著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.89-95, 2011

ユーラシア大陸の乳加工技術と乳製品を、これから約1年にわたって毎月のシリーズで紹介していきたい。 ユーラシア大陸といっても広大である。それぞれの地域で様々な乳加工技術が発達し,珍しい乳製品がつくり出されてきた。バターは発酵乳からつくられることが多く,発酵乳は清涼飲料,チーズなどにも加工され,牧畜民の乳加工において発酵乳の出番は多い。チーズ加工の凝固剤にはレンネットだけでなく,酸乳や有機酸を用い,牧畜民の加工するチーズは熟成させることはない。乳から酒をつくっていたりもする。多くはお世辞にも旨いといえるシロモノではないが,幾つかはキラリとひかる美味しさと利用の仕方とがある。このような牧畜民の乳製品と乳利用とはいったい,どのようなものであろうか。想像するだけでもワクワクしてきて,現地を訪ねてみたくなる。このシリーズでは,西アジア,北アジア,中央アジア,南アジア,チベット高原,ヨーロッパを事例として,乳加工技術と乳製品とを具体的に紹介していきたい。なるべく現地の写真を多く掲載しながら解説していく。シリーズ最初の今回は,乳利用が人類にもたらした生業革命―牧畜の誕生,そして,現在のユーラシア大陸における乳加工の特徴について外観しておきたい。
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.73-81, 2011

インドには,ユーラシア大陸においてインドのみにしか観られない乳加工技術がある。ライム汁(植物有機酸)を凝固剤にしてチーズを加工したり,加熱濃縮系列群の乳加工を採用したりと,大変珍しい技術が存在している。また,乳製品の菓子である乳菓にも種類が多い。鴇田の報告(1992)からも分かるように,類似した乳加工技術や乳製品がインドでは多種多様に発達している(図1)。新しい乳菓を開発しようとしている菓子職人,和食と乳製品との融合を図ろうとしている開発者には,ぜひインドを訪問されてみられるとよい。斬新なアイデアが得られることであろう。 本稿と次号Vol.53 No.7ではインドの都市と農村での事例を中心にして,乳製品の種類とその加工法,そして,利用のされ方について紹介する。インド乳製品の多様性の整理を試みるために,本稿では類型分類法として,乳のみを素材とした乳製品と添加物を付加した菓子的な乳製品とを区別するために,乳のみを原材料として加工した乳製品を「乳のみの乳製品」,乳を主な材料にし,砂糖やナッツ類などを添加して加工した菓子様乳製品を「乳菓」として区別する。「乳のみの乳製品」には,酸乳,バター,チーズ,バターオイル,バターミルク,クリームなどを含み,その製造工程は乳のみを原料とした加工技術により構成される。一方,「乳菓」を加工する工程は,「乳のみの乳製品」に添加物を付加し,乳製品を様々な菓子に加工する乳加工技術となる。本稿では,インドの複雑な乳製品の土台となる「乳のみの乳製品」について先ずは報告する。
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.84-97, 2011

東アジアは,本来,乳文化圏にはない。本シリーズ第1稿目53(1)の伝統的搾乳地帯を示した図1を参照されたい(平田,2011)。日本人,朝鮮人,漢人などの一般市民は,基本的には乳製品を食してこなかった。しかし,東アジアでは,牧畜民系統の北魏(AD 386年〜AD 556年)や元(AD 1271年〜AD 1368年)に長く統治されてきた歴史があり,乳製品の利用を示す古文書が多数残されている。また,日本では,貴族階級の一部の人びとに乳製品が医薬的に利用されていたことが『本草和名』『医心方』などの古文書や木簡に示されている(廣野,1997;有賀,1998)。東アジアの古文書には,酪,乾酪,漉酪,馬酪酵,酥,生酥,熟酥,蘇,蘓,醍醐といった乳製品が登場する。これらの乳製品がいったいどのようなものであったのだろうか,その再現は太古の昔の復元というロマンに満ち,極めて興味深い。 これらの乳製品は,時代と共に生起・消滅する。つまり,参考とする古文書によって,再現対象とする乳製品の内容が異なってくる。本稿では,『斉民要術』をテキストに,東アジアにおける古代乳製品を再現した結果を紹介しよう。『斉民要術』は,北魏時代(AD 386年〜AD 556年)の末期,AD530年〜AD 550年に賈思勰によって編纂された。北魏は,牧畜民由来の鮮卑の集団が華北地方に建国した国家である。何故に『斉民要術』を取り挙げるかというと,1)編纂されたのがAD 530年〜AD 550年と極めて古いテキストであること,2)乳加工の説明が詳細に記述されていること,3)斉民要術が引用した編纂文献数が約180と,後代の古文書と比較すると極めて少ないことから,生乳から最終産物までの一連の乳製品の再現にあたっては混乱をより避けられるであろうことに主によっている。 『斉民要術』に登場する乳製品の語彙は,牛乳を原料としてつくる酪・漉酪・乾酪・酥と,ロバとウマの混合乳を原料としてつくる馬酪酵である。ロバとウマの乳は入手が困難なため馬酪酵は再現実験を諦め,酪・漉酪・乾酪・酥についてのみ再現した結果を紹介してみたい。古代の東アジアや日本の乳製品を再現し,新たなる商品化を試みられている開発者の方々の参考になれば幸いである。
著者
平田 昌弘 HIRATA Masahiro
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.65-73, 2011

前号Vol.53 No.6に引き続き,インドの都市と農村での乳製品の種類とその製造法,そして,乳製品の利用のされ方について紹介する。本稿では,乳のみの乳製品に様々な添加物を付加して加工した「乳菓」を概説する。そして,インドの乳加工体系の特徴を分析し,複雑なインドの乳加工体系の本質に迫ってみたい。http://www.newfoodindustry.com/information/cn11/cn17/pg260.html
著者
平田 昌弘 HIRATA Masahiro
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.73-81, 2011

インドには,ユーラシア大陸においてインドのみにしか観られない乳加工技術がある。ライム汁(植物有機酸)を凝固剤にしてチーズを加工したり,加熱濃縮系列群の乳加工を採用したりと,大変珍しい技術が存在している。また,乳製品の菓子である乳菓にも種類が多い。鴇田の報告(1992)からも分かるように,類似した乳加工技術や乳製品がインドでは多種多様に発達している(図1)。新しい乳菓を開発しようとしている菓子職人,和食と乳製品との融合を図ろうとしている開発者には,ぜひインドを訪問されてみられるとよい。斬新なアイデアが得られることであろう。 本稿と次号Vol.53 No.7ではインドの都市と農村での事例を中心にして,乳製品の種類とその加工法,そして,利用のされ方について紹介する。インド乳製品の多様性の整理を試みるために,本稿では類型分類法として,乳のみを素材とした乳製品と添加物を付加した菓子的な乳製品とを区別するために,乳のみを原材料として加工した乳製品を「乳のみの乳製品」,乳を主な材料にし,砂糖やナッツ類などを添加して加工した菓子様乳製品を「乳菓」として区別する。「乳のみの乳製品」には,酸乳,バター,チーズ,バターオイル,バターミルク,クリームなどを含み,その製造工程は乳のみを原料とした加工技術により構成される。一方,「乳菓」を加工する工程は,「乳のみの乳製品」に添加物を付加し,乳製品を様々な菓子に加工する乳加工技術となる。本稿では,インドの複雑な乳製品の土台となる「乳のみの乳製品」について先ずは報告する。http://www.newfoodindustry.com/information/cn11/cn17/pg259.html
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.45-52, 2011

本稿では,西アジアの乳加工体系としてイランの事例を紹介する。そして,西アジアシリーズのまとめとして,西アジア全域における乳加工体系を整理してみたい。 調査地は,イラン南部のファールス州である(図1)。かつてのアケメネス朝ペルシャの首都ベルセポリスがあった地である。イランといっても多様な民族集団が牧畜を営んでいる。そこで,事例としてチュルク系牧畜民カシュガイ族(写真1),イラン系牧畜民,アラブ系牧畜民ファームール族の乳加工体系をそれぞれ紹介する。調査時期は2004年である。
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.71-82, 2011

本稿では,北アジアの乳加工技術と乳製品を,モンゴル遊牧民の事例で紹介してみたい。著者は1999年からモンゴル国を毎年訪れ,モンゴル遊牧民と生活を共に楽しみ,そして,乳加工体系について調査してきた(写真1)。モンゴルは,モンゴルを後にする時,遊牧民の温かさ,笑顔,人情とが心に込み上げ,またモンゴルを訪ねたいときっと思わされる国だ。 モンゴル遊牧民は器具をほとんど使わずに,草原の中で家畜から乳を搾り取る。また,乳加工は,日常の調理用器具を転用しておこなっている。このような搾乳・乳加工に特化した器具をほとんど持たないモンゴル遊牧民は,草原の中でいったいどのように搾乳し,どのような乳加工技術を利用しているのであろうか。興味がわくところである。モンゴル遊牧民の乳加工の特徴は,アジア大陸北方域の人びとに広く採用されている技術を用いている。つまり,クリームをせっせと取り集め,チーズをつくるための凝固剤として酸乳そのものを用い,馬の乳で酒をつくっていることにある(平田,2008;2010)。モンゴルの乳加工体系が地域毎に多様に発達しているのは,これらの諸技術を自由に取捨選択して組み合わせているためで,実はその基本的な乳加工技術は多くの地域で共通している。本稿では,以下にモンゴル国中央部の事例をもとに,モンゴル式の搾乳の技法を先ず紹介してから,乳加工技術と乳製品とを紹介していきたい。
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.73-81, 2011

インドには,ユーラシア大陸においてインドのみにしか観られない乳加工技術がある。ライム汁(植物有機酸)を凝固剤にしてチーズを加工したり,加熱濃縮系列群の乳加工を採用したりと,大変珍しい技術が存在している。また,乳製品の菓子である乳菓にも種類が多い。鴇田の報告(1992)からも分かるように,類似した乳加工技術や乳製品がインドでは多種多様に発達している(図1)。新しい乳菓を開発しようとしている菓子職人,和食と乳製品との融合を図ろうとしている開発者には,ぜひインドを訪問されてみられるとよい。斬新なアイデアが得られることであろう。 本稿と次号Vol.53 No.7ではインドの都市と農村での事例を中心にして,乳製品の種類とその加工法,そして,利用のされ方について紹介する。インド乳製品の多様性の整理を試みるために,本稿では類型分類法として,乳のみを素材とした乳製品と添加物を付加した菓子的な乳製品とを区別するために,乳のみを原材料として加工した乳製品を「乳のみの乳製品」,乳を主な材料にし,砂糖やナッツ類などを添加して加工した菓子様乳製品を「乳菓」として区別する。「乳のみの乳製品」には,酸乳,バター,チーズ,バターオイル,バターミルク,クリームなどを含み,その製造工程は乳のみを原料とした加工技術により構成される。一方,「乳菓」を加工する工程は,「乳のみの乳製品」に添加物を付加し,乳製品を様々な菓子に加工する乳加工技術となる。本稿では,インドの複雑な乳製品の土台となる「乳のみの乳製品」について先ずは報告する。
著者
白瀧 義明
出版者
エヌエフアイ合同会社
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.50-51, 2015-06

New Food Industry 2015年 6月号 掲載記事詳細に記載:本誌、写真2の説明において、マムシグサの雄花断面(左)とありましたが、正しくはマムシグサの雌花断面となります。ここに訂正をさせていただきます。
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.65-73, 2011

前号Vol.53 No.6に引き続き,インドの都市と農村での乳製品の種類とその製造法,そして,乳製品の利用のされ方について紹介する。本稿では,乳のみの乳製品に様々な添加物を付加して加工した「乳菓」を概説する。そして,インドの乳加工体系の特徴を分析し,複雑なインドの乳加工体系の本質に迫ってみたい。
著者
大谷 元
出版者
(株)食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.265-36, 2011-03-18
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.80-86, 2012

本シリーズではこれまでに,アジア大陸から西アジア,南アジア,北アジア,中央アジア,チベットを,ヨーロッパ大陸からはバルカン半島を事例に,乳加工技術と乳製品,そして,その利用の仕方について紹介してきた。駆け足で述べてきたこともあり,まだまだ紹介していない事例も多いのだが,それでもユーラシア大陸をぐるっと見回したことになる。このシリーズを閉じるにあたり,最後に人類が辿ってきた乳文化史について語っておきたい。シリーズ最初のVol.53 No.1(平田,2011a)で「乳文化の一元二極化説」について言及したが,これまで紹介してきた事例をまとめる意味で,改めて詳しく論じてみたい。
著者
大谷 元
出版者
(株)食品資材研究会
雑誌
New Food Industry
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.265-36, 2011-03-18