著者
河野 修一 江崎 次夫 原 浩之 村上 博光 木原 辰之 中山 累 寺本 行芳 金 錫宇 全 槿雨 松本 淳一 土居 幹治 村上 尚哉
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.119-122, 2020-08-31 (Released:2020-12-25)
参考文献数
4

集中豪雨で山腹斜面が崩壊した跡地に施工された筋工の平坦部に3年生のヒノキを植栽する際に,活着率の向上とその後の旺盛な成長を期待して,植え穴に「くらげチップ」約100 gを施した。10年後の施用区の樹高は722 cm,根元直径は112.2 mmあった。これに対し,無施用区のそれらは,それぞれ547 cm,84.8 mmであった。施用区と無施用区との間に枯損率,樹高および根元直径共に,0.1%レベルの有意差が認められた。このような相違が認められたのは,土壌改良材の持つ水分保持能力と分解後の栄養分が効果的に作用したことによるものと判断された。しかし,樹高と根元直径の伸長率は10年目で,ほぼ0に近い値となり,その効果の持続期間は10年程度と考えられた。
著者
井内 祥人 岡 勝 寺本 行芳
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.45-54, 2016-01-31

奄美大島では1960年から鹿児島県により林道が建設されているが,梅雨,台風などの大雨により毎年,林道災害を受けている。特に2010年10月に記録的大雨が発生し,24路線58か所の林道災害が発生し道路やライフラインに甚大な被害を与えた(2010奄美豪雨)。奄美大島における過去に開設された林道の施設災害状況を調査するとともに,2010奄美豪雨による災害状況を分析した。その結果,1)施設災害の80%以上が切土法面の災害であること,2)林道開設終了年から約15年経過した1995年付近で林道施設の災害頻度に大きな変化が見られることを見出した。その要因として,林道施設の設計変更の影響が示唆された。次に,崩壊土量に及ぼす諸要因の影響を数量化I類で分析した結果,地質,集水面積,斜面形状,縦断勾配,斜面方位の順に高い影響を及ぼすことが判明した。2012年6月から9月にかけて奄美大島で発生した豪雨災害に適用した結果,高い有意性が明らかとなった。
著者
牧野 耕輔 岡 勝 加治佐 剛 寺本 行芳 芝 正己 中島 徹 長濱 孝行
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.53-62, 2020

<p>牧野耕輔・岡勝・加治佐剛・寺本行芳・芝正己・中島徹・長濱孝行:<b>鹿児島県大隅地域を対象にしたスギ材の幹曲線式の算定と素材品質の実態分析-鹿児島大学高隈演習林を事例にして-,森林計画誌53:53~62,2020</b> 素材生産現場では,収益性が高くなるよう施業が行われているが,品質等級や素材歩留りを決定する採材は,作業者の経験則に依るところが大きいのが実態である。本研究では,生産現場でリアルタイムに情報を収集し,得られた丸太情報の活用可能性について検討した。プロセッサ造材時に伐倒木の端材長,素材長,梢端部長および各末口の鋸断径の計測結果から幹曲線式を作成することで,伐倒木の形状を解析するとともに,素材歩留りと素材の品質等級を推定した。その結果,スギ材の素材歩留りが大隅地域における既往文献の値と矛盾しないことが判明した。また,形状比を指標に品質等級の出現頻度を分析したところ,BC 材は形状比との相関がみられたが,A 材は相関が無く有意差が認められなかった。</p>
著者
寺本 行芳 下川 悦郎
出版者
鹿児島大学農学部演習林
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
no.35, pp.1-9, 2007-12

2007年7月の台風4号に伴う大雨によって鹿児島大学附属高隈演習林で発生した林道法面の崩壊ならびに土石流の実態について調査した。得られたおもな結果は以下の通りである。(1)調査地でみられた斜面崩壊の形態として、林道法面における大隅降下軽石層とその上位の火山灰・軽石層で発生した肩部の崩落、自然斜面における風化土層中への雨水の浸透に起因した表層崩壊、林道法面および自然斜面における雨水の浸透および地下水に起因した深層崩壊が挙げられる。(2)土石流が発生した流域における生産・流出土砂量を現地調査に基づき求めた結果、生産土砂量は4,325m(3)(5,545m3/km(2))、流出土砂量は3,600m(3)(4,615m3/km(2))である。(3)現地調査の結果、流木は針葉樹林で覆われた斜面からだけでなく、広葉樹林で覆われた斜面からも発生していた。斜面崩壊に伴って生産された226m(3)の流木のうち、72m(3)が河道内で捕捉、125m(3)が流域最下流地点に流出、29m(3)が流域最下流地点より下流に流出している。