- 著者
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鈴木 廣志
谷川 昇
長友 隆行
津田 英治
- 出版者
- 日本甲殻類学会
- 雑誌
- Crustacean research (ISSN:02873478)
- 巻号頁・発行日
- no.22, pp.55-64, 1993-11-10
- 被引用文献数
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2
1986年5月,1987年6月および1990-1991年に,鹿児島県本土からトカラ列島にかけて,陸水産コエビ類の分布調査を行った.また,本土内を流れる川内川,万之瀬川および肝属川では,流程分布調査も行った.採集されたコエビ類は,ヌマエビ科が4属8種,テナガエビ科が2属9種であった.これら17種のうち13種が南方系の種類であったが,北方系の種も4種類出現し,本調査地域は両系の混棲する地域と考えられた.また,今まで沖縄島が北限とされていた,スベスベテナガエビMacrobrachium equidens,コツノテナガエビM. latimanus,およびツブテナガエビM. gracilirostreが大隅諸島(種子島,屋久島,口永長都島)でも採集された.したがって,これら3種の北限は大隅諸島まで引き上げられると考える.3つの河川における流程分布は,従来報告されているように河川形態,ダム,自然の滝などに影響されていることがわかり,河口から傾斜の緩やかな流域にかけては,両側回遊型のミゾレヌマエビCaridina leucostictaやミナミテナガエビMacrobrachium formosenseなどが分布し,ダムや滝などの上流域には,陸封型のミナミヌマエビNeocaridina denticulataやスジエビPalaemon (P.) pauddensのみが分布していた.