群)及びその他群(脳血管障害、難病等)に分け検討した。天気と来院数の変化の関係を気象庁のデーターを参考に検討した。 【結果】平成19年6月の一日平均リハ施行者数が40.3名で、平成20年12月には66.3名となった。対象疾患割合がそれぞれ、肩群8.3%腰群23.9%膝群15.7%頸群8.7%複合群25.7%骨折群1.9%手術群5.3%及びその他群10.5%であった。開設後に手術治療を施行した症例が6例であった。晴れ曇り雨の日及び日内気温変化が7度以上の来院率に有意差がなかった。悪天候日に来院率が上昇した群がその他群及び複合群で、下降した群が肩群及び膝群であった。前日との気圧が10hPa降下したとき肩群及びその他群の来院率が上昇し、腰群が下降した。他の群に変化がなかった。 【考察】平成19年6月から平成20年12月までに一日平均リハ施行者数が64.5%増加した。1998年の厚生労働省調査で日本の有訴率が腰痛、肩こり及び四肢関節痛の順に多く、日常生活及び外出に影響ある者が65歳以上で11%あった。当院の約8割の対象症例に同様の症状を認め、痛みで日常生活に影響する程になると症状の悪化防止・改善目的で来院すると考えられる。天気の変化では悪天候日及び気圧下降でその他群の来院率が上昇した。その他群の内訳が52%が脳血管障害、パーキンソン氏病等の難病疾患で19%が50歳以下の症例であった。他群と異なり付き添い者が多く、若く、ニーズ及びモチベーションが高い為天候に左右されず来院したと考えられる。また、その他群と肩群が気圧変化に伴う疼痛の変化が少ないと考えられた。一方、腰群は佐藤らと同様に気圧降下で痛みが増強し外出を控えたと考えられた。
著者
齋藤 透
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.6, 2009 (Released:2009-08-11)

【目的】今回は過度な右側弯・前屈姿勢で腰痛、右下肢の痺れを呈する58歳の若年性parkinson病(以下PD)患者を担当した。入院から外来を通じて治療経過を追うと共に、在宅での生活を加味した管理とリハビリ、注意点に対して再考慮したい。 【症例紹介・方法】症例はH8年に字の書き難さで発症。徐々に前屈・非対称姿勢、右側優位の固縮・振戦を認め、H18年よりシルバーカーを使用。同時期より転倒回数の増加並びに腰痛をきたした。報告時はYhar4。今回は薬剤性の意識障害・異常行動のため入院。座位保持は右上肢優位での支持を要し、歩行は二つ折れの姿勢で前方突進はあるが可能。needは「姿勢を真っ直ぐにしたい」ということであった。治療は1回40分、計4回、外来で週1回、数回の運動療法を実施。起居動作、姿勢、歩行をビデオ撮影し、また検査項目としてTimed Up and Goテスト(以下TUG)の治療前後の比較(シルバーカー使用)。治療に繋げる視点から動作の問題点を検討、自宅での練習及び管理状態を調査した。尚、症例より掲載の承諾を頂いた。 【結果】TUGの治療前後は23秒から34秒(2/13)、32秒から40秒(2/23)と増加した。治療前後では立ち上がり方、姿勢、前方突進が改善、腰痛・下肢の痺れは減弱、また転倒回数が減少した。 【考察】結果より時間の延長を認めた要因は、本人が対象姿勢を意識し、ゆっくり動作を行っているためと思われる。非対称姿勢の主要因は右肋骨と骨盤間の伸展活動の低下、二次的要因に右股関節の屈曲内旋固定が見られた。左記に着目し姿勢改善を図ることで運動のbaseとなる全身の筋緊張が整い、体幹の抗重力活動が向上したためと考える。治療場面は背臥位で四肢の運動から体幹の支持性を高め、段階的に立位で体幹を空間で保持をするようにしたことが姿勢に関して認識しやすかったと思われる。自宅での姿勢管理では坐位時は机上に両肘を着き非対称姿勢の管理を喚起し、左殿部に支持面を持つように意識付けし対称的な姿勢に近づけたことが腰痛低下・治療効果の持続に繋がったと考える。 【まとめ】今回対称的な体幹、抗重力活動を再学習し視覚的な情報により再確認し、実際の環境を工夫することで数回のリハビリにより改善が図れた。今後の課題として、治療の期間を考慮し学習をどれだけ持続できるかを検討していきたい。