著者
佐々木 秀明
出版者
いわき明星大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原発事故により,多量の放射性物質が環境中に流出した。種子植物とラン藻における放射性物質の蓄積能力に関する調査を行った結果,種子植物に高いレベルでの放射性物質蓄積は観察されなかったが,陸生ラン藻イシクラゲにおいて高い蓄積が観察された。福島県二本松市において,イシクラゲはセシウム137を607,000 Bq/kg蓄積していた。イシクラゲの放射性セシウムの蓄積量は,土壌の放射能濃度が高いところに生育するものにおいて,高い傾向があった。また,栽培実験の結果,イシクラゲは汚染土壌から放射性セシウムを吸収した。これらの結果は,イシクラゲによる放射性物質蓄積は,汚染土壌の浄化に役立つ事を示している。
著者
関根 邦充
出版者
いわき明星大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

○研究の目的平成25年度高校卒業者のうち、震災の影響を明確な理由として当初の進路希望を変更し決定せざるを得なかった生徒の員数、及び環境放射線量が進路選択に与えた影響を調査し、平成23年度の数値と比較して当該生徒数が減少したかどうかを明らかにする。○研究方法福島県内の高等学校106校ヘアンケート調査を依頼した。協力を得られた59校(卒業対象者数9, 363名)のデータから分析・検証した。○研究成果調査の結果、震災を明確な理由として当初の進路希望を変更した生徒数は0名であった。平成23年度【21名(全体の0.26%)】に比べ、当該生徒が皆無になったことにより震災前の状況に戻っていると言える結果であった。また、環境放射線量の影響が進路選択に与えた影響については、高校教員が生徒の進路指導を行うに当たり感じた印象を調査した。調査結果は、「強く感じた」、「まあまあ感じた」等、影響があったと回答した高校は全体の3%(2/59校)、「あまり感じなかった」、「ほとんど感じなかった」等、影響がなかったと回答した高校は83%(49/59校)であり、環境放射線量が進路選択の際に影響を与えていないと感じる高校が大勢を占めた状況となった。一方、少数ではあるが、環境放射線量が影響を与えていると感じる高校、どちらともいえないと回答する高校も存在しており、まるで影響がないと言い切れる結果にはならなかった。また、進学先として選択した学校種別及び地域を調査し平成23年度と平成25年度を比較した結果、以下のことが分かった。・進学先として選択する学校種別は、ほぼ変わっていない。・進学先として選択する地域は、大学、専門学校に進学した生徒についてはほぼ変わらない。短期大学に進学した生徒は、東京都を選択する割合が増加している。・福島県内に残留する割合は、平成23年度に比べて大きく変わらない。
著者
井上 知泰
出版者
いわき明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

Si(100)基板上の二酸化セリウム(CeO2)薄膜のエピタキシャル成長において、表面電位分布制御により成長面方位が選択可能な方位選択エピタキシの研究を進めた。電子ビームを照射して局所的に表面電位を変化させる方法を採用し、Si(100)基板上にCeO2(100)と(110)領域の複合面方位構造の形成に成功した。この2つの面方位領域間に両方位成分を含んだ遷移領域が存在し、その幅がSi基板の比抵抗の対数に比例して縮小することが分かった。この結果から、絶縁基板上Si層にリソグラフィーにより溝を設けてSi島を形成し、それらの間を電気的に絶縁し、複合面方位領域間を完全分離する手法の検討を開始した。
著者
林 洋一 富田 新
出版者
いわき明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の結果から、メール相談が対面面接と異なる学生の相談ニーズに応え得る可能性を秘めていることが明らかになった。メール相談を、対面の学生相談とは異なる新しい相談チャンネル、もしくは新しい学生支援システムとして、キャンパス内に位置づけていくことは可能であると思われる。一方、メール相談の限界や問題点も明らかとなった。メールのみではクライエントに対する正確な見立てが難しいこと、書き言葉であるため支援者側に対面面接以上に労力が要求されること、緊急介入の難しさ、クライエント側からの中断が容易に生ずること、中断後のフォローが難しいこと、対面面接へのつなぎの難しさ等である。とりわけクライエントの文章読解力や文章作成能力により、メール相談の展開や支援効果に大きな違いが生じてきてしまう点は、メール相談で安定した支援効果を得にくくしている要因の1つであると思われた。
著者
福島 朋子
出版者
いわき明星大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、高齢者向け生涯講座の修了生のその後を追跡し、生涯学習講座修了後の社会活動と、修了者自身の生き甲斐やQOLなどとの関連を把握することを目的とするものである。調査は、M県内にある高齢者(60歳以上)向けの生涯学習講座をフィールドとした。この講座では、修了後、同窓会組織だけでなく、修了生の自発的なサークル活動に対して場所・人的資源の提供など支援を積極的に行っている。19年度の主な結果は以下の通りであった。(1)講座修了後の社会活動への参加は高く、(2)昨年度と同様、社会活動の積極的な者ほど、生を甲斐感や生活満足感が高い傾向にある、(3)高齢者が主催・参加できる社会活動が高齢者の意欲に反していまだ限られており、今後の活動のあり方が課題の一つとして浮かび上がってきている、(4)高齢者が主催する社会活動へ参加した子どもや若者たちは、概ねその活動内容を評価しており、また高齢者に対する良い印象を持つ傾向にあった。これまでの研究をまとめると、高齢者自身は、これまでの経験を生かして社会との接点を持ちたい、社会の資源でありたいという気持ちを持っている。社会活動の時間・場所の提供をすることで、高齢者は積極的に次世代への働きかけを行い、また自分のQOLを高める傾向にある。そして、この活動は下の世代の高齢者観も変化させるきっかけとなっているようである。今後、日本は高齢者が増加し、高齢化社会へと向かいつつある。多くの高齢者を資源としていかに活用できるかが、今後の課題といえよう。