著者
丸山 千歌
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要 (ISSN:13447181)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.15-42, 1997-03-31

現在の用法での「〜的」という語は英語からの影響を受け明治十年ごろから使われ始めたようである。ここ100年のうちに急速に使用が広まった「〜的」を調べることは現代日本語の特質を把握することに通じるものと思われる。本稿は,一世代前の1962年の雑誌から抽出された「〜的」を,「〜的」と話題との関係,「〜的」の語種や表記との関係,語の意味との関係などの観点から分析しその使用状況を明らかにする。
著者
小澤 伊久美 オザワ イクミ Ikumi Ozawz
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.37-48, 2002-03-31

学習心理学の新しい動向として「状況的学習論」あるいは「文化的実践としての学び」という学習観が提唱されている。外国語教授法においても「知識の注入」から「文脈を伴った実践的学習」へという動きが見られ,外国語教育も学習心理学の変遷と並行する形で発展しているように見受けられる。本稿では状況的学習論が言語教授法そのものではなく,「教師教育」の在り方に与える示唆について議論する。日本語教育における教師教育の分野でも,教師の実践的能力を高めようという動きはあり,状況的学習論がもたらしたような知識偏重から実践的な学びへのパラダイム転換は始まっているのだと言える。しかし,具体的にどのように実践的能力を高めるかについてはまだまだいくつかの試みが始まったばかりであり,特に「実践的専門家である教師」の熟練性あるいは専門性はどのようなところにあるかという点を分析・考察する方法論が日本語教育ではまだ確立されていない。本稿では,教師が身に付けるべき専門性についてのより具体的な研究が必要であり,教育学の分野で佐藤らが進めている研究は,日本語教育の分野に応用するためには実験対象の選択法など検討を要する点があるものの,方法論として活用しうるものであることを指摘した。
著者
南雲 千歌
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要 (ISSN:13447181)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.72-98, 1994-03-31

"...Teki" words are widely used in modern Japanese language. The affix "teki" was introduced into the Japanese language during the Meiji era, based on the "tic" sound of English adjectives-sytematic, automatic, etc. Establishment of "...teki" word usage in contemporary Japanese language within just a century manifests foreign influence in the diversification of Japanese vocabulary. Imbedded in the characteristics of "...teki" words are certain characteristics of the Japanese language. To study these characteristics, this paper analysed 1152 "...teki" words that appeared in the magazine CHUO-KORON (1992.11). Concluding from the analysis are five distinctive points: (I) Frequency of the usage of "...teki" words is dependent on the article's topic. Frequency of usage is comparatively higher in writings on publics compared to culture, (ii) The type of vocabulary used as prefix differs according to the topic of writing. The variation could be distinct as: (1) Kango, wago, gairaigo in topics on politics and social problems. (2) Kango and gairaigo in topics on culture. (3) Kango and wago in topics on literature. (4) Only kango are used in topics on history, health and advertisement, (iii) Notation of the prefix varies by the type of vocabulary. (1) kango are written in kanji. (2) Wago are written in kanji or kanji+hiragana. (3) gairaigo are written in katakana. (iv) Frequency of repeating the same "...teki" is higher in politics than in literature, (v) The range of the meaning of the prefix varies according to the article's topic.
著者
中村 妙子
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要 (ISSN:13447181)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.27-36, 2000-03-31

中級教育に関心が集まり,そのカリキュラム,教材の開発が行なわれている。そこで,この小論は中級日本語教育とは何かを考えるものである。まず,中級とはどのレベルであるのか,共通の理解が必要である。現在では,日本語能力試験の2級を中級と考えるのがわかりやすい。また,中級のスタートラインははっきりしない。教科書は種々あるが,それぞれ異なる。初級と中級をつなぐいわゆる初中級的なもの,初級とのギャップがあっても,使う側での補足を期待しているものなどである。教科書からは一般的な出発点はたどれない。具体的に国際基督教大学の中級教育についてみると,カリキュラム,教材は完成されてはなく,試用の段階である。ICUの中級は多くの要素を載せなければならない。しかし,これまでの蓄積,現在の日本語教育の成果を活用していけば,難しいことではない。すべてを,教材,カリキュラムに盛り込むのではなく,分からないことを学習者自身が解決する方策を習得させることも必要である。ICUの理念の一翼を担う日本語教育であれば,最適のカリキュラム,教材の確立が急がれる。
著者
小澤 伊久美
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要 (ISSN:13447181)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.37-48, 2002-03-31

学習心理学の新しい動向として「状況的学習論」あるいは「文化的実践としての学び」という学習観が提唱されている。外国語教授法においても「知識の注入」から「文脈を伴った実践的学習」へという動きが見られ,外国語教育も学習心理学の変遷と並行する形で発展しているように見受けられる。本稿では状況的学習論が言語教授法そのものではなく,「教師教育」の在り方に与える示唆について議論する。日本語教育における教師教育の分野でも,教師の実践的能力を高めようという動きはあり,状況的学習論がもたらしたような知識偏重から実践的な学びへのパラダイム転換は始まっているのだと言える。しかし,具体的にどのように実践的能力を高めるかについてはまだまだいくつかの試みが始まったばかりであり,特に「実践的専門家である教師」の熟練性あるいは専門性はどのようなところにあるかという点を分析・考察する方法論が日本語教育ではまだ確立されていない。本稿では,教師が身に付けるべき専門性についてのより具体的な研究が必要であり,教育学の分野で佐藤らが進めている研究は,日本語教育の分野に応用するためには実験対象の選択法など検討を要する点があるものの,方法論として活用しうるものであることを指摘した。
著者
横須賀 柳子
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要 (ISSN:13447181)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.61-76, 2000-03-31

従来の「です・ます体」の研究により「フォーマリテイー」や「ていねいさ」の度合いという観点から教室談話をみると,教師の使うべきスピーチ・スタイルは「です・ます体」が規範だということになる。しかし,近年の談話研究から自然な発話では単一のスピーチ・スタイルが固定的に使われるのではなく,複数のスタイル(「です・ます体」,「だ体」など)が混在し,各スタイル間で頻繁に交替が起こることが明らかになってきている。本稿では,授業場面での教師による「です・ます体」と「だ体」間のスタイルの交替が,発話がもつ命題以外にどのような指標的機能をもっているかという観点から分析,考察を試みた。その結果,教師のスピーチ・スタイルの交替は,状況の公式性,対人関係(自分の立場や相手の言語能力についての認識)を規定していることが明らかになった。
著者
中村 妙子
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.11-21, 2002-03-31

国際キリスト教大学(ICU)の日本語教育を一人の日本語教師の立場から振り返る。ICUの日本語教育を振り返るにあたっては,1.コースのカリキユラム及び教授法,2.使われた教科書,教材リストアップ,3.人的組織,4.全体的な日本語教育の流れ,5.ICUにおける日本語教育に対する関心,6.学生による評価などの点から考察できるであろう。それぞれの項目については資料,考証,関係者の聞き取りが必要であるが,小稿では,これらの項目について,現時点で触れられるものについて述べる。さらに,JLPに関することを点描的にふれる。
著者
坪根 由香里
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究センター紀要 (ISSN:13447181)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.23-35, 2002-03-31

日本語の文を生成する際,形式名詞の「こと」は,文脈の中である事柄の代用語となったり,前接する文を名詞化する機能として用いられたりと重要な役割を果たす。また,「もの」は「こと」と対立する概念として学習者にとって理解しにくいものである。本稿では韓国語話者のOPI (oral proficiency interview)データを用い,形式名詞「もの」「こと」の各用法について自然発話での使用状況を調査し,その習得について考察し,習得順序を探った。調査の結果,「もの」「こと」共に,初級から中級,上級から超級の段階で使用数,種類が伸び,中級から上級の段階では,用法の広がりは見られないが形式名詞,名詞化の使用数の増加により,複雑な文を多く産出するようになることがわかった。また,各用法の正用者数の伸びから,中級は形式名詞,名詞化の用法等の構文的に必要な機能が習得される段階,超級は「というもの」「ということ」「Nのこと」や様々な文末表現といった特別なニュアンスを示す用法が習得される段階であると言える。各レベルの正用者の割合を基に本稿で提案した習得順序は,(1)たことがある→(2)もの形式名詞,こと形式名詞,こと名詞化→((3)ことができる)→(4)Nのこと→(5)というもの一般化,こと(は)ない,ということ一般化,ということ内容,であった。誤用については,形式名詞の「もの」と「こと」を混同するものが多く見られた。