著者
折山 早苗 宮腰 由紀子 小林 敏生
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.21-31, 2014 (Released:2014-04-11)
参考文献数
34

看護師の夜勤に伴う休息・休憩状況と勤務体制を支持する要因と,疲労回復のための休息方法を明らかにする為,二交代制勤務体制の総合病院に勤務する12時間夜勤者140人と16時間夜勤者681人を対象として,夜勤前・中・後の休息と休憩時間,夜勤のメリット・デメリットについて自記式質問紙調査を行った。12時間夜勤者は夜勤前の仮眠の取得率および仮眠時間が16時間夜勤者より多く,16時間夜勤者は夜勤前日の夜間睡眠時間が長く,夜勤中,夜勤後の仮眠取得率および睡眠時間も多かった。両夜勤群ともに90%以上の看護師が8時間夜勤を伴う三交代制勤務より現在の二交代制勤務を支持していた。16時間夜勤の支持要因として,年齢が低い,三交代制勤務経験が無い,夜勤前の仮眠時間が長い,夜勤中の休憩時間が長い,夜勤中の仮眠がとれる,の5点が明らかになった。さらに,16時間夜勤の場合,勤務中の仮眠取得のためには休憩時間が2.33時間以上必要であることが示唆された。
著者
千葉 宏毅 伊藤 道哉 池崎 澄江 伊藤 弘人 日本医療 ・ 病院管理学会 学術情報委員会
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.227-237, 2016 (Released:2016-12-10)
参考文献数
13

目的:日本医療・病院管理学会の学術用語選定の基礎資料とするために,過去10年間に用いられた学術的用語と付帯情報を客観的に分析し,傾向を把握することが本研究の目的である。方法:学会誌で2005年1月から2014年12月に公開された学術用語を計量テキスト分析し,種別,年別に用語の出現数を比較した。またクラスター化によって得た用語のグループ(分野)を多重対応分析した。結果:看護,システム,管理の3語は,複数の指定順にまたがる中心的なキーワードであった。2010-14年ではDPCやレセプトのビッグデータの活用,在宅医療や訪問看護,分析に基づく経営,外国人の受療対応に関連する用語が2005-09年より多く出現する傾向があった。考察:種別および年別によって使用される学術用語の変化や特徴は,わが国の情勢にも関連すると推測できることから,新たな用語選定や分類,解説の必要性を示唆するものである。
著者
原田 博子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.121-129, 2016 (Released:2016-07-04)
参考文献数
15

日本看護協会が実施したワーク・ライフ・バランスワークショップ事業報告書から,平成22-24年度に新規参加した施設の課題解決に向けた取り組みをKH Coderにより内容分析した。32都道府県236施設の課題解決に向けた取り組みは,4,648のキーワードに抽出でき,それを22の課題設定に分類した。課題設定は,〈WLB基礎部分〉〈WLBの取り組み〉〈取り組み方法〉〈成果を視野に入れた取り組み〉の4つのカテゴリーに分類した。今後4ヶ月のカテゴリー割合では,〈取り組み方法〉がどの年度も35%以上を占めていた。それに対し,今後1年間・今後3年間では〈取り組み方法〉が減少し,〈WLB基礎部分〉〈WLBの取り組み〉が60%以上に増加し,WLB本来の取り組みに移行していた。このことから,ワークショップでの支援は有効であったと考える。課題設定間の関係性では,「やりがい向上」が他の課題設定に強く結びつき,今後の推進に必要な取り組みであることが示唆された。
著者
江上 廣一 廣瀬 昌博 津田 佳彦 大濱 京子 本田 順一 島 弘志 中林 愛恵 福田 治久 今中 雄一 小林 祥泰
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.205-215, 2012 (Released:2012-11-30)
参考文献数
32

2007∼09年度に収集された転倒・転落のインシデントレポート1,764件を対象に,転倒率(件/1,000患者・日)を用いて転倒・転落に関する疫学的側面を検討した。患者の平均年齢は男66.6±18.8歳(950件),女69.9±19.2歳(814件)であった。全体の転倒率は1.84件/1,000患者・日,性別では男2.06および女1.87であった。年齢別では,70歳代が2.82件/1,000患者・日(555件)でもっとも高く,高齢者ほど高い傾向にあった。診療科別において,外科系では整形外科が最低で1.14件/1,000患者・日,内科系では循環器内科および呼吸器内科が最低で1.97を示し,外科系より内科系診療科が高い傾向にあった。また,入院から転倒発生までの日数における転倒率(転倒件数)について,入院翌日が0.16件/1,000患者・日(118件)でもっとも高く,ついで入院3日目が0.12(84件),入院当日が0.11(78件)で以降漸減していた。転倒発生の平均値は12.4日であった。 転倒率からみた転倒の疫学的側面から,入院診療科や入院からの日数に応じた防止策を講じることが必要である。
著者
山北 勝夫 菅野 敦之 大道 久 根東 義明 梅里 良正
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.189-197, 2013 (Released:2013-09-10)
参考文献数
10

厚生労働省は,医薬品のトレーサビリティの確保に加え医薬品の取り違え事故防止等を目的として新バーコード表示を推進している。本研究は,保険薬局において,新バーコードを活用して医薬品のトレーサビリティを実現するためにどのような課題があるか検証し,さらに,医薬品の取り違え防止効果等にどのような効果があるか分析した。当保険薬局において,医薬品のトレーサビリティを実現するためには,システムの追加や既存システムの機能変更等,様々な課題があったが,医薬品の最終消費者である患者まで,処方薬の製造番号又は製造記号ごとに追跡することが可能となる情報管理システムを構築することができた。また,このシステムは医薬品の取り違え防止等のインシデントレポート件数を20.3件/月から0.6件/月に減少させるなど保険薬局の業務改善に有効であることが示唆された。医薬品のトレーサビリティの実現は,医薬品の不具合が発見された時点で最終消費者である患者に安全情報を素早く提供することが可能となり,医療事故防止に大きく貢献できるものと考える。