著者
平田 令子 畑 邦彦 曽根 晃一
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.187-191, 2009-10-24 (Released:2009-11-01)
参考文献数
21
被引用文献数
6 2

針葉樹人工林への広葉樹や草本植物の侵入に種子散布者として関わる鳥類を明らかにするために,スギ人工林内とその周辺で鳥類を捕獲し糞を採取した.秋~冬季には5種9個体の糞から無傷の種子が出現し,ルリビタキErithacus cyanurusの糞からイズセンリョウMaesa japonicaとフユイチゴRubus buergeriの種子,シロハラTurudus pallidusからヒサカキEurya japonicaとムラサキシキブCallicarpa japonica, ハダカホオズキTubocapsicum anomalum,ソウシチョウLeiothrix luteaからヒサカキ,ウグイスCettia diphoneからフユイチゴ,メジロZosterops japonicusからツルウメモドキCelastrus orbiculatusの種子が出現した.春~夏季にはカケスGarrulus glandariusからナガバモミジイチゴRubus palmatus var. palmatusの種子が出現した.これらのことから,これら6種は針葉樹人工林において種子散布者としての役割を持つと考えられた.
著者
平田 令子 高松 希望 中村 麻美 渕上 未来 畑 邦彦 曽根 晃一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.113-120, 2007 (Released:2008-05-21)
参考文献数
25
被引用文献数
14 6

スギ人工林へのマテバシイの侵入に係わる野ネズミの働きを解明するため,2003年4月から2005年1月まで,鹿児島大学演習林内の常緑広葉樹林とそれに隣接するスギ人工林において,堅果の落下状況,野ネズミによる堅果の散布状況,マテバシイ稚樹の生育状況を調査した。自然落下による分散距離は平均2.4m,人工林への侵入距離は最大4.4mであった。2003年と2004年の秋に200個ずつ設置した磁石付き堅果のうち,それぞれ66個,58個を野ネズミは人工林内に運搬し,林分の境界から貯食場所までの距離は,2003年は最大34.5m,2004年は18.5mであった。2003年の貯蔵堅果のうち6個は翌春まで人工林内に残存した。人工林内のマテバシイ稚樹の生育密度は林分の境界から距離とともに減少したが,境界から10m以内は広葉樹林内と有意差がなかった。以上のことから,人工林へのマテバシイの侵入に野ネズミは種子散布者として大きく貢献していると考えられた。
著者
松山 淳子 畑 邦彦 曽根 晃一
出版者
鹿児島大学農学部演習林
巻号頁・発行日
no.34, pp.75-80, 2006 (Released:2011-03-05)

2001年5月から12月にかけて、鹿児島大学農学部附属高隈演習林(鹿児島県垂水市)の3林分と鹿児島市城山において、ホンドタヌキの新しい糞を採取し、その内容物を調査した。タヌキの糞には、植物の種子、果肉、組織、昆虫類、その他の節足動物、軟体動物、ほ乳類や鳥類の骨などが含まれていた。このうち、夏は昆虫を中心とした動物が多く含まれ、秋から初冬にかけて植物の種子や果肉の割合が増加した。糞に含まれる昆虫や種子の種類は林分間で異なり、市街地と接している城山では、人間の生活に関連していると考えられるプラムやウメの種子の他に、ビニールやアルミホイル、布なども回収された。これらの結果から、タヌキはその生息環境に応じて、その食性を変化させる能力を持っていると考えられた。人間との接触機会が増加しているタヌキの個体群の保全について考察した。
著者
松山 淳子 畑 邦彦 曽根 晃一 MATSUYAMA Junko HATA Kunihiko SONE Koichi
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
no.34, pp.75-80, 2006-12

We examined the fecal contents of the raccoon dog,Nyctereutes procyonoides Gray,collected in three evergreen broad-leaved forests of Takakuma University Forest of Kagoshima University,Tarumizu,and an evergreen broa-leaved forest at Shiroyama,Kagoshima,from May to December 2001. Feces contained seeds,sarcocarp,plant fragments,insects and other arthropods,shells of molluscs,animal bones,and others. In summer,insects occupied the majority of the fecal contents,while,in autumn and early winter,seeds and sarcocarp became dominant. Species composition of the insects and trees extracted from the feces varied among the forests and seasons. The feces collected at Shiroyama,surrounded by the urban district of Kagoshima,contained seeds of prune and Japanese apricot and fragments of vinyl,aluminum sheet,and cloth. These results suggest that raccoon dogs have a flexible food habits and can change their food items in response to food composition in their habitats. We discussed how to conserve raccoon dog populations urban forests where the interference between raccoon dogs and human activity has been increasing.2001年5月から12月にかけて,鹿児島大学農学部附属高隈演習林(鹿児島県垂水市)の3林分と鹿児島市城山において,ホンドタヌキの新しい糞を採取し,その内容物を調査した。タヌキの糞には,植物の種子,果肉,組織,昆虫類,その他の節足動物,軟体動物,ほ乳類や鳥類の骨などが含まれていた。このうち,夏は昆虫を中心とした動物が多く含まれ,秋から初冬にかけて植物の種子や果肉の割合が増加した。糞に含まれる昆虫や種子の種類は林分間で異なり,市街地と接している城山では,人間の生活に関連していると考えられるプラムやウメの種子の他に,ビニールやアルミホイル,布なども回収された。これらの結果から,タヌキはその生息環境に応じて,その食性を変化させる能力を持っていると考えられた。人間との接触機会が増加しているタヌキの個体群の保全について考察した。
著者
平田 令子 平井 周作 畑 邦彦 曽根 晃一
出版者
鹿児島大学農学部演習林
雑誌
鹿児島大学農学部演習林研究報告 = Research bulletin of the Kagoshima University forests (ISSN:13449362)
巻号頁・発行日
no.36, pp.23-27, 2009-03

2008年10月2日〜11月5日までの期間中に10日間、鹿児島大学構内において上空を通過するヒヨドリの群れを午前中に観察した。ヒヨドリの群れが通過する様子は、10月2、8、9、10、12、19日の6日間観察された。ヒヨドリの群れは7〜8時頃の間に見られることが多かった。ほとんどの群れは南西や南南西の方角へ飛去した。群れサイズは7〜80羽、平均33羽であった。10月28日以降はヒヨドリの群れの通過は観察されなかった。この時期に10羽以上の大きな群れを形成し、また、上空高くを飛去する行動は大学構内で観察されるヒヨドリには見られず、これらの群れが、さらに南へ渡る途中のヒヨドリであることが推測された。また、大学上空を通過する途中で6群が大学構内にある植物園や池に一時的に下りた。このことから、本調査地の植物園や池のような都市緑地は、その上空を渡るヒヨドリにとって一時的な滞在場所としての役割を果たしていると考えられた。